日本人の “食” の中心となる “米”。 パン食や様々な “新” 食文化に押されて “ご飯” の摂取量・米の消費量とも減少傾向が続きますが(60年前に比べて凡そ50%減)、それでも未だ日本の食卓における主食の座は揺らぎません・・。
その お米の生産の礎といえば当然「田 / 田んぼ」なわけですが・・、田んぼに関わる “単位” を、皆様 どれくらいご存知でしょうか?
現在、メートル法による “広さ・面積” の単位は(小さなものは別として)m²(平方メートル)を基準に、1アール(100 m²)、1ヘクタール(10,000 m²)が規定されており、同時に、宅地面積などにおいて古くからある「1坪(約3.3m²)」 などが併用されていますね。
しかし、三千年にわたって日本人のお腹を支えてきた米=田は、その歴史に関わりながら独自の数え方(単位)を生み出してきました。 歴史につながることゆえ大半は江戸時代以前の呼び習わしということになりますが・・、現在でも一番 知られている田の単位といえば「1反(たん)」でしょうか・・。 「1反」は 約1000m²、31.5m x 31.5m、一般的にいう “田んぼ1枚” のことです。(300坪に相当します)
* 着物・反物の単位(1反)とはまた別の物
この「1反」は単独で存在するのではなく、ミリメートル→センチメートル→メートル のように段階的な単位と関わり合いながら機能しています。
人一人が寝られる面積を 畳1枚分「1畳」とし、それを2枚分正方形に並べた物が上でも挙げた「1坪」(1.8m x 1.8m「1歩」(ぶ) とも言います)。
その「1坪 / 歩」の 30倍が「1畝(せ)(田んぼの畝(うね)のことですね)」
「1畝」の 10倍が「1反」、さらにその 10倍が「1町(ちょう)」(約100m x 100m)の広さとされます。
* 1町(丁)は距離の単位としても用いられ、昭和時代の高齢の方で「1町ほど歩いたら・・」などと言っておられましたね。 この場合も基本単位に、人の佇まいを尺度とした 1.8m を「1間(けん)」として 60間 = 1町 (約109 m長)となっています。
人一人の体格とその佇まいを基本としてきた古来日本の単位、人の暮らしが人そのものを基本として成り立ってきた時代をうかがわせますね。 対して、現在使われている「m メートル」は、 “地球子午線 全周長の4000万分の1” を原義としています。ワールドワイドな近代ならではの策定ともいえるでしょうか・・。
因みに、海外で使われてきた「インチ」は親指のつけ根の幅(2.54cm)、「ヤード」は拡げた両手の指先間の半分(91.44cm)、「フィート」は足の大きさ(30.48cm)など、やはり古においては、人やその暮らしに基づいたものとなっているようです。
さて、長々と広さや長さに関する雑話を並べましたが、その「1反」、田んぼを表す単位であり、長じて「1枚」「田んぼ1枚」とも呼び表すのですが・・。
ここまで書いておいて何ですが・・ (^^ゞ
歴史的、実情的において「田んぼ1枚」が必ずしも「1反・31.5m x 31.5m」であるとも限らず、それよりも 大きめ・小さめ・・どころか、かなりサイズの異なる田んぼであっても、区切られた一区画の田であったなら “1枚” と呼ばれることも多いようです。
何故、こんなことを言うかというと、本日ご案内する石川県輪島市の『白米千枚田』(しろよねせんまいだ)
千枚という名が付きますが、「1反・31.5m x 31.5m」x 1000 = 100万m²(100ヘクタール)の広さがあるというわけではないのです。
古に「田植えしたのが九百九十九枚あとの一枚蓑の下」の歌が残されるように、蓑(昔の合羽)の下に隠れてしまうほど、小さな田の連なった棚田なのだそうです。 ある意味、広大無限な田園風景に対して、ミニチュア / 箱庭的、日本的な美しさといったところでしょうね。
千枚田の語源についても、沢山あることを表す “千枚” であるとか、”狭い田” が訛ったものであるとか諸説ありますが、枚数でいうなら確かに千枚数えられるそうで、輪島市によれば “1004枚” あるそうです。
最も小さな一枚田で何と 0.2m²、45センチ四方ほどの可愛らしい田んぼですが、大半はそれなりのサイズで、棚田によく見られる細長く地形に沿った面白い姿。 眼前に広がる日本海に映えて、山肌にさざ波が広がっているよう。
日本原風景のひとつを今に残す姿は、訪れる人に懐かしさと感動をもたらしますが、それに加えて “夜における棚田の美” を伝えてくれるのが「あぜのきらめき」。
25,000個 に及ぶLEDイルミネーションによって日暮れの情景を鮮やかに彩ります。
夜陰に浮かび上がる有機的な光の曲線は幻想的であるとともに、往古につながる棚田の記憶を今に伝えているかのようにも思えます・・。 闇の向こうに聞こえる波音を背景に広がる「あぜのきらめき」、日中の のどかな景観と合わせて一度は目にしておきたい景勝ではないでしょうか。
国道249号線 の傍らに広がる「白米千枚田」、道端に車を留めて眺めることは交通の支障となりかねませんが心配御無用、千枚田の近傍に『道の駅 ポケットパーク千枚田』が立地しています。
地産品はもとより千枚田名物?の “よもぎたい焼き” も扱う売店もさながら、軽食もとれるレストハウスで腹ごしらえ。 遊歩道も整備された千枚田へのアクセスも歩いて僅か2〜3分、ゆったり・のんびりと輪島の棚田風景を堪能することができるでしょう。
古くは、活用出来る場所を有効に使うべく作られた “棚田”。 現在ではその固定的な必要性も低下し、多くは農地として用いられながらも将来的な運用が懸念されています。懐かしき日本の面影を伝える その姿、今こそ記憶に残しておくべきなのかもしれませんね。
『能登 輪島 白米千枚田』 (公財)白米千枚田景勝保存協議会 公式サイト
『白米千枚田 物語』 道の駅 千枚田 ポケットパーク 公式サイト
場 所 : 〒928-0256 石川県輪島市白米町99−5
日 程 : 2022年10月22日(土)~2023年3月12日(日)
各月の点灯時間目安 10月17:30、11月17:00、12月16:55、1月17:15、2月17:50、3月18:15
問い合わせ : TEL 0768-23-1146 輪島市産業部観光課
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