日本は海に囲まれた国であり、また清流流れる山の国でもあり、人口が密集した都会からでも多少の時間をかければ 自然を目にすることの出来る緑豊かな大地でもあります。
街中の暮らしは便利であり新しいものに敏感であり、何より人口密集地であるが故に仕事にも事欠かず、特に若い世代から壮年期かけては 何らかの形で “街” と関わりを持ちながら生活を築いてゆくことが多いのですが・・、
やはり人間も元々は一介の動物、自然の中の一部分をなす生き物、水や空気なくして生きていけないのと同じように、海や山、川や草原など自然の佇まいと一切縁を絶って生きてゆくことは出来ません。 自然への郷愁とは人の中から沸き起こる必然の欲求でもあるのです。
面積的に数パーセントを占める都市部に対して、国土の大半は過疎化が進みつつある地方部であり、そのほとんどが自然と隣り合わせの暮らし、時間も些かゆったりと流れる 比較的マイペースな土地柄が特徴とも言えましょう。
各地方自治体では地元の魅力を発信していますが、本日は熊本県の中央部、下益城郡 美里町から 緑溢れる町の風情と当地で行われる “フットパス” イベントをご案内させていただきます。
美里町は平成16年、それまでの中央町と砥用町が合併、町名公募により “いつまでも美しいふる里” という想いを乗せて “美里町” の名が付されました。
町内地勢の80パーセントが森林と一部の農地が占めるという、典型的な郷里風土豊かな町ですが、日本屈指の単一アーチ石造橋「霊台橋(れいだいきょう)」や、春には1600本の桜が咲き誇る堤頂長295mの大型ダム「緑川ダム」、3333段という釈迦院表参道 日本一の石段など、歴史や風土に培われた見どころも豊富な景勝地でもあります。
霊台橋は江戸時代後期に架けられ、明治・大正、昭和41年までは主要道のひとつとして活躍し、近隣に鉄橋が整備された現在でも歩行者が利用出来る観光橋として知られています。
弘化3(1846)年当時、流れる緑川、船津渓は交通の要衝であるにもかかわらず架けられた木橋が次々と流されてしまうために、庄屋 篠原善兵衛をはじめとした有志が石橋の懸架を立案、72人の石工、一年間の工期をかけて作られたのだとか。
幅5.5メートル、長さ90メートル、高さ16メートルと石造りの橋としては巨大なもので、170年余を経てなお健在(2016年の熊本地震でも軽症)な姿を見るにつけ、建設当時の技術の高さ、懸架に馳せる人々の熱意を感じさせますね。
美里町では霊台橋の他にも、釈迦院川と津留川の合流地点 “二俣(ふたまた)” に架かる「二俣五橋」と呼ばれる五つの橋があり、建造年代も江戸期から近代とそれぞれ異なるため橋梁建設の歴史を垣間見るモニュメントともなっています。
特に「二俣橋」と「二俣福良渡」のニ基の石橋は、川の合流点に角度連鎖して架かる “兄弟橋” として珍しい形態とされ、また 二俣橋の桁下部分を通る陽射しが、季節・時間によってきれいなハート型を描くことから、近年では恋人たちの聖地などとも呼ばれ観光客を集めているのだそうです。
昭和55年1月から着手し昭和63年3月末、実に8年余の歳月をかけて作られた日本一の石段は、隣接する八代市泉町、平安時代にその由緒をもつ “金海山 大恩教寺 釈迦院” の表参道 “御坂” に3333段をもって築かれました。
国内外の御影石を投入して造られたその姿は荘厳の一言ですが、さすがに3333段の石段を一挙に登るには骨が折れそうですね。美里町のホームページでも無理して一挙に登らずマイペースを守ってと書かれています。途中休憩所や手洗いも有るそうです。
また、毎年11月には石段を登るアタック・ザ・日本一が開催されています(2021年度 開催未定)
単なる山がちなだけの町ではなく、こうした多くの景勝と歴史を湛えながら 美里町にはゆったりした時間が流れています。
緑に囲まれ里山を歩き、田園を散策しながら歴史的な景勝を見て歩く。『美里町 フットパス』が この9月からイベント再開されています。
“フットパス” とは、元々 散策のために農村部を中心として張り巡らされた小道のことで、イギリス発祥の名であり楽しみ方であるようです。 自然に浴しながら歩くことを愉しむ、いかにも古き英国気質の素朴で楽しい趣味ですね。
『美里町 フットパス』は 12月5日まで後6回ほどの開催が予定されています。見どころを効率よく歩けるための魅力的なコース設定が、その日毎に組まれているようです。
各回 定員制なので予約が必要ですが、パンフレットの端書きに目をやると「美里フットパスはイベントだけでなく、マップを持っていつでも・自由に歩くことをおすすめしています。」との文言が・・。
“自然を味わいながら気ままに歩くこと” という、フットパス本来のあり方からいえばイベント参加だけが目的ではなく、各人自由な来訪散策も立派なフットパスということなのでしょう。 この辺りのユルさも気楽で良いのかもしれませんね。
予約をして効率よく巡るも良し、多少迷っても気ままに出掛けるのも良し、自らの楽しみ方は自ら決めてこそ楽しめるのです。 熊本県美里町はそんな気ままで、そして、深い味わいにうってつけの山里なのです。
日 程 : 2020年9月12日(日)~ 12月5日(日)にかけて計8回開催予定
場 所 : 〒861-4412 熊本県下益城郡美里町佐俣705 道の駅美里佐俣の湯駐車場 集合
申し込み : こちらから (1週間前までの事前申し込み)
所要時間 : 現地 9:30 集合 ウォーキング 4時間程度
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