中学・高校時代に好きだったアーティストといえば「アリス」でした。 昭和中盤世代ならご存知の方も多いフォークトリオですね。当時はヒット曲も多く、ラジオ番組などのリクエスト常連でもありました。
80年代の活動縮小以降、個人ごとの活動に移りそれぞれ良質な作品を残していきましたが、中でも谷村新司氏による「昴 -すばる-」などは現在も中高年愛着の一曲として歌い継がれています。
2023年に74歳で早世されたチンペイさん(谷村新司氏)。 思いがけない訃報に私も大きなショックを受けましたが、人の心の機微に深く根ざした彼の歌はこれからも末長く人々の記憶に残り続けていくのでしょう。
そんな彼の作品のひとつに「序曲〜海を渡る蝶」という歌があります。 歌謡曲としてはやや複雑なメロディーゆえに一般にはそこまで浸透しませんでしたが・・。
苛烈な自然の力に怯むこともなく、安寧を捨ててまで世界に挑み立つ若き魂。 壮大なオーケストレーションに乗せて送る歌は聴く者の胸を打ちました。
1グラムにさえ満たない羽に全てを賭けて海を渡る蝶の姿に、その想いが込められていたのです。
そしてその “海を渡る蝶” が実在のものであることをご存知の方もおられましょうか。
蝶の名は「アサギマダラ」 日本で唯一の “渡り” をする蝶として、その壮大な旅路から多くの人々の心を掴んでやみません。
前翅長(ぜんしちょう・主たる羽の大きさ)5cm程、アゲハ蝶科に属するためか羽の模様も似たような見た目であり、一見、何処ででも見掛けそうな普通の蝶のようにも思えます。
実際、その分布は日本全国から東南アジアに及ぶとされているため、意識しないままに その姿を目にしていたのかもしれませんね。
只、熱帯性の蝶種にありながら暑さを嫌う傾向があるため、一般的な町並みよりも多少標高の高い(気温の低い)場所を好むところがあるそうで、そういった性質も相まって生息域の移動を行っているのでしょうか。
凡そ その移動距離はときに2000kmにも及ぶそうで、あの小さな体の何処にそんなエネルギーが宿っているのか・・。不思議は尽きませんね・・。
春から秋を本州北緯で過ごし、10月から11月にかけて南西諸島から台湾にまで “渡り” を行うそうです。
天候など状況に応じて休息や、補食・エネルギーの調整を行いながらの移動となるのですが、中には一日で200kmの移動を確認された個体もあるそうで、これもまた自然の驚異たるところでしょうか。
増して驚くべきは渡海中、海上を翔んでいる間でしょうか。
一度渡り始めれば羽を休める場所もない絶海をどうやって越えるのか・・? というところですが、これ一説に海面に降りて、波に身を任せながら休息をとる・・ともいわれています。
撥水性の高い羽や体毛を持ち、超軽量の体ならではの技であり沈まないのかもしれませんが・・。
仮にそうだとしても人間の体格に例えれば超高層ビルのごとき大波に揉まれながらの休息。そのまま波に飲まれ消えてしまう個体も数え切れない程となりましょう。 まさに命がけの旅路なのです。
その想いがどうあれ、季節が巡り来れば旅立つのが自然の摂理。今年もまたアサギマダラの渡る秋となりました。
その飛翔ルートが多数に分かれるため、これらを観測できる場所そして道の駅も複数にまたがりますが、群馬県の北部、吾妻郡高山村にある『道の駅 中山盆地』もまたアサギマダラの休息地として知られるスポットといえましょう。
アサギマダラが好むフジバカマ(ピンク色の花を咲かせるキク科の植物・秋の七草のひとつ)の畑が、駐車場北側と南側進入路入口脇に設けられ、羽を休める姿を見られるのだとか。
今年は殊の外暑さの募る年でもありましたので、その移動時期や状況にも影響があるかもしれませんが、運が良ければ彼らの休息のひとときに出会えるかもしれませんね。
『道の駅 中山盆地』のある高山村大字中山は、古く中山道(なかせんどう)高崎宿から峠を越えて越後(新潟)や佐渡をつなぐ三国街道の中継地点でありました。
「中山宿」。深緑の峰に囲まれながらも本陣が置かれ、佐渡金山の御用や参勤交代旅程にも使われるなど相応に賑わい、本宿と新田宿との二分交代制で営まれた宿場町でもあったのです。
宿場町制度が過去のものとなり150年余が経ちましたが、現在も中山近辺には往時の面影を其処此処に目にすることができるでしょう。
『道の駅 中山盆地』の方も、子供を退屈させない “ふれあいパーク” や束の間の癒し “足湯” ゆっくりくつろげる “日帰り温泉” から、宿泊可能な隣接コテージまで包括した総合リラクゼーション施設となっています。
11月2日(日)には芝生広場を使って一般参加の作家、農家、飲食店が集うフリーマーケット&マルシェ『ちょっ蔵市』も開催予定です。
閑静な山間の駅で古の風を感じながら・・。その風に乗ってまた遥か彼方の地を目指し翔んでゆく蝶の旅路にエールを送ってあげてください・・。
Across the Ocean Soul on my Wing
海を越えろ 翼に宿りし魂 (「序曲〜海を渡る蝶」末文)






