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福島県 いわき市立草野心平記念文学館 において「ぼのぼの原画展」が開催されます。
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近年、往年の絵本や漫画、アニメを題材とした展覧会は各地の美術展で企画されますが、長年に渡って静かにそして熱く支持を集める「ぼのぼの」の原画展、期待が募りますね。
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「ぼのぼの」(読み:BONOBONO) あまり ご存じない方には何のこと?と思われるかもしれませんが、「ぼのぼの」とは1986年に掲載開始、現在に至るまで30年以上に渡って続くいがらしみきお 氏原作の 4コマ(多くは8コマ)漫画です。
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基本的には”不条理ギャグ” の類に属するものですが、極めて素朴かつ深い意味をも暗示する哲学的要素も散りばめられており、又 それを全く見せびらかせようとしない展開のため小さな子どもから大人にまで「ぼのぼの」の熱烈なファンは絶えず、月刊誌掲載にもかかわらず2019年現在 コミックスは既刊44巻を数え、その他 多くのスピンオフ作品、映画化を含む数度のアニメ化を果たすなど社会的と言えるほど長年に渡る支持を集めている作品です。
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”ぼのぼの” は題名であると同時に その主役であるラッコの名前でもあります。
登場するのは全て動物であり、”ぼのぼの” の他に、親友の ”シマリスくん”、ガキ大将タイプの ”アライグマくん”、怠惰だけど物知りな ”スナドリネコさん”、森のボスでありながら人情肌の ”ヒグマの大将”、そしてぼのぼのの想像上の怖い存在 ”しまっちゃうおじさん” など数多くの個性的なキャラクターが自然豊かな森の舞台で淡々とそしてドラマチックに活躍します。
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不条理ギャグは 昭和の頃から続く定番の展開(ボケ・ツッコミなど)と異なり、慣れないうちは どこが笑いどころなのか把握しづらいような 微妙な雰囲気をまとっていますが、一度ハマってしまうと その虜になり離れがたい面白味をもっています。
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「ぼのぼの」は不条理ギャグをベースにしているものの、それが(人間ではない)動物の他愛ない行動や表現に絶妙にマッチしており、反面 動物たちの織りなすドラマが私達(人間)へ問いかけてくるものが作品全体をとおして そこはかとなく漂っており、それが大人達をも魅了し続ける由縁なのかもしれません。
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「木に登れたらいいなァ 木に登れたらいいなァ
木に登れたら みんな朝おきるところが見れる
みんな朝おきるところが見れたら楽しいだろうなァ
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みんな朝おきるところが見れるとなんで楽しいかっていうと
みんなおきるからだ
木に登れたらいいなァったら」 ぼのぼの より
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いがらしみきお氏の作品には”矢印→” が使われたり、全くの空白が用いられたりと直接的な表現に終始せず、読者に一拍考えさせる、行間を読ませる、という手法が時折見られます。
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氏は幼い頃から いくばくかの聴覚障害をもたれているそうで、もしかすると その障害故に、ものに対する捉え方、考え方、表現のあり方に、深いもの、また 独特のスタンスを獲得されたのかも知れないと思うのは私だけでしょうか。
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ぼのぼの達が暮らし遊ぶ世界は漫画の中のお話、しかし、目に見えるもの、声に聞こえるものに左右され振り回される私達の日常世界に ぼのぼの達 が語りかけてくるものは単なるファンタジーの呼び声だけではありません。
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絵本作家・エッセイストであった故 佐野洋子も仰られておられます。
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「大事なものは全部目に見えないと思っているの。
目に見えないことが一番大事なことだと思っているの」
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旧記事リンク(2018年6月28日) 「愛されて40年「100万回生きたねこ」展」
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目で見えないものの中、音で聞こえないものの中にこそ人が生きる真実があるのかもしれません。
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他愛ない4コマ漫画の中に静かに佇む真実、その原画展、ご興味を持たれましたら是非!
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企画展「ぼのぼの原画展」 公式ホームページ
会 期 2019年7月13日(土)〜9月16日(月・休日)
時 間 9:00~17:00(最終入館16:30)
※7~8月の土曜は9:00~20:00(最終入館19:30)
休 館 日 毎週月曜日、7月16日(7月15日、8月12日は開館)
臨時開館日 8月13日(月)
場 所 いわき市立草野心平記念文学館
〒979−3122 福島県いわき市小川町高萩字下タ道1番地の39
問い合わせ TEL 0246-83-0005 FAX 0246-83-2939
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