清涼なる安らぎの時 旅情詩人 川瀬巴水展 − 千葉県

”日本画” と言うと少し難しく感じる方もおられるかもしれません。

このようなページにお越し頂いて ご覧になられている方には そうでないかもしれませんが、どうも日本人は”芸術” という言葉に妙な方向に敏感で、得てして”高尚なもの” ”難しいもの” といった印象をもってしまいがちなようです。

テレビや映画などで如何にも高級な趣味のように描かれ、元々は貴族のもの、学識の高い人のもの、生活にゆとりのある人のものといった感覚が広まってしまったためか、一般庶民の生活に今ひとつ縁遠い印象があるのでしょうか・・

扉を開けて外に出て、そこに広がる景色や流れる雲にほんの少しでも何かの感動を覚えたなら、それはもう芸術的な感覚の一端を体験しているのです。
作者の名前やその背景、歴史など何も知らなくても芸術を楽しむことには何ら差し障りありません。

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ゴッホ や セザンヌ、ミュシャ や ダ・ビンチ など西洋絵画は比較的 話題になりやすく テレビなどで取り上げられることも多いので、展覧会に出かけられた方も多いかと思いますが、どういう訳か日本の国にありながら”日本画” は今ひとつ脚光を浴びる機会が少ないように思えます。

東山魁夷、平山郁夫、横山大観、岸田劉生、そして多少別枠になりますが、浮世絵の北斎、広重、近年人気のある歌川国芳 などの大家が名を知られている程度でしょうか・・
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私見で恐縮ですが、日本画の”核” は”静の美” ”静の中にほとばしる生命” のように思います。
視感や想像から得たインスピレーションをそのままに表現しようとする西洋絵画と異なり、あくまでも端正な趣の中に過度な主張なくして、それでいて見る者の感動を呼び覚ます、それが日本画の真髄であり、日本人ならではの感性ではないかと思うのです。

 


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川瀬巴水(かわせ はすい)1883年(明治16年)~ 1957年(昭和32年)

川瀬文治郎 は20代後半という やや遅まきな出立ながら、日本画家・鏑木清方の門人となり少年時代より望んできた画家への道を歩み始めました。 修行を積み「巴水」の画号を得た後、日本画から浮世絵版画の新興に傾倒、明治以降の技法や表現のエッセンスをも滲ませた美しく清涼感に満ちた版画を数多く生み出してゆきます。

”旅の版画家” とも呼ばれるほど多くの地に足を運び 各地の美しい風景を詩情豊かに表現した作品は、その地の趣深い佇まいとともに それを見つめる巴水の心情まで私達の届けてくれるようで、いつまで眺めていても飽きることのない安らぎを湛えています。

一説には、巴水作品の人気はむしろ国内より海外において高いと言われており、それが少し残念にも思えますが・・

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そんな 川瀬巴水の作品展が千葉県野田市の「茂木本家美術館」で開かれています。
今ではその多くが失われた大正から昭和にかかる懐かしき日本の姿、旅情詩人とまで謳われた巴水の目をして描かれた風景の一景一景は、浮世絵や日本画の枠組みや知識口上など忘れさせてくれるほど、しとやかで叙情に溢れた時間を私達に届けてくれるでしょう。

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頭ではなく、目と心を使う、考えるのではなく感じる
その先にあるのは・・ ごくシンプルな感動と癒やしの世界

川瀬巴水展がその一端となれば幸いです。

 

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企画展「川瀬巴水展 東へ西へ」 前後期公式ホームページ

場  所:公益財団法人 茂木本家美術館
.    〒278-0037 千葉県野田市野田242

日  程:前期 東日本編 2019年9月4日(水)~ 10月20日(日)
.    後期 西日本編 2019年10月23日(水)~ 12月8日(日)

開  館:水曜~日曜 10:00~17:00(月曜、火曜休館)
.    ※ご入館は16:00まで

ご予約のお願い
皆様にゆっくりご鑑賞いただくために、ご予約をお願いしております。
※ご予約のない方でも、定員に余裕がある時にはご入場いただけます。
ご予約専用電話:TEL.04-7120-1489

入 館 料:個人 大人 700円 小中学生 400円
団体(20名様以上)大人 600円 小中学生 300円

問い合わせ:TEL.092-922-3551

 

 

 

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