山間にたゆたう仁科三湖 幽玄と行楽の春 – 長野県

早いもので4月も上旬、コロナ問題で制限を受けながらも進学・就職と新しい生活が始まり、また心機一転 新年度への動きが高まっています。

この時期、ややもすると生活環境の変化に戸惑ってしまう私達の心を潤わせ、暖かく励ましてくれるかのような桜の姿、コロナ問題、それに伴う経済の悪化など揺れる世情を他所に、今年も爽やかで優しい色合いの花びらを満面に花開かせてくれましたね。

少々 気温の高まりが早かったのか、例年に比べ桜の咲き始めも各地で軒並み早く、西~東日本の多くの場所ではもう葉桜となり、後は東北~北海道を残すのみとなりましたが、地域柄 気温の上昇が抑えられる場所では、本州内でもまだまだ見頃を味わえる可能性がありそうです。

長野県 北西部、白馬岳を仰ぐ北アルプス地域の一角に 国内でも屈指の清らかな水を湛えた3つの湖「仁科三湖(にしなさんこ)」があります。

北から「青木湖」 その隣に寄り添うように「中綱湖」 少し離れて最南に位置する「木崎湖」、いずれも自然豊かなロケーションに抱かれ、釣りやキャンプをはじめカヌーや近年注目の SUP(スタンド・アップ・パドル)が楽しめる、アウトドア派 絶好の行楽地となっています。

この仁科三湖の一帯は山間であることもあってか気温の上昇も遅く、桜の見頃も4月の後半からと言われており、この春 花見の機会を逃した方でも出掛けられる機会があれば、湖上に浮かぶ端麗な桜の姿を目にすることが出来るのではないでしょうか。

 

「青木湖」

三湖の中で最も北に位置し最も面積の大きな湖です。(2位の木崎湖と殆ど変わりませんが水深はかなり深いです) アルプス由来の水で満たされていますが湖に流れ込む川は有りません。 それでも58メートルといわれる水深がいつも維持されているのは、おそらく湖底において相当量の湧水が湧き出ているのだろうと言われています。

青木湖 湖面に映る空

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この青木湖に伝わる伝説がひとつ・・、 その昔 湖の西岸で飼われていた大きな赤牛が仔牛を生んだものの、やがて時が経つと仔牛は東岸に住む農家へ引き取られることとなったそうです。

まだ あどけない仔牛は母牛との別れが辛く母牛恋しと鳴き続け、その声を聞いた母牛も悲痛に鳴き返していましたが、ついに矢も盾もたまらなくなった母牛は、留め綱をちぎって駆け出すと湖に飛び込み仔牛の声を追って泳いだのだとか。

しかし、対岸までは遥かな彼方、いつしか その姿は見えなくなってしまったのでした。

それ以来、青木湖の主はその大きな赤牛だと言われるようになったそうです。
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中々にもの悲しいお話ですが、湖に消えた赤牛(母牛)が湖の主となった・・。
普通、池沼・湖の主といえば “龍” や “蛇” または “大魚” が定番ですが、赤牛が主というのも珍しいケースですね・・。

雄大で閑静な湖にはエンジンボートは似合いません。青木湖でもプロのインストラクターがついて楽しめる「カヤック」(一人乗り)「カヌー」(多人数乗り)の体験が気軽に行えるようです。 結構小さなお子さんでも参加可能なようですので、ファミリーレジャーにはうってつけかもしれませんね。

 

「中綱湖」

青木湖に寄り添うようにひっそりと佇む小さな湖、その小ささゆえに目立つ存在ではありませんが、釣りの王道 ”ヘラブナ釣り” を嗜む人達からは絶好の漁場として愛されているようです。

中綱湖 双面の桜

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この中綱湖にも伝承が残ります・・。 昔 この中綱湖から立ち上がる丘に ”十國寺” というお寺があったそうです。

ところが、ある時の大きな地震で地が崩れ落ち、この寺も、寺にあった大きな鐘も もろともに湖へと流され湖底深く沈んでしまったのだそうで・・。

日が経ち、せめて鐘だけでも何とか引き上げようと様々な人が試みるも、いつも湖上に上がろうかという頃には突然の大雨に祟られ綱が切れてしまったのだとか。
無理からに引き上げようとする者には必ず良くない事が起きるのだとか・・。

鐘はいつしか中綱湖の主となり、時に干ばつから人々を救う業を現したりしながらも今も湖底で静かにその音をたてているのだそうです。
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こちらも珍しく ”寺の鐘” が湖の主となっているようですね。湖底に朧に見える鐘は時に黄金色に輝いているのだそうで、中綱湖の黄金の鐘伝説といわれています。

この中綱湖では、神秘的ともいえる お花見「ボヤージャーカヌーで夜桜鑑賞と星空(曇りの場合「夜」)の湖面散歩」も開催予定です。(2021年4月24日(土)~5月5日(水))

 

「木崎湖」

青木湖、中綱湖から少し離れ最も南、大町市内に近くアクセスにも有利な場所で、ここには民宿や旅館が軒を連ねるとともに「木崎湖温泉地」も抱えています。

比較的水温が高いことから夏の水遊びも含め、四季折々の自然美を漫喫できるレジャーレイクとしても知られています。

木崎湖と仁科三湖の総景

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さて、残る木崎湖の伝説となりますと「龍灯伝説」というものが伝わっています。

ある 満天に星降る夜、湖面を一筋の “龍灯” が渡るというもの・・。
“龍灯” とは爛々と目を輝かしているかのような 妖かしの火、俗に “不知火” とも呼ばれるものでしょう・・。

ネット上で見てみるとこれを「カノープス / Canopus」(りゅうこつ座 で光る一等星)との関連を示唆しておられる方もおられるようですね。

恐縮ながら「龍灯伝説」の直接の謂われを探すことは出来ませんでしたが、鎌倉時代の仁科領主 ”安倍五郎丸貞高” が政乱の末、落ち延びんがため湖を泳いで渡ろうとしたものの、飼い慣らしていた犬と鶏が鳴きながら付いて来たために、あえない最後を遂げた・・という話が残っています。

この話が「龍灯伝説」と関わるのかはわかりませんが、この伝承をも含め仁科の湖には それぞれに様々な、そして不思議な伝説に彩られているようですね・・。
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他の二湖と同じく水上のアクティビティ・スポーツなど充実していますが、木崎湖の特筆は一年を通して ”ワカサギ釣り” が楽しめるのだそうです。

一般に厳冬期の湖で氷に穴を開けて釣り上げるイメージの強い ”ワカサギ釣り” ですが、フルシーズンで楽しめるものとは知りませんでした。手軽に料理も出来てお腹にも満足な ”ワカサギ釣り” はファミリーでの行楽にも良いかもしれませんね。

 

長野県の奥座敷に佇む ”仁科三湖”、そこは雄大な自然の情景と不思議な伝説が解け合った幽玄の地でもあるようです。

ちょっと時期をずらした桜の花見も含めて、アウトドア・レジャーに事欠かない自然の楽園、コロナ対策をなされた上でお出掛けになってみてください。

 

「信濃大町の湖を楽しむ」 大町市観光協会

仁科三湖 : 長野県大町市北部

 

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