熱き大書は紙の町で今年も舞う – 愛媛県

文章を書くことは好きな方です。・・でなければ、こんなブログなどやっていませんねw。

学生時代から作文や論文を書くのにそれほど苦労を感じた記憶がありません。テーマが決まり凡その構成が思い浮かんだら適当に書き進み、原稿用紙数枚程度ならじきに書き上げました。 作文など文章を書くのが苦手な人からみれば不思議に思うかもしれませんが、得手というものは そんなものです。

只、だからといって文章そのものの出来はどうかというと・・。ご覧のとおり、未だもって素人レベル。読む人を引き込むような魅力的な文章を正しい書式で書くことは中々に難しいのです・・。

さらに もう一つ。文章を書くことが好きなことと、書く文字そのものが上手なことは これまた別問題、未だヘタクソです。 特に近年は筆記具を用いず、こうしてキー入力ばかりしているので書き文字が上手くなるはずもありません。(スマホのフリック入力は苦手w)

それどころか、漢字さえも少しずつ忘れていっているような気が・・。ボケ防止の観点からも “字を書く” ことを増やしていった方が良いのでしょうね・・。

 

はてさて、文を書くのは好きと言いましたが、こんな塩梅で子供の頃から字を書くこと、特に小学生時代の履修でもあった “習字” は苦手でした。特に “毛筆” ・・。

硯で墨を磨るところから面倒でしたし、せっかく書き上げた上から先生の朱筆で微妙に訂正されて「大して変わらないじゃん」とか思っていました。 いうなれば、私の文章得手は文字の重みを知らず、要領のみに頼った底の浅いものだったのかもしれません。

この歳になって再び “筆書” というものを顧みたとき、その美しさや力強さだけでなく、奥深さや意義、そして可能性に圧倒されてしまいます。

 

令和6年7月28日(日)愛媛県四国中央市、伊予三島運動公園体育館において『書道パフォーマンス甲子園』が開催されます。

“甲子園” の名が付くように、参加者は12人以下で組んだ高校生のグループ(多くは書道部)。 「大書」(床に広げた大きな紙に大筆で書き上げてゆく書法)に、音楽、舞踏を組み合わせた躍動的なパフォーマンスを繰り広げるというもの。

予選審査を通過した20校前後(本年度)が出場。優勝を目指して、一年間取り組み築き上げてきた技法と熱意の全てをぶつけます。

“書” と “踊り” と聞いて、古来より伝統的な書法に馴染んできた方には少し違和感を覚えるかもしれません。しかし彼女たちが書道パフォーマンスに打ち込む姿勢は極めて真摯なものであり、そして “書” に対する理解や想い入れも相当なもの。

そもそも「大書」そのものが、無駄のない、それでいてダイナミックな所作も重要視される書法ですので、書道パフォーマンスはそれの発展型とも言えるのではないでしょうか。

文机を前に己と対峙しながら臨む書を “静” とするなら、生命力の謳歌のごとき書道パフォーマンスは、まさに “動” なる書。表裏一体、書道の真髄を求むるところは同じなのです・・。

 

年一回、本年で17回目を迎える「書道パフォーマンス甲子園」、今回も含めて開催は全て四国中央市で開かれます。 なぜ四国中央市なのでしょうか。

ことの起こりは平成13年頃、愛媛県立三島高等学校の書道部員たちによって、地元商店街の一画を舞台に “書の実演演技” が披露されたことが始まりでした。 “地元の町おこし” の意味も持っていたようです。

これが当初の予想を上回る人気を得、やがてマスメディアの目に止まるところになると全国区の話題となります。 広く知られるにつれて他府県の高校でも同様の動きが起こると、平成20年 ついに第1回大会の開催へと結び付きました。

平成22年には、彼女たちを題材とした「書道ガールズ!! わたしたちの甲子園」という映画の公開にまで至ったのです。 “町おこし” の目標も十全に果たされたのではないでしょうか。

 

書道パフォーマンスがこの地で起こった背景には、地元 四国中央市が 紙・パルプ製品の出荷額で17年連続全国1位(2020年)。 ”紙” の生産地として歴史的に知られた地であることも関係しているかもしれません。

以前 高知県からの記事「仁淀の清流に和紙の故郷を訪ねて」でもお伝えしたように、四国は紙の原料となる木材の調達に優れ、また清流にも恵まれていること。さらに古くは楮(こうぞ)や三椏(みつまた)などの成育に適していたことから、和紙、その後 洋紙の生産を重要な産業として育ててきました。

三椏の花

高知の “土佐和紙”、徳島の “阿波和紙”、そして愛媛の “伊予和紙” と、それぞれの特産和紙を抱えるほどになった四国各地は “四国は紙国” と言われるほど製紙王国であり続けたのです。(香川県は紙の生産よりも流通を進めた)

そのような歴史を礎に 四国中央市は、古来から受け継がれた和紙の伝統技能の継承と、先進的な製紙技術の研究・発展の両端を推し進め、国内屈指の “紙の町” となったのでしょう。

「書道ガールズ!! わたしたちの甲子園」でも背景として映り込む 港の向こうの巨大煙突は、人々の心に刻まれた原風景のひとつであり誇りでもあるのです・・。

 

真白な紙の町で今年も繰り広げられる熱き戦い。

過去(伝統)、現在(躍動)、未来(希望)を渾然に取り込みながら、4m×6m四方の紙に揮毫される若者たちの想いの全てを・・貴方の目で確かめてみてください。

『第17回 書道パフォーマンス甲子園』 公式サイト

 

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