夜彩る千の灯籠 子供たちの笑顔 – 長崎県

「江迎町」、何と読むか分かりますか? 特に難しい読み方ではありません。「えむかえ-ちょう」と読みます。そのままですねw。でも何となく「えごう」とか「こうげい」とか特別な読み方があるのではないかと考えてしまいます。 こうしたことが気になってしまうのは、私自身の名字が、”そのまま読めばいいのに” 大抵の場合 ちゃんと呼んでもらえないからかもしれません・・(^_^;)

「江迎町」は 長崎県 佐世保市に2010年(平成22年)3月まで存在した自治体です。
現在は佐世保市の行政区分に組み入れられたため 自治体としては消滅しましたが、「江迎町」の町名そのものは存続しています。町内を流れる川も “江迎川” といいます。

おそらく・・で恐縮ですが、江迎の名は その “江迎川” を通じて “江迎湾”、そして平戸の海に出るための港湾拠点であったことを表していると思います。 この地域は古く “平戸藩” でもあり、江迎はその “本陣(支庁的役割をも果たすもの)” も置かれていた要所でもありました。沖合の “平戸島” との連絡地でもあり、往時は大変な賑わいを見せた町だったとも伝わります。

山と海が近接している長崎県の特徴を湛えたのか “長坂” “赤坂” “栗越” などの地名が見られ、また “猪調(いのつき)” “乱橋(みだればし)” など、面白い地名も多く残っています。

 

明治以降、周辺地域の炭鉱事業に伴い活気を呈しましたが、昭和中盤期に多くの炭鉱が閉山して後は閑静な町へと戻り、現在は農業が中心の典型的な “地方町村” の状況です。 写真は長坂のとある交差点をGoogle Map で見たものですが・・、地方にお住まいの方なら “どこにでも見掛ける町の佇まい” ですね。

・・で、その写真の・・左端の方に、何やら奇っ怪な構造物が写っているのがお分かりになるでしょうか・・? 三角に尖った塔のような建物、電気の高圧鉄塔・・でもないし・・。

実はこれ「灯籠タワー」と呼ばれる、江迎町のお祭りのシンボルです。
高さは25メートル、毎年8月23・24日に行われる『千灯籠まつり(せんとうろうまつり)』には、3500個もの灯籠がかざされ江迎の夜空を琥珀色に彩るのです。

灯籠タワーだけでも3500個、祭りの両日は町の各所にも灯籠が掲げられるので、町中 灯籠の明かりで満たされ 祭りの空気一色。幻想的な雰囲気に包まれます。その総数は約10000個にも達するそうで、千灯籠・・というより江迎万燈籠といった感じですかねw。

写真提供:(一社)長崎県観光連盟

この『千灯籠まつり』は 約500年もの歴史を紡ぐといわれています。 およそ500年近く前、戦に明け暮れた時もようやく収束を迎えつつある時代ですね・・。 ある意味、荒廃し疲れ切った世を見送り、安寧の時代の到来を願う気持ちが、祭の中に宿っていたのかもしれません。

何故なら この『千灯籠まつり』その名と現在の状景から、どうしても “灯籠” が主役に見えがちですが、この祭の主体は実は “衆生が願いを託す” “地蔵” であり “水” なのです・・。

“地蔵+水”、つまり “水掛け地蔵” 行事こそが この祭の本体であり、それは現在でも明確に引き継がれています。 8月23日 寿福寺で開帳、子供たちが担ぐ神輿に乗せられた仏様(地蔵尊)が、江迎川の支流 “嘉例川(かれいがわ” まで運ばれ、そこで四方から水を掛けられます。

その後、神輿は江迎町内を練り歩きますが、その時 沿道から見守る大人たちが、今度は神輿と子供たちに向かって水を掛けるのだそうです。この水を浴びた子供たちは その一年病気にならないのだとか・・。

写真提供:(一社)長崎県観光連盟

疲弊から立ち直ろうとする古の時代、”とある事” から始められた “水掛け地蔵祭”。 その祭に際して戸口に灯籠を掲げたことが やがて広まり、時を経て現在の『千灯籠まつり』に繋がりました。今では祭に合わせて 夜半2000発もの花火も打ち上げられ、灯籠タワーとともに 江迎の夏の夜空を彩るのです。

祭というものに “火 / 灯” と “水” は重要な役割りを果たすもの。『千灯籠まつり』は、その両方を内包しながら郷土の想いと歴史を伝える祭事なのでしょう。

それでは文末となりましたが、その “とある事” にまつわる民話・伝承を付記しておきたいと思います。 因みに伝承文頭に登場する “殿様” とは、古く当地一帯の領主でもあった “松浦氏(平戸松浦氏)” ではないかと思われます・・。

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『江迎の水掛け地蔵』

さても今は昔 長々と続いた戦もようやく終わると
平戸のお殿様も その務めにキリをつけ 息子に家督を譲ったとな

江迎の里に別邸を拵えると そこで悠々と隠居されたのだそうな

ようできた殿様での 新たに住まう里の人たちの暮らしを何かと気にかけ 皆から慕われておったそうな
里の民 皆が平和に暮らせるようにと 一体の木彫りのお地蔵様を彫らせ お堂を立てて そこに祀ったのだと・・

それから 何十年も経ったある日のこと

村の子供たちが この地蔵様をみつけ
「地蔵さん! おいたちと川で遊ぼ!」とばかり お堂から地蔵様を担ぎ出し 川で水を掛けたり沈めたりして遊んでおったそうな

ところが その様子を見て驚いたのが 通り掛かった一人のお役人さん
「コラ! ワイら何しよっとか! 罰当たりなことしてからに!」

一喝 叱りつけて子供たちを追い払うと やれやれとばかり お地蔵様をお堂へ戻し また悪さをされないようにと格子戸に鍵を取り付けたのだと・・

 

ところが どうしたことか お役人さん その日の晩から急に熱を出し苦しみだしたという

何日経っても熱は下がらず 薬を飲んでも お医者様に診てもろうてもいっこうに良くならん

あげくうわ言で
「・・せっかく子供たちと遊んでおったに・・ もうお堂の中はこりごりじゃ・・」などとしきりに呟くではないか

これは役人が先日言うとったお地蔵様の一件ではないかと
家族の者が お堂に駆けつけ 鍵を開けて地蔵様を外に出すと
役人の病は嘘のように治ってしもうたのだと・・

 

これはもう どうしたものと村の者たちは話し合い
寿福寺の和尚さんに頼んで 以来 地蔵様は寺で安置するようになったのだそうな

子供たちとも遊べるように 年に一回 水掛け祭 を行う
その日 子供たちは青いふんどしに法被姿で 心置きなく地蔵様と戯れるそうな・・

写真提供:(一社)長崎県観光連盟

 

江迎『千灯籠まつり』 参考サイト(ながさき旅ネット)

日  程 : 2023年8月23日(水)・24日(木)

場  所 : 長崎県 佐世保市 江迎町

寿福寺 木彫り水掛け地蔵 の参考サイト (オープンデータ ジャパン)

本記事の画像を含む参考サイト 「佐世保・小値賀 海風の国」

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