突き上ぐる舳先に宿りし生命への願い – 秋田県

この記事は7月17日 公開予定でしたが、秋田県豪雨災害に伴い本日付公開移動しました。
秋田県内、また他地域の豪雨災害により被災された皆様に心よりお見舞い申し上げます。
以下は7月10日前後に作成した記事内容をそのまま掲載しております。

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以前は単に集中豪雨と言っていたように思います。 より新たな分類に基づいて言い表すことの多い昨今では “局地的大雨” や “線状降水帯” などと表現することが多いようで・・。 地球的規模の環境変化か、過度な舗装やコンクリート建築の飽和によるものか・・、昔に比べて天候の現れ方が 随分と極端になったような気がするのは私だけでしょうか・・。

私の住む地方でも先月 大きな被害を被りましたが、九州北部から中国地方にかけても 先日来の線状降水帯により、大規模な災害や被災者を生むことになりました。 残念ながら、自然災害だけは避けようがない・・のが実情ですが、長雨が続いた後の山や川の状態には普段から注意を払っておいた方が良さそうです。 何事も早い段階、先手での判断・対応で身の安全をお図りください・・・。

 

梅雨が明ければ・・、明けないうちから既に始まっている気がしますが (^_^;)・・本格的な夏到来です。 これまた繰り返しになりますが、近年の夏の暑さは尋常ではありません。 単純に暑いだけでなく、アスファルト・コンクリートからの照り返しや熱飽和も手伝って、屋外はサウナ風呂の中を移動しているに近い状態もしばしば・・。 特に地上付近に近い子供さん含め、外出時は陽除け・水分補給によくよくのご注意、そして何より “良質な睡眠” を含めた、日頃からの体力維持に配慮いただければと思います・・。

冒頭から重ったるい話で恐縮です・・。 要するに、日本には “四季” という代え難く素晴らしい季節の移り変わりがあるものの、やはり “真夏” “真冬” という二季の極期時分は何かと辛いもの。古い時代の人々も その時期を乗り越えるため様々な苦労と工夫を重ねてきました。

時代が時代ですので、現代と一面的に比較は出来ませんが・・、よくいわれる “打ち水” もそのひとつですよね、蒸散効果と相まって一定の気温低下を講じることが出来ます。現在でも時折 話題になりますが、これも舗装路への打ち水の場合 地面の吸水性が低いため、かなりの量の水を用いる必要があります。

というか、そもそも江戸時代より古くには真夏の日中に人々は、外出しなかった・働かなかったともいいます。 早朝及び夕暮れ時分に仕事や用事を集中させ、真っ昼間は屋内や木陰・川辺で涼をとっていたそうです。 厳密な “時間” に縛られないのどかな時代ならではの世風といえると同時に・・、季節に対応した “体力温存策” でもあり、理に適った過ごし方とも思えますね・・。

 

祭りや風習・習俗が その国(地方)の季節や気候と深い関わりを持っているのは、ご承知のところかと思います。 例年6月の末に全国の神社などで行われる “夏越の祓” は、一年の後半期に対する息災の願いであるとともに、夏季における病魔・厄災(食物の腐敗、流行病、そしておそらくは熱中症なども)からの、厄除けの意味が込められていました。

昼間は働かない・・なんて結構なこと・・などと思っても、昔は昔で大変な時期でもあったのでしょう・・。

ちょっと不思議な感覚ですが、”眠気” も当時としては忌避すべき問題であったようです。

単に “眠気” といっても夜半に来る眠気ならばそのまま寝れば良いだけのこと。ここで問題なのは “起きているべき昼間に来る眠気” です。 忌避すべきといっても、現代でも普通に昼間の眠気は起こりますけどね・・。(とれるならば適度な昼寝も大切です*(^^)
* 30分未満が一番良く、1時間以上は却ってよろしくないとの研究結果が出ているそうです。

昼間に来る “眠気”、 それは心身に取り憑いた “穢れ(ケガレ)” によるものであり、身の不摂生または 魔の差すところによるもの・・。 結果的に日中の仕事にも影響を及ぼすし、病を呼び寄せる元ともなる・・。 古の時代にはそういった認識であり、祓うべきものとされていたようですね。 一見、土俗的な感覚にも見えますが、極めて合理的な面も伺え、昔の人の生活に対する知恵とも受け取れますね・・。

その “眠気を祓う” ための行事が「眠り流し」とされるものです。

旧暦の七夕祭りに合わせて行われ、現代では8月の初旬に催されることが多く、特に東北地方でその傾向が顕著に見られます。 ”東北三大祭り” とされる「仙台七夕まつり(宮城県)」「青森ねぶた祭(青森県)」「秋田竿燈まつり(秋田県)」それぞれも、この「眠り流し」の習俗を色濃く反映、現代に伝えるものといわれています。 “青森ねぶた” の “ねぶた” は “眠たい” から “ねぷたい” “ねぶた” と転訛していったものともいわれるそうです。

金魚ねぶた

さて、この東北三大祭りほどではないにせよ、「眠り流し」の脈に連なり、あまつさえ勇壮、そして奇体な祭りが 秋田県の南西部 “横手市” で、8月の6日及び15・16の両日に渡って開催されます。『横手の送り盆まつり』といわれる祭事です。

祭りの先夜ともいえる8月6日の日も傾く頃、祭り囃子に乗せて子供たちが練り歩きます。このとき、木と藁で組まれた 長さ3メートル程の小舟を曳きながらの道中であるため、 “町中を舟が沢山の子供たちと行く” という、初見の人にはかなりインパクトのある光景となるでしょう。

市内を流れる横手川の一角、蛇の崎川原という場所まで 各町会から集まってきた子供たち、そして22艘にも及ぶ曳舟。七夕に因んだ笹と願い事の短冊が舟に立てられ、さらに日が沈む頃には船上に並べられた蝋燭や提灯に火が灯され、やがて川へと送り出されます。夜空に大輪の花火が打ち開く中 ” 眠気” という名の 病魔・厄災を舟に乗せ祓い、健やかに育てと願いを乗せた、子供たちのための祭事でもあるのです・・。

画像 ©(一社)横手市観光協会

 

その9日後、15日に「市民盆踊り」が 横手市役所前の富士見大通りにて開催、約1000人の踊り手たちが踊りの列を為し、夏の夜空に歓声が沸き起こります。列に紛れて進む小さな灯籠屋台がいい味出してますね。ここから横手の夏がいよいよ盛り上がっていきます。 因みに翌16日の主役、大型の屋形船もこの日にお披露目されるとのこと・・。

 

そして、翌16日の夕刻ともなると町は「屋形舟繰り出し」一色。 市内14町から繰り出された全長8メートル 総重750キロにもなる屋形船が、勇壮な囃子と掛け声に乗せて往路を駆け巡り、蛇の崎川原へと集結、祓いと盆の供養を済ませます。 やがて、傍らの蛇の崎橋に上がると 二艘対になって舳先(へさき)を突き合わせ、ついには掛け声もろとも互いの舳先が数メートルの高さまで持ち上がるほどの ぶつけ合いを演じ、この時 観衆からの歓声も渦巻き祭りは最高潮を迎えるのです。

横手城の立つ “お城山” からは一斉に花火が打ち上げられ、横手の町と人々は祭りの熱気と歓喜の中に、今年も無事「眠り流し」と「送り盆」が執り行われたことに安堵するのです・・。

江戸時代、享保の大飢饉により甚大な被害を被り、数多の死者を供養することから始まったとされるこの祭事、江戸末期には既に定着していたといわれ、凡そ200年からの歴史を持つ祭りといえるでしょう。

享保の大飢饉は江戸中期に発生した異常気象による厄災で、日本四大飢饉にも数えられる天変でもありました。 酷暑とは逆で、長すぎる梅雨と冷夏に見舞われ 軒並み稲作が不良、その年の収穫は例年の四分の一以下だったそうです。 大きな被害は主に西日本を中心としていましたが、全国的な影響も大きく一説には数万人規模の人命が失われた災害ともいわれています・・。

暑すぎても困れば 涼しすぎても困る。如何に自然の微妙なバランスのもとで人間は生かされているのか・・。 自然に則して生きてゆく、人々の切実で健気な想いが勇壮な熱気へと昇華され今に伝えられる真夏の祭り。 機会があればぜひ ご覧いただければと思います・・。

* 7月14~16日前後の豪雨による祭り・イベントへの影響が考えられます。重ねて事前のご確認をお勧め致します。

『横手の送り盆まつり』 横手市観光協会(お祭り・イベントから)

日  程 : 2023年8月6日 「ねむり流し」
: 2023年8月15日 「市民盆おどり」
: 2023年8月16日 「屋形舟繰り出し」

※ ご承知のとおり 現在 コロナウイルス感染症問題に関連して、各地の行楽地・アミューズメント施設などでは その対策を実施中です。 それらの場所へお出かけの際は事前の体調管理・マスクや消毒対策の準備を整えられた上、各施設の対策にご協力の程お願い致します。 また これらの諸問題から施設の休館やイベントの中止なども予想されますので、お出掛け直前のご確認をお勧め致します。

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