暑いですね・・。もう嫌気が刺すほど暑いという言葉を聞き続けますが・・(^_^;)
あまりの暑さに「暑い暑いと国から便り・・」という言葉を思い出しました。(文脈的にこの場合の “国” は “郷里” のことでしょうが)
昭和の頃、夏になると父親がよく言っていたのが頭の隅に残っていたようです。
只、この言葉、あまり一般的でないのか検索しても殆ど出てきません。 「何それ?」と思われた方も多いでしょうかねw。(もしかすると関西の一部、それも古い年代層にのみ通用するのかな?)
暑い夏場のひとときの癒し・楽しみといえば “水”。海水浴は夏定番の行楽です。
とうに子育ても卒業した身で、その上ここまで暑さがキツいと海水浴さえ覚束ないですが、遥かに霞む水平線、青々と広がる大洋を望めば夏の暑さも幾らか和らぐ気分になります。
空の青、海の青は人の気持ちに自然の涼しさを与えてくれるのでしょう。
その海の青さ・・。本日は岡山県、おそらくは児島や玉野辺りにあったと思われる “海の青さ” にまつわる民話をお送りします・・。
『海の青きのいわれ』
昔あるとき その昔
とある浜の村にサチという名の娘がおった
漁師の父とそれを助ける母との三人で仲良う暮らしていたが
あるとき父は海に出たまま帰らなくなってしもうた
女二人残っても舟に乗れず漁にも出られず暮らしにも難儀した
浜に出て藻を拾い貝をとったりして何とか食いつないだ
そんなある日サチはひとりで浜を歩いておった
魚が好きだった母のために せめて一匹くらい打ち上げられた魚がないものかと波打ち際を探してみたのや
しかし思うに虚しゅう魚は見つからなんだと
それでも母親の喜ぶ顔が見とうてサチは毎日々々浜を探して歩いた
すると父が逝って一年ほど経ったある日のこと
一匹の魚を浜辺で見つけることができた
されど その魚は今まで見たこともない真っ赤な魚やった
どうしたものかと思いながらも その魚を家に持って帰ったサチ
すると 魚を見た母親はこう言ったとな
「サチや、ありがとう。そやけど こない赤い魚はこれまで見たことも聞いたこともねぇ。 魚にも色々ある。食べて万が一のことがあってもいけん。せっかくお前が見つけてきてくれたがこれは食べずに、どこか庭先にでも埋めておいてやろう。」
残念に思うたサチやったが母の言うことももっとも
庭先の小さな畑に真っ赤な魚を埋めて墓を作ってやったんだと
ところが 次の日の朝
サチが昨日魚を埋めた場所に行ってみると 墓の辺りに見たこともないような草が生えておった
そして何日は経つうちに清々しい青い色の可愛らしい花を咲かせたそうな
「お母さん、赤い魚を埋めたところに こんな青い花が咲いたで」
「ほんに。こりゃあ綺麗な青い花が咲いたのう」
青い花は次々に咲き広がって庭いっぱいになった
「こりゃ珍しい。こんな花は見たことがない。 一本売ってくれ」
「綺麗な花じゃ。 少し分けてくれんか」
道を通る人が誰彼となく花を見つけては感心し買うてくれた
やがて青い花の噂は広がって遠くの里から買いに来る人もできた
花を売ったお金が入るようになってサチの家の暮らしも楽になり また母と魚も食べられるようになったのだと・・
けれど そんな噂がこの国の殿さまの耳にも入ってしもうた
難儀なことにこの殿さま ずいぶんと欲深なお人で
漁師が取ってきた魚も良いものからみな取り上げてしまう
珍しい品物があると聞くとすぐ差し出せと言う
綺麗な娘がいると すぐに側室に寄越せというようなありさまで皆から嫌われ恐れられていた
「浜の村に珍しい花が咲いているそうじゃ。今すぐ取って来い!」
馬鹿殿であっても殿さまは殿さま
命令どおり家来たちがやってきた
「私たち親子の大切な花です。どうぞ抜き取らないでくだ さい! 花ならいくらでも差しあげますから!」
親娘は泣いてすがったが家来たちは聞く耳を持たなんだ
根こそぎ掘って車いっぱいに持って帰り殿さまの庭に植えと・・
ところが家来たちが植え育てた花はすぐに枯れてしもうた
いくら水をやってもだめ土を変えてもだめ じきに枯れてしまう
殿さまはカンカンになって怒ったと
「行って娘を連れてこい! あの娘に花の世話をさせよ!」
サチの家の庭は ついにみな掘り上げられてしもうた
家来に引き立てられてお城に行ったサチが世話をすると
青い花は枯れずに綺麗な花を咲かせたそうな
お城の庭を埋めつくす一面の花畑に 殿さまはたいそう喜んだと
そしてこれで満足すれば まだ救われるもの
この殿さま さらに欲をかいて サチにこの花を売らせて儲けようと考えた
サチが町に花を売りに出ると 皆 可哀想なサチのために花を買ってくれたが そのお金は全て殿さまに巻き上げられたと・・
そんなサチの哀れを 青い花はじっと見つめているかのようだったと・・
ある日の夕暮れ 空の彼方に黒雲が湧き立ったかと思うと にわかに大風が吹き出し 大雨大雷の嵐が起こったそうな
桶をひっくり返すようなとはこのこと
今まで誰も知ることのないほどの大雨が降り続き
ついには黒々とした高波が押し寄せた
もはや浜も丘も見境なく そこら一面海になってしまい
お城も町も全て水で押し流されてしもうた
逃げる時も助けを求める余裕もなかった
サチも流されて気を失ってしもうた・・
「サチ、サチ!」
自分を呼ぶ母の声にサチはハッと気がついた
辺りを見回すと自分が生まれ育った浜の景色と母の姿
どうしたことか あれほど激しかった昨日の嵐の跡形もなく
町や人々の様子はこれまでと何も変わっていなかったそうな
皆 キツネにつままれたようにぽかんとしておる
ただ 殿さまのいたお城だけは 綺麗さっぱり無くなっておった
それと もうひとつ
目の前に広がる海が青色に変わっていた
これまで 落ちた針でさえ分かるほど透きとおっていた海を青い花が染めたかのように・・
一夜のうちに起こった不思議・・
サチがお城のあとに行ってみると青い花は少しだけ残っていた
それを持ち帰り大切に育てると また庭いっぱいに青い花が咲いた
サチ親子は青い花を売ってまた幸せに暮らすようになったそうな
強欲な殿さまは消えて 人々も心配することがなくなり笑顔で暮らせるようになったそうな
昔こっぷり
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昔話のことですので青い花が何の花を指すのかは分かりません。
しかし、浜辺に咲く花で青い花を咲かせるものの中に「ナミキソウ(浪来草)」という種があります。 シソ科の植物で小さく鮮やかな青い花弁を見せてくれます。 全国の沿岸地域で見られますが、瀬戸内地方でも特によく見られるそうです。
6月から9月にかけてが開花期とされますので、まさに今がナミキソウの季節なのですが、あまりに暑い日照りが続くと青い色が褪せてしまうそうです。
波打ち際に咲くから “浪来草” なのですが、本日のお話と絡めて考えれば・・、ちょっと不思議な気分に浸れますね・・。









