神々が欲し公使が愛した中禅寺湖の秋 – 栃木県

お彼岸も過ぎました。曇り続きの合間に青空が見え涼やかな風が吹くと 思わずマスクを外して 秋の香りを探したくなってしまう今日この頃ですね。

先日から “自然災害” “地方衰退” と少々 重たい話題が続きましたので、今日は秋らしく もう少し爽やかなトピックをお送りしたいと思います。

 

日光東照宮や華厳滝、そして日光連山などで知られる栃木県西部の奥日光、
都市圏からのアクセスもよく、奈良時代から続く山岳信仰の香り深い豊かな山地は、街の喧騒を逃れ自然の癒やしを求める人々にも人気のスポットです。

明治時代に一時の途絶を挟みながらも 現代に脈々と本道をつなぐ “日光修験道” の開祖は、当ブログでも過去登場頂いている “役小角 / 役行者” と伝わりますが、往時、日光山は二荒山(ふたあらやま / にこうさん)と呼ばれ、”補陀落(ポタラク)浄土の山” に例えられ多くの信心を集めたそうです。

二荒 に 日光 の文字が当てられたのは鎌倉時代、日光菩薩・日光権現の名のもとに修験道が隆盛を極めた頃と言われますが、往古伝承、二荒 の文字はその後も受け継がれ 現在も「二荒山神社」などに その名を留めています。

 

その日光連山のお膝元に広がる平野 “戦場ヶ原”、物騒な呼び名を持つこの湿地帯は国境(くにざかい)さえ定まらぬ神代の頃、二荒の神(男体山)と赤城の神(赤城山)が 中禅寺湖の覇権を賭けて戦ったという神話に基づいて名付けられたそうで、戦の際 流れた血で染められたという逸話から “赤沼ヶ原” の異名をも持つそうで・・。

戦当初、分が悪かった二荒の神でしたが、鹿島大明神の取り持ちで加勢に向かった弓の名手、小野猿丸太夫の一矢で形勢逆転、領地の死守を果たすことが叶えられ、この功績をもって小野氏は二荒の神祇を司るようになったと伝わります。

一説には 実際に起こった領地争いが元となっているとも言われる動乱の伝承ですが、現在では その面影を見ることもなく、穏やかな景観を楽しむハイカーの聖地として親しまれているのは皆様ご承知のところでしょう。

 

さて、神々に魅入られ欲するところとなった “中禅寺湖”、 静謐の風情湛える湖は一周約25km、最大水深163mを誇る 栃木県最大の湖であり、同時に国内最高位の標高(1269m、海抜に同意)にある湖でもあります。

日光山開山の祖、勝道上人が男体山に登った折 見つけたといわれる程、当時 山地に抱かれ人里から隠された神秘の湖であったのでしょうね。

約二万年前の男体山噴火による噴石や土砂により、谷川が堰き止められ出来た堰止湖であることから このような山間に形成され、今日の特異かつ優美な姿を私たちに見せてくれるのですが、この地域の持つ地質的な問題は歴史を通じて幾度となくもたらされ、明治35年の豪雨によって起こった大規模な山津波は 地域に深刻な被害を与え、以降、永年に渡る治山事業により安全の維持が図られているそうです。

 

独特の歴史故に現代では静謐さの際立つ景勝ともなった中禅寺湖ですが、この自然の美しさと閑静な佇まいは、明治時代以降 多くの文化人に愛され、明治天皇の行幸をも仰ぐ至上の保養地ともなりました。

上述のように都市圏からのアクセスが良い上に、静かな自然溢れる環境を満喫出来ることから大正から昭和の時代にかけて ここを避暑地と定め別荘を置いた人も少なくありません。 その中には 首都である東京に拠点を置き任を果たしていた外国大使館員の姿もあったのです。

異国での長期の任務に疲れた心身、祖国の自然にも勝るとも劣らない中禅寺湖の佇まいに魅せられた彼らは、この地に彼らの好みに合わせた別荘館を建て、多くの外交官や駐在員が癒やしを求めて 訪れ滞在していたそうです。

 

その中の一所に “イギリス大使館” の別荘がありました。

幕末から明治にかけて主に通訳として活動し、西郷隆盛や高杉晋作、井上馨らとも関わり、深く日本に対する理解愛着を持っていた “アーネスト・メイソン・サトウ” は、維新の動乱を経て駐日特命全権公使(事実上の英国大使)に昇進、激動の時代の中に安らぎを求めて中禅寺湖畔に保養所を建てます。

これが後に、イギリス大使館の別荘となり、以来、平成20年に至るまで およそ120年近く歴代の駐日イギリス大使・大使館員に公式に使用されていたそうです。

その後、栃木県がこれを買い受け、当時の建物内外・調度を修復再現した上で一般に向けて公開、周囲一帯を「英国大使館別荘記念公園」として開放しています。

また、隣接する “イタリア大使館別荘” は昭和3年に建てられ、平成9年に至るまで70年近く公式に使用されていました。
ここも「イタリア大使館別荘記念公園」として整備・公開されています。

© 栃木県立日光自然博物館 様

両館・公園地とも昭和初期の面影そのままに、アーネスト・サトウが愛し、イサベラ・バード(19世紀のイギリス人、女性旅行家・紀行作家)が絶賛した中禅寺湖畔の自然に見事に溶け込み、清らかな景観のピースとなっています。

館内も当時の内装を可能な限り残しながら、数十年から一世紀に届く歴史を感得出来る構成となっているそうで、同時にシックな気分を味わえる喫茶スペースも用意されており、ゆったりと流れる時間を過ごせるでしょう。

周辺には、ボートハウスやレンタサイクルのサービスもあるようで、これから少しづつ深まりゆく秋、やがて到来する鮮やかな紅葉シーズンも踏まえて絶好の、そして、心豊かな行楽ポイントとなるのではないでしょうか。

季節の変わり目、気温の昇降も大きな時節、コロナ対策とともに 一枚多めに羽織るものなど用意されて お出掛けになってください。

 

英国大使館別荘記念公園 公式サイト

イタリア大使館別荘記念公園 公式サイト

日光自然博物館

場  所 : 〒321-1661 栃木県日光市中宮祠2480-1

アクセス : 中央道「一宮御坂」ICから約30分

備  考 : ※湖畔沿いの市道は、自然環境保全のため一般車両の交通規制有り

問い合わせ : TEL:0288-55-0880 FAX:0288-55-0850

※ ご承知のとおり 現在 コロナウイルス感染症問題に関連して、各地の行楽地・アミューズメント施設などでは その対策を実施中です。 それらの場所へお出かけの際は事前の体調管理・マスクや消毒対策の準備を整えられた上、各施設の対策にご協力の程お願い致します。 また これらの諸問題から施設の休館やイベントの中止なども予想されますので、お出掛け直前のご確認をお勧め申し上げます。

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