沖縄の歴史を公文書から”あれこれ”味わう – 沖縄県

“公文書” は行政機関が定められた規定に基づいて作成される公的な文書のことをいいます。 政府機関や数多の役所で作成・認証されたものが思い浮かびますが、司法に基づき警察や裁判所で発行されたものや消防署で作られたものなども含みます。

お役所の人が複雑な要項に沿って書いた公的な効力を持つ文書? 何かこう小難しいイメージがまとわりつきますが、その規定論拠や法的意義などを紐解くならともかく、文書そのものに書かれていることは 基本的にあったことをそのままに、決裁されたことをそのままに書いているだけなので、それほど難しいものではありません。

 

何らかの行政手続きや事案の処理において作成されるものであるために、その時点でのみ照会するものであって、事後 時が経った後で目にすることは稀ですが、これら公文書は言い換えるなら公的に認められた “時の証明書” であり “公の日記” でもあります。

大きくプライバシーに関わることも少なくない文書なので、その取り扱いには厳重な管理が必要ですが、同時に公的機関の業務や裁定を顕にするものでもあることから “公正や監査” という面から見れば、一定の規定をもって公開されることが望まれますね。

日本ではそれらの規定や法律においても諸外国に比べて遅れがちと言われ(情報公開法が制定されたのが2001年)、昭和の時代に政府や地方公共団体に対して、公文書の保存と一般公開の義務があることが明文化されているにもかかわらず、中々に順当な公開作業は進んでいないのが現状です。

 

© 沖縄県公文書館 様

 

歴史的な価値を持つ公文書の保存と公開のために設立されたのが “公文書館” であり、国立公文書館をはじめとして国内にも多数設置されていますが、この中から沖縄県の公文書館が現在 歴史カルチャー企画『公文書館所蔵資料群あれこれ』を開催しています。

今回の『公文書館所蔵資料群あれこれ』では「琉球政府」※ 時代に残された “チリ津波” の被害報告や、交通網発達の途上で起こったバス運行会社の労働争議に関するものから、本土復帰後の1978年にようやく日本式の左側通行に改められたことに関する文書、1997年頃の普天間基地移設に関わる書簡など、その内容は多岐に渡っています。

沖縄の歴史を公的な資料から読み取る企画展として とても興味深いものと言えるのではないでしょうか。

※「琉球政府」

沖縄はその長い歴史の中で数奇かつ熾烈な時を何度も刻んでいます。

先の戦争集結にあって沖縄は南西諸島・小笠原諸島とともに米軍の占領統治下にありました。戦後、軍政の諮問機関である「沖縄諮詢会(おきなわしじゅんかい)」が設立、その後も幾度の組織改変が行なわれ昭和27年には「琉球政府」が立てられましたが、その間 米国民政府(軍制統治機関)は一貫して米国サイドの政策を推し進めていました。

統治機関との軋轢と苦悩、そして様々な事件は想像を超えるものでしたが、「本土復帰」の悲願を掲げた島民の想いは屈せず、昭和47年の沖縄返還が実現されるまで住民の熱意が潰えることはなかったのです。

 

全国の高校球児が熱戦を繰り広げる “全国高校野球選手権大会” 、昭和33年、初めて沖縄から “首里高等学校野球部” の出場が果たされました。 残念ながら1回戦敗退の結果でしたが、問題は試合の終了後に起こりました。

球児たちは 他の敗退校同様、記念に甲子園の土を持ち帰ろうとしたのですが、それは許されなかったのです。

当時、沖縄はまだ米国の統治下であり、本土との往来はいまだ外国扱いであったため、”検疫を通さない土” を持ち帰ることは法規的に認められなかったのだとか・・。

この一件は沖縄県民のみならず 国内のメディアにも大きく作用し、本土復帰を願う “沖縄返還運動” の原動力ともなったそうです。

 

通常、歴史の考証を行う場合、残された文献を参考や証左に用いることが常ですが、こうした公文書に類するものは信憑性の高い資料として非常に貴重なものです。

上記の高校野球でのエピソードなど民間の話題で終始してしまうものは、たとえ その当時の人々の思いや 世間の盛り上がりが大きなものであっても、いずれ時の経過とともに風化していってしまうでしょう。

公文書、公的な記録には個々人の思いや その時節の雰囲気といった曖昧なものは記録されません。

しかし、(基本的には)公正な視点に基づいて作成された資料には、正確性とともに その行間に、そこはかとない当時の状況や世相が息づいているものです。

『公文書館所蔵資料群あれこれ』 行政お墨付きの日記からあなたは何を感じ取られるでしょうか・・。

 

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『公文書館所蔵資料群あれこれ』 公式サイト 当該ページ

日  程 : 2021年1月19日(火)~6月27日(日) 午前9時~午後5時

場  所 : 沖縄県公文書館展示室 〒901-1105 沖縄県南風原町字新川148番地の3

休  館 : 月曜・祝日・慰霊の日(6月23日)

問い合わせ : TEL . 098-888-3877(普及広報)

 

 

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