三つの時のキーワードから見る長浜の小史 -(前)

「140年」「45分」「58年」ちょっとバラバラに思える この三つのキーワードから、今回、滋賀県長浜市のトピックをお送りしたいと思います。 よろしくお付き合いの程お願い致します。

琵琶湖の北東部 長浜市、豊臣秀吉によって開かれ 当時の地名 “今浜” から “長浜” へと改名、以来、東海以東と畿内を結ぶ “不破の道(大垣~関ヶ原~米原を通る道)” の 出口・要衝の機能を米原、彦根とともに担い、また、越の国(北陸・東北)に通ずる玄関口として湖北地域の経済・商工業圏を築いてきました。

東西の仲立ちに位置し 古くから広域経済に通じた近江国の一角に、秀吉が大規模な “免税措置” を実行したことで、多くの商人や技能豊かな人材が集まり往来する豊かな町となったのです。 近江国から後の世に名を残す経済人が多く輩出されたことでも、その繁栄と影響が知れようというもの。

時代の移り変わりにより かつての栄華の時は影を潜めましたが、それでも この一帯は東海道本線・新幹線、名神高速道路が通り、東日本と近畿 そして北陸をつなぐ拠点でもあり続けるのです。

 

日本の夜明けを謳った明治時代、早急な近代化を模索する政府は、その象徴でもある鉄道路線網の確立を進めていました。

昨年、記事にしました「商材だけではない グラバーが残したもの」でもご紹介した、鉄道実演会などを経て、政府は鉄道先進国でもあったイギリスの援助を取り付け、既に明治3年には建設に着手しています。当時の性急とも思える文明立国への情熱が伺われますね。

明治5年に新橋駅 – 横浜駅間に日本初の路線が開通、その後、神戸-大阪間、大阪-京都間と本格的な路線建設が進められ、明治10年には京都駅が正式に開業します。

しかし、同年1月に勃発した西南戦争の混乱や資金調達が滞ったことから、明治13年に開業した滋賀県 “大津駅” を最後に、その後の鉄道建設は遅々として進まず、特に東日本地域での延伸工事は、北海道など一部を除いて ほとんど停滞したままでした。

琵琶湖の南端である “大津駅” から東に向かう路線延伸は一時的に凍結され、当面、琵琶湖の水運による移動が当てられました。 その到着する対岸地が “長浜” に定められたのです。 後に東につなぎ、また、北陸へのハブ基点として長浜が選ばれたことは必然だったのかもしれません。

 

 

画像 © 長浜鉄道スクエア様

今から「140年」前
このハブ地点に明治15年(1882年)「長浜駅」が開業されました。 東京駅よりも早い開業だったそうです。 当初、北陸方面(敦賀)へ結ぶ路線が先に開かれたそうで、前述のように長浜から大津へのつなぎには「太湖汽船(鉄道連絡船)」が運行を開始しました。

駅開業時、如何に当時の先進地域といえど鉄道の到来は、当地の人々に大きな衝撃をもたらしたようです。 イギリスから招聘したエドモンド・ホルサム技師 指導の下、建設された駅舎は、世に名だたる “鹿鳴館” を思わせるような華麗な造りで長浜市民を驚かせたといいます。

まだ 鉄道自体が珍しく、中には “陸蒸気(蒸気機関車)” に恐怖や抵抗を覚える人たちさえ居た時代、優雅と先進性に溢れた西洋式の駅舎は、人々の時代に対する概念を根底から覆すマイルストーンとなったのかもしれませんね・・。

明治22年に ようやく “米原駅” が完成、湖東線が整備されてゆく中で「長浜駅」は、それまでの基点駅としての役割を終え、北陸方面への中継駅としての任へと変わっていき、時代の要請に応えた形で明治36年 北側に2代目の長浜駅舎が完成すると、当初の役割を完全に終えその後は倉庫として使われることとなったそうです。

20年余りの限られた時間ではありましたが「旧 長浜駅」が果たした歴史の役割と その栄光が色褪せることはないのでしょう。

 

しかし、その「長浜駅」、驚くべきことに現在もそのままの姿で存在しています。 “現存する日本最古の駅舎” として知られており、JR北陸本線 現在営業中の(新)長浜駅の南隣りに『長浜鉄道スクエア』の名で、鉄道マニアだけでなく、多くの観光客や子供さんにも喜ばれる人気スポットとして注目を集めています。

スクエア内は三つのエリアから成されており、メイン施設である「旧長浜駅舎」には 当時の “駅長室” や “一二等待合室” が再現維持されており、明治の面影を今に伝えてくれます。

総2階建て、東西24.5m、南北9.7m、現在と異なり骨組みは木製で、外壁は石灰コンクリートを使用した素地仕上げ。 壁の暑さは50cmに達し 基底部分に花崗岩などを使用するなどして大きな強度を確保しています。 140年経った今でもその美しい外観を保っているのは、これら堅牢な造りによるところが大きいのでしょう。

旧駅舎の北隣りに位置する「長浜鉄道文化館」では、現在の長浜駅周辺の鉄道路線を再現した “HOゲージ” の鉄道模型がレイアウトされており、子供から大人まで鉄道好きの人には時間を忘れて楽しめるエリアとなっています。 展望デッキから見渡せる生の北陸本線の姿も高ポイントでしょうか・・。

その隣りに並立する「北陸線電化記念館」には、昭和を駆け抜けた伝説的な二輌「D51 蒸気機関車」と「ED70 電気機関車」が 保存・展示されています。 展示車両である “D51形793号” の総走破距離は178万km、地球44周分ともいいますから驚きです。
こちらの館内でも “OJゲージ” と呼ばれる、より大スケールな鉄道模型ラインで、マニア垂涎のモデル「EF13 / EF55」が運行?されているそうです。

マニアからご家族連れ、カップルでも楽しめる『長浜鉄道スクエア』、単に鉄道の記念館というだけでなく、日本最古の駅舎に連なる歴史を背景に楽しまれるのが一番かと思いますが・・、実は長浜はこれだけではありません。

長浜の歴史と光を味わうスポットは他にも・・いえ、何と『長浜鉄道スクエア』の目の前に有るのでした。  次回はその施設、「45分」のキーワードにまつわるお話 + 本年につながるミニトピック「58年」のお話を合わせてお届けします。 ご期待下さい・・。

 

『長浜鉄道スクエア』 公式サイト

場  所 : 〒526-0057 滋賀県長浜市北船町1-41

開  館 : 午前9時30分~午後5時まで ※入館は午後4時30分まで ※休館日12月29日~1月3日

駐 車 場 : 隣に長浜駅西有料駐車場有 ※専用の無料駐車場はございません。

料  金 : 大人300円 小中学生150円

問い合わせ : TEL 0749-63-4091

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