古刹で迎える新年七日 福まさるに裸祭 – 福島県

あまり知られていませんが、福島県はとても広く大きな県であるようで、北海道を除けば岩手県に次いで全国第2位の面積をもつ広大な地勢です。

東北地方としては南端に位置するためか 5世紀頃には既に大和王朝の勢力下にあり、奈良時代になって陸奥国を成す一地域となりました。

鎌倉時代になると源頼朝の采配により、東北地域は小規模の領国・領主に細分化されて、以降 領国同士の覇権争いが続くこととなりますが、戦国時代も終盤 領主の一頭 伊達政宗によって広範な地域が平定されたことから、現在の福島県の多くの領域も政宗の支配下となっていました。福島県に伊達市をはじめ伊達家の遺風が残っているのはこうした歴史の名残りでもあります。

しかし、政宗の広大な版図も長くは続かず、豊臣秀吉の奥州仕置に伴い 本領仙台まで所領を押し戻され、福島県下の領地を失うこととなりました。

以降、江戸時代、会津藩、磐城平藩などとして福島県は自治を図ってきましたが、”福島” の名はどこから来たのかというと、福島の中心地がかつて信夫の里とされた頃、そそり立つ信夫山から吹き降ろす季節風 “吾妻おろし” が強い場所であったため “吹島” と呼ばれていたそうで、その後 “福” にあやかり “福島” と改名されたのだそうです。

 

福まさる 画像 © WikiMedia Commons

師走ももう半ば、そろそろ新年行事のご案内を福島県からお届けしましょう。

福島県の中央、郡山市の “高嶽山 如寳寺” は、平安初期に創建の縁起をもつ真言宗のお寺です。 寺院としての格式もさながら、信徒によらず多くの民衆との和と交流を旨とする、親和性の高い社風で地域の人々からの信望も厚い古刹と言えるでしょうか。

寺院としては開放的、”ヨガ教室” や “声明コンサート” など積極的に開催する このお寺で、新年正月、松の内、1月6日の15時から7日の16時までの夜を徹して開かれる祭礼が「七日堂まいり」、門前通りで行われる縁日が「七日堂市」です。

駆ける馬のごとく早くご利益をもたらしてくれる馬頭観世音にかかる祭礼とも言われ、例年 期間中、訪れる参詣客は10万人にも達するそうで、市を賑わせる数多の品々とともに、福島県特有の郷土玩具 “福まさる” も売られます。

“福まさる” とは、しならせた細い竹の棒に張った糸に小さな土鈴を通してあり、振ると素朴な音をたてながら糸の道を降りてくるというもので、”玩具” であるとともに “まさる=勝る=魔去る” の読みをあてられる縁起物でもあるそうで、市の露店では跳ぶように売れてゆくそうです。

関西地方でいうところの十日戎(恵比寿)と福笹のような感じでしょうかね・・。
近年、地方では縮小傾向のところも少なくない正月の縁日、季節を彩り新年への福と活気を招く こういった行事がいつまでも続いてくれると良いですね。

 

さて、もう一ヶ所は福島県西部 会津若松にも近い河沼郡の巌上に建つ “霊厳山 圓藏寺” から。

弘法大師の手になると伝わる “福満虚空藏菩薩” を本尊に、如寳寺と ほぼ同じ時期の開創、大師と極めて縁深き日本三所の随一とされているそうです。

昨年4月に同みちのく岩手県からお送りした “牛と人の関わりを考える” の記事でもご案内した奥州牛 “赤べこ” 、その発祥の地ならでは、この圓藏寺にもその縁起の伝承が残っています。

今から四百年の昔に起こった大地震はこの地に甚大な被害をもたらしました。数年後、人々の暮らしがようやく立ち直ろうという頃、圓藏寺も巌上に再建を図るのですが 部材の運搬に難渋していたところ、どこからともなく赤牛の群れが現れ運搬の労についたのだとか・・、おかげで再建は滞りなく果たされ、その功を労おうとしたところ、いつの間にか赤牛たちは消えてしまっていたのだそうです。  神仏の導きとばかり この赤牛たちに感謝し、呼んだのが “赤べこ” という呼び名で広まりました。 ※

この圓藏寺で1月7日の夜 開かれるのが「七日堂裸まいり」

煌々と篝火が照らす中、午後8時30分の一番鐘を合図に褌一本の男たちが壇上の菊光堂を目指して113の石段を駆け上がった後、大鰐口から下がる麻縄によじ登ります。
民と只見川に棲む龍神の相克を由来とする この祭、北国の新年を飾るにふさわしい勇壮の饗宴として 例年多くの観光客を集めるそうです。

※ 縁起伝承については「うつくしま電子辞典(福島県教育委員会)」に詳しいです。

 

福島県で正月に行われる古刹の祭事、2件ご案内しました。

時代が進み、少しずつ季節感も新年を迎える有り難みも薄れゆく中、こうした祭事が残り伝え続けられるのは とても意義深く大事なことに思えます。
往古から連綿と引き継がれてきた習わしの中には、時節の区切りによる心身の正し方と、生きてゆくことに対する人々の切実な想いが息づいているのですから・・。

せめて私たちに出来るのは、正月や夏越の時くらい、地元の祭事に足を運んでみることでしょうかね・・。

 

「七日堂まいり / 七日堂市」 高嶽山 如寳寺 公式サイト
〒963 – 8877 福島県郡山市堂前町4-24

「七日堂裸まいり」 福満虚空藏菩薩圓藏寺 公式サイト
〒969-7201 福島県河沼郡柳津町柳津寺家町甲176

 

 

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA


このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください