“所変われば品変わる”、ご存知のとおり場所(国や郷里)が違えば その文化や習慣も異なりそれぞれ独自の風土が存在する・・ということわざです。 当イナバナ.コムにおいてもそれはとても大事なキーワードといえるでしょう。
時代を経て画一化の一途を辿る中で、そういった特色は時に認識や疎通の弊害となる場合もありますが、多くの場合 許容に収まるレベルです。 “お国柄” と呼べるような傾向や特色はむしろ貴重なことであり、何らかの形で後世に残し伝えるべきものだと考えるのです。
方言(お国訛)などを含めて一般の風習や生活基盤など地方色を示すものは様々にありますが、中には超常現象に因むものにも その地方ならではの “珍品” は現れるもののようで・・。
沖縄県の中西部、読谷村(よみたんそん)にあるテーマパーク『体験王国 むら咲むら』でこの8月31日(日) まで『琉球妖怪2025』が延長開催されています。
妖怪・・。あまりお好きでない方も居られれば「そういうの割と大好き!」と思われる方もおいでかと思います。 この世ならざるもの・・。異界の住人。どちらかといえばダークで怖いイメージが付きまとう彼らですが、妖怪は元々自然信仰の産物。言い換えるなら日本古来の自然神、神にも近い存在でもあるのです。 自然神なれば その地方ごとの特色がでるのも当然なのかもしれませんね・・。
沖縄、琉球文化における妖怪ですから、やはり “品変わり” ます。
当然 本土側にあっても所によって種々の特色がありますが、南洋の文化に生まれ育まれた妖怪には独特の存在感があります。
先ずは希有で奇態なウチナー(沖縄)妖怪を眺めてみましょうか・・。
・マジムン
とりあえずマジムンという言葉を頭に持ってくる必要があるでしょうか。 マジムンは一個の妖怪の名前ではなく、沖縄や奄美諸島における魔物や妖怪の総称です。 赤ん坊の姿をしたマジムン。動物が霊化したマジムン。物や道具が付喪したマジムンなど様々な物の怪がマジムンの括りに含まれます。
沖縄のご当地ヒーロー「琉神マブヤー」でも悪役妖怪の総称として用いられていましたね。
● キジムナー
琉球妖怪で最も知られるキャラクターといえばこれ「キジムナー」。 全身(または髪)が赤みを帯びた童子の姿と伝えられ、ガジュマルの木などに宿る精霊だともいわれています。
多少イタズラっ気はあるものの本質的には人間に対して害意を持たず、ときには人間の仕事に手を貸したり、さらには成長して人間と家族関係を結ぶ伝承さえあるのだとか。
只、やはり魔界に連なる者。機嫌を損ねると酷いしっぺ返しを受けたり、最悪 絞め殺されたりすることもあるそうで・・。 直接の言われはありませんが、ガジュマルの木が “幸福の木” といわれる反面 “絞め殺しの木” とも呼ばれることを思い出してしまいます。
● ブナガヤー
少し失礼?な例えかもしれませんがキジムナーの亜種のような存在のようです。赤毛の長髪、半裸で活発な少年というイメージ。 本土での知名度は高くありませんが、沖縄で場所によってはキジムナーと同等かそれ以上に知られる妖怪なのだそうです。
キジムナーと異なるのは普段川底に棲み着いておりよく見えないのだとか。見難いがゆえに誤って踏みつけたりすると、途端に青白い火を出して踏んだ者を火傷させるそうで・・。
キジムナーの土台の上に河童が合わさり、そこに毒性のウミヘビやシビレエイのような生き物が習合した結果でしょうか・・。
● ガンヌシー
漢字にすると “龕の精(がんのせい)”。龕とは遺体を入れた棺桶を運ぶ輸送具のようなもので、龍の彫刻などが彫られた朱塗りの輿のことだそうです。現在でいう霊柩車のようなもの。 龕には二本の飾り角が出ているため、そこから牛のような姿をした妖怪と恐れられました。
ガンヌシーは人と関わって様々な怪異を引き起こしますが、そもそも人の遺体を運ぶ葬具であることから霊障をまとっていると考えられていたようです。
普段 龕を納めている倉庫での管理には巫女(ユタ)による鎮撫がなされているそうで・・。 葬儀で持ち出す際には宥めの言葉をかけ、仕舞う際には悪口を唱えながら収めないと、生きている誰かを連れていくと信じられていたそうです。
● オオサバ(大鯖)
船よりも大きく軽々と数人の人間を呑み込んでしまうような海の物の怪。 ・・ですが、当地で言うサバとは “鮫・サメ” のことであり、つまるところ “大鮫” への恐怖を語った怪でもあるようです。
伊良部島のとある名主は、オオサバに脅かされて不漁に喘ぐ村人たちを救うため、短剣一振り自ら海に身を投じてオオサバに挑戦。一呑みにされてしまうもののサバの腹を内から切り裂いて見事オオサバを退治。されど精根尽き果てて一命を落としてしまうという伝承が残っているそうです。 ”板子一枚下は地獄” 以前お伝えした屋久島伝承の “海鹿” といい、海に生きる人々の厳しさを物語るものといえるでしょうか。
● ザン
実在する海棲哺乳類ジュゴンそのものである・・ともいわれています。 つまるところ内地でいう「人魚」の琉球(及び南西諸島)の解釈。
例に漏れず人魚伝説には、それに関わった人間に不幸をもたらす話が多くそれはこの琉球でも同様ですが、異なる点といえば当地において人魚の出現・目撃には大津波が関連付けられることでしょうか。
古来より海洋性地震・津波に翻弄されてきた島々ならではの記憶と畏怖のイメージが大きくオーバーラップしているようです・・。
● タマガイ、タマセ
琉球地方における “人魂” のこと。
● ミミチリボウジ 過去記事 怨霊の一種
※ 本日の記事でご案内した妖怪の種類とイベントに登場する妖怪が一致するとは限りません。
150年以上も前の琉球王国の街並みをリアルに再現したテーマパーク『体験王国 むら咲むら』。
南洋の日差しに包まれ古のトロピカル気分を満喫した後は水平線に沈む夕日。 やがて包まれていく夜闇の向こうに浮かび上がる二十六体の琉球妖怪の妖しき姿・・。
『琉球妖怪2025』は異国情緒に満ちた琉球の佇まいに、これもまた見慣れぬ怪訝な妖怪の組み合わせという、他の地域から見ればある意味とてもアヴァンギャルドなイベントです。
園内に出没するマジムンたちはそれも月並みな人形などではなく、”ねぶた” という夜陰に映えるにはこれ以上ない造型。 ねぶた制作には青森県五所川原市から国際的に活動する工匠を招聘して、このプロジェクトを築き上げています。
南西の島国で味わう真夏の夜の祭典。 否や熱帯の夜を忘れさせてくれる琉球妖怪の神妙なる涼しさ。 一度 体験してみてください。









