1月も後半、お正月の出来事や気分も最早思い出の内となりました。 鏡開き・小正月も終わり、世間は新年度の仕事や生活が本格化しています。旧正月を祝う地方もありますが、多くの人々は既に忙しく慌ただしい日々に立ち返っているようです・・。
近々訪れる節気といえば節分ですが、節分といえば鬼。そして鬼に対して福呼び込むアレ・・アノ女性についての一編をお届けします。
「何しやがる! この お多福め!・・」
落語などで出てきそうな台詞ですが、今時、現実にこんな言葉を女性に向かって吐こうものならただでは済まないような気がします。(^_^;)
「お多福」 その面の形状から女性に対する侮辱的なイメージが少々ついてまわってしまう言葉ではありますが、反面、この名が元々 周囲の人々に幸せをもたらし福を振りまく、母性豊かな女性の理想像をもあらわしていることは周知の認識ではないでしょうか。
福をもたらすもの、人生における安泰と豊穣を司るものとして神性さえ帯びるもの。
この「お多福」の大きなお面を参道入り口に置いて参拝者を迎えるユニークな神社が福岡県に有ります。
柳川市 坂本町の日吉神社では年も押し詰まり正月を迎える頃になると、参道の入り口に満面に笑みをたたえた「お多福」の面を設置します。
面と言っても縦横それぞれ5mを越す見上げるような大きさ、鉄と竹を組み合わせた骨格の上からサラシを貼り重ねて立体的に作り上げられ彩色されて完成、その重さは何と300kgにも達するそう。
口の部分を大きく開けて参拝者がここを通り抜けられるように作られており、この口をくぐってお参りをされた人達に家内安全、夫婦円満、そして商売繁盛をもたらすものとされていますが、初めてこれを目にした人は 何よりそのインパクトの大きさの方に驚いてしまうかもしれません。
「柳川 雛祭り」が閉幕する4月3日まで置かれているようなので神社、風物にご興味のある方は一度参拝されてみては如何でしょう。
実はこの参道前に巨大「お多福」面を設置する風習は日吉神社だけではありません。
福岡県を中心に数社の社が主に節分の節気に合わせて この巨大「お多福」面を飾ります。
その起源は意外と新しく昭和36年、地元出身の画家でありプランナー(企画者)でもあった田中諭吉氏の呼び掛けによるものとされています。当時、それまで勤めていた新聞社から広告代理店へと転職していた田中氏は、節分の「鬼は外、福は内」の掛け声から それならば いっそ自ら「福の内」に入ってゆくのはどうか? と この企画を思いつかれたそうで、博多の櫛田神社に働きかけこれを実現、後に地元の多くの神社に拡がってゆく事となりました。
田中氏はこの他にも太宰府天満宮の祭事や西公園光雲神社の謡鶴、駅前商店街の創設など、地元発展の企画を次々に提案・実現された方で、一介のプランナーの枠を越え地元の発展、地域の再生に早くから取り組み尽力してこられた方でした。
ウィットに富んだ方でご自分の頭髪の薄い事をもじって「光頭無毛文化財」などと称し、有無庵(ゆうもあん)とも名乗られていたそうです。
昭和45年逝去されましたが、田中氏が残された文化遺産とも言うべき功績は今も地元福岡で受け継がれ、平成25年年4月には 博多町家ふるさと館 において氏の足跡を称える 『戦後の福岡・博多を元気にしたアイデアマン 光頭無毛文化財 田中諭吉展』も開かれました。
さて、今回のお題ともなりました「お多福」ですが、冒頭にも記しましたように その特徴的な面持ちから、あまり美人ではない女性への言い回しとされ勝ちでしたが往古において “下ぶくれの顔” は美人の特徴でした。あの “小野小町” もそうだったのかもしれません。 さらに、安泰と繁栄をもたらす神性を帯びた女性の象徴だったともいえるでしょう。
それもそのはずで「お多福」の元々の起源は、日本神話〈天の岩戸〉のくだりで最高神 アマテラスを岩屋から誘い出した天宇受売命(アメノウズメ)だともいわれています。
健康的な肢体と妖艶な踊りでアマテラスを導き この世に光を取り戻すことに功成したアメノウズメは演舞・芸能の神であり、また、国津神であったサルタヒコと夫婦となったことから女性ならではの交流・繁栄にも通じる神格をも持ち合わせている、まさにスーパーウーマンと言ったところでしょうか。
一方、江戸時代、その生真面目さから京の呉服店「大文字屋」を一代で築き長者となりながらも 世間に折り合い宜しく、また貧しい人々に施しを続けていた商人 “叶福助” に嫁いだ女性「お福」に由来するという話しも伝わっており、こちらも夫婦仲良く それまでにも増して家は繁栄したと言われています。
この 叶福助 が明治以降、現在に至るまでその名の残る足袋・衣料品メーカー「福助」のシンボルであることは多くの方がご存知かと思います。
同じく「お多福」をシンボルとした「オタフクソース」とともに長きに渡って人々から愛されるブランドですね。
その時代、その時代に合った流行の美人も宜しいですが、時代を越えて福をもたらす普遍の美人「お多福」
Wikipedia の一文には以下のような記述もあります
<本来古代において、太った福々しい体躯の女性は災厄の魔よけになると信じられ、ある種の「美人」を意味したとされている。・・>
男性や家族を幸せにし人々に福をもたらす女性は、やはり「お多福」さんのような女性なのかもしれませんね。

* “日吉神社” の社名は全国的に数多く、柳川市にも数社の日吉神社がありますのでご注意ください。
〒832-0076 福岡県柳川市坂本町6−1






