歴史の英傑を妙味に味わう企画展 – 栃木県

子供の頃、学校が終わると家に帰るのもそこそこに、また遊びに出掛けていました。 当時はまだテレビゲームなどありませんでしたし、空き地の遊び場なども其処ここにあったので、”子供は外で遊ぶもの” が普通だったと思います。

“教育ママ” なんて言葉が生まれるほど、高学歴化に向けて動き出していた時代でもあったので、”今日は塾” と遊びに来られない子もチラホラ出始めた頃でもありましたが、まだまだ子供たちは自らの社会を形成しながら、いつか至る大人への土台を培っていたのではないでしょうか。

低学年時代、空き地に集まって始まる定番といえば いわゆる “正義の味方ゴッコ”。 ヒーロー役、悪役を決めてそれぞれの陣営?に別れれば戦闘開始ですw。まぁ実際には真剣に戦うわけでもなく、どちらかといえば芝居じみた掛け合いでもあるので、大きな怪我をすることもなく済みましたが、”正義と悪に分ける” “戦う” など現在だと色々意見を被る話なのかもしれませんね・・。

 

私自身はどちらかというと、正義役であれ悪役であれ、トップの役回りよりも一段下、”ヒーローの補佐役” とか “悪の幹部役” などの方に、魅力を感じる性分でしたので割りと楽に “役” が取れましたw。

言うなら “ヘンコ” な性分故ということでしょうが、それはそれで私にとっての “ヒーロー” だったのでしょう。

さて、”ヒーロー” また “ヒロイン” と呼ばれる人々は、実際の歴史においても数多に存在し、その多くは伝説として今に伝えられるわけですが、それがそのまま全て事実か? と問われれば、得てして時代ごとの脚色を免れることはできません。

いまだ定番の昔話として今日に伝えられる “桃太郎” の姿も、明治時代の富国強兵策・道徳観念に強く影響を受けています。

ヒーローそしてヒロインというものは、いつの時代も世の多くの人々にとって 憧れの存在であり、また見習うべき姿でもあるため、いやが上にも “時代の要請” に彩られるのでしょうね・・。それは形を変えて、上述のような子供の遊びに反映されるほど。

ましてや百年、数百年、千年前の人物ともなれば、史実そのものさえ朧となってしまうのですから・・。

 

その千年を超える日本の歴史の中で、神話級に語り継がれるヒーロー&ヒロインたちを美術の視点から、それも、中々ユニークな捉え方で見る美術展が栃木県「佐野市立吉澤記念美術館」で【前期】8月20日(日)まで、【後期】8月26日(土)から9月24日(日)まで開催されています。

収蔵企画展『ヒーローズ&ヒロインズ』

美術館のコピーをお借りして、その概要を見てみましょう。

〜「物語や歴史の主人公たちの魅力はどのように表現されてきたのか?」という点に注目する、日本画と工芸の展覧会です。定番的な主人公像にとどまらない、多様な人物表現を紹介します。

物語や歴史において、どんな人が「主人公」たりえるでしょうか?武装した女性、みやびな男性、賢い少年、育児する老人など、さまざまなパターンを見るだけでも、人間の多様性を知ることができます。

どんな場面が物語や歴史から切り出されるでしょうか?勝利の瞬間、敗北の覚悟を決める頃、物語を語る人…。そしてそれはどのように表現されるでしょうか?また、その狙いは? ・・~

 

現在 私たちが知る歴史的主人公の姿は、多くテレビや映画を通して見た映像的知識です。 しかし、映画さえも普及前だった明治期以前、大衆が求めるところのヒーロー&ヒロイン像は “絵” と伝承によってのみ伝えられたのです。

企画展では明治時代に歴史画家として名を馳せた “小堀鞆音(こぼりともと、佐野市出身)” とその門人たちによる、当時の英雄像を展示。 また、”山本茜” による神秘的なガラス工芸作品によって英雄像を物語の立場から抽象表現しています。

面白いのは英雄像を今までに知る定番的な文脈からのみ見るのではなく、「神功皇后が人気画題だった理由」「スーパー育ジィの活躍」「別バージョンの浦島伝説」など、ユニークな切り口で捉え構成し、来場者の想像力に訴えているところではないでしょうか。

さらに “山本茜” 制作のガラス工芸作品は、”截金(きりかね)ガラス” と呼ばれる 氏独自の技法をもって作られており、その美しさ・佇まいは “芸術的感性” などという、大仰な題目を持ち込まずとも、そこに自然に物語を思い浮かべてしまうような不思議さに満ちています・・。

画像 © 佐野市吉澤記念美術館 HPより

 

本日の記事は 少し退屈だったでしょうか?
でも考えてみれば、数百年、千年と語り継がれる英傑たちの姿と その物語に対して、私たちは多くを知っているようで、反面 その素の姿を知らない知りようがないのも事実なのです。

しかし、何処かの一点、何らかの一面から、また新たな視点をもって望めば、今までにない斬新なヒーロー&ヒロイン像を見ることが出来るかもしれないのです。 『ヒーローズ&ヒロインズ』がその一助となれば幸いです・・。

収蔵企画展『ヒーローズ&ヒロインズ』 公式サイト

場 所:佐野市立吉澤記念美術館
〒327-0501 栃木県佐野市葛生東1-14-30

会 期:【前期】2023年7月15日(土曜日)~8月20日(日曜日)
【後期】2023年8月26日(土曜日)~9月24日(日曜日)
休館日:毎週月曜日(7月17日は開館)、祝日の翌日(7月18日、9月19日)、展示替期間(8月21日~25日)
開館時間:午前9時30分~午後5時
観覧料:一般:520円(470円)

※ ご承知のとおり 現在 コロナウイルス感染症問題に関連して、各地の行楽地・アミューズメント施設などでは その対策を実施中です。 それらの場所へお出かけの際は事前の体調管理・マスクや消毒対策の準備を整えられた上、各施設の対策にご協力の程お願い致します。 また これらの諸問題から施設の休館やイベントの中止なども予想されますので、お出掛け直前のご確認をお勧め致します。

お願い:運営状況、イベント等ご紹介記事の詳細やご質問については各開催先へお問い合わせ下さい。当サイトは運営内容に関する変更や中止、参加によるトラブル等の責務を負えません。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA


このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください