秋の陽に篠栗の遍路をたゆたう – 福岡県

福岡県の中央付近・・。中心地である福岡市の東、粕屋町(かすやまち)を挟み筑豊地域にも町境を接して位置するのが “篠栗町(ささぐりまち)” です。

福岡市街のベッドタウンを担う町でもありますが、その町域の東側7割ほどは山間部に属する静かで自然に恵まれた地勢といえますでしょうか。

米ノ山展望台から見る篠栗町

その山地は南東側県境の英彦山を介して、遠く大分県の由布岳や九重山まで連なる山脈の一端でもあり、そのため古にこれらの山々を根拠として修められていた密教や山岳仏教、そして修験道などの影響を多く受けていました。

そのため現在においても篠栗町内には江戸期を端緒とする “篠栗八十八ヶ所” が根付いており、巡礼者が各所霊場を巡る姿を今も見ることができます。 その中でも特に知られた名刹が『南蔵院』そして『呑山観音寺(のみやまかんのんじ)』の二院。

秋の陽にたゆたいながら ちょっとしたお遍路に勤しんでみては如何でしょう?

 

『南蔵院』

高野山真言宗の別格本山であり、篠栗四国八十八箇所の総本寺。
江戸時代後期、篠栗・城戸の地に建てられたお堂を始まりとし、高野山金剛峯寺から寺格を得るなど、地元と篠栗巡礼に根付いた歴史を歩んできました。

JR篠栗線・城戸南蔵院前駅から多々良川に架かる メロディ橋(欄干に鉄琴を装備した行楽スポット)”、そして国道を渡ると阿弥陀如来を奉じる本堂が見えてきます。

“七福神トンネル” “水みくじ手水所” “出世大黒天” などユニークな参拝所が続きますが、何を置いてもこの南蔵院を知らしめる見どころは、奥院 “釈迦殿納骨堂” に横臥する「釈迦涅槃像」。

全長41メートル、高さ11メートル、ブロンズ製の涅槃像としては世界最大級。納められた仏舎利(仏陀の遺骨片)はミャンマー仏教院から贈られたもの。体内参拝も可能だそうです(体内撮影は不可)。

3階建のビルにも匹敵する巨大な涅槃像、雄大さのみならず その安らかな寝顔を見上げるとき貴方は何を感じられるでしょうか。

個人的には境内中央部に仁王立ちする “大聖不動明王” の厳しい表情と豪壮さにも興味を覚えますが・・。

この南蔵院の住職さんは複数回の宝くじに高額当選されたことがあり、町に報いるため救急車を寄贈されたのだとか。 このことから金運や開運のご利益ありとして知られ、縁起物の “大黒天の札” なども売られています。

あやかることができれば幸運の扉が開けるかもしれませんね・・(^^)

 

『呑山観音寺』

篠栗町の北東、隣接する宮若市との境にも近い長閑な山間部・呑山に佇む一院。 当院も高野山真言宗・別格本山の寺格。篠栗四国八十八箇所、第十六番札所。南側の鉾立山にある小寺「天王院」は第三十六番札所。

南蔵院と同時期、慈忍尼の発起によって始められた八十八箇所霊場の成立とともに創始されました。 ”千手千眼観世音菩薩” を秘仏本尊として頂き、地元の民や心安い参拝者からは “のみやまさん” の愛称で親しまれています。

広大な境内に阿弥陀堂、百観音堂、大師堂、極楽往生院、七福神堂など数多の尊堂そして境内社が立ち並びますが、このお寺の意義と魅力はそれだけに留まりません。

八十八箇所霊場の中では最も標高の高い場所に位置しているため、遍路の初日折り返し・関所ともいわれる寺院でもありますが、それだけに周囲四方を緑に囲まれた静寂な霊場でもあり、春は桜、シャクナゲ、夏はアジサイ、秋は紅葉、冬は雪景色と四季折々の景観を愛でることができます。 本堂脇には樹齢100年を超える固有種「福聚桜」が立ち、参拝者を出迎えてくれます。

特に千本を超えるモミジとドウダンツツジの艶やかさは目を見張るほどで、地元にとどまらず北九州有数の紅葉スポットとしても知られています。 10月28日~11月24日の間は「紅葉まつり」が行われ、鮮やかな紅を背景に出店も並ぶため多くの行楽客で賑わうことでしょう。 期間中は瑜祇大宝塔の特別拝観が実施されるのもまた注目ですね。(瑜祇塔の公開時間は9:30~16:00)

 

日本三大四国霊場とは四国の霊場を模して作られたもの。 香川県の小豆島八十八箇所、愛知県の知多四国霊場、そして本日ご案内した福岡県の篠栗四国八十八箇所霊場。これらは「新四国」とも呼ばれ、四国遍路と同様に弘法大師ゆかりの霊場を巡ることで参拝客の願いが叶うとされています。

来たるべき秋の日、清々しい行楽の愉しみと弘法大師にあやかった玄妙のひとときを過ごされるのも素敵ではないでしょうか・・。

『南蔵院』公式サイト

『呑山観音寺』公式サイト

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