前回の民話に続いて “蛇神さん” が登場します。 大仏様はアイキャッチだけで本文には登場しません。
意図してではなく 偶々そうなっただけなのですが、蛇が苦手な方にはヤレヤレ・・かもしれませんねw。 どうかそう言わずお付き合いくださいませ。m(__)m
神奈川県鎌倉市、閑静な街並みでありながら都市部へのアクセスも良く、歴史や自然の憧憬溢れる風情に、この地への移住に憧れる人も少なくない好景地ですね。
ご存知、浄土宗 高徳院「鎌倉の大仏さん」をはじめ、鎌倉五山一位 臨済宗「建長寺」、北条氏 縁の禅寺「円覚寺」など、仏道の歴史色濃い風情に参拝客も多く、隣接する藤沢市の「江ノ島」の観光と相まって行楽の聖地ともいえましょう。
往古、源頼朝により幕府が興され関東武士の首都ともなり、150年間続く時代の名ともなった “鎌倉” ですが、その名の由来は元々 当地の地形から来ていると言われています。
前面(南面)を海に開かれ、内陸を三方の山で囲まれた地形は天然の要害であり、まさしく武家政権の都に相応しいものでしたが、その姿形がえぐったように内陸に入り組んだ形から “鎌” = 古来、 “竈(かまど)” の意、と 海側に開く “倉” = 古来、 “谷” の意から、「鎌倉」と呼び習わされたと言われています。
鎌倉時代の首都とはいえ、元寇を含む度重なる騒乱や災害、朝廷絡みの政情不安によって14世紀前半に幕府が滅亡して後は、足利氏による “鎌倉公方” が一時置かれるものの、その後は徐々に歴史の表舞台から距離を置くことになっていきます。
しかし、そのことが却って過剰な町の発展を呼び込むことなく、明治期以降、静かな保養地・別荘地としての引き合いが高まったこともあり、今日の情緒豊かな町の形成につながったとも言えるでしょう。
町の周囲を取り囲むように立する山々ですが、ここを舞台にひとつの伝承が残っています。
平氏の追討を終えたものの、まだ世は不安の最中にあった文治元年(1185年)の巳の月(旧暦4月)巳の日、巳の刻、 源頼朝(みなもとのよりとも)は夢枕に宇賀神の神託を受けます。
宇賀神(うがじん)とは詳細において真正は不明なものの、一説にはその名から宇迦之御魂神(うかのみたま)にその端を発するともいわれる、財福や栄華をもたらす福の神とされており、同時に人の頭部に蛇の身体を持つ異形の姿でも知られています。
頼朝の夢の中で宇賀神は「これより北西の谷間に泉あり、この泉の清水にて神仏奉れば太平なる世 到来せん」と告げました。
世の不安定な情勢もあり、これを真の神託と悟った頼朝は早速お告げの地である佐助の谷を探すと、果たしてこんこんと清水の湧き出す泉が見つかったのだとか。
ここに洞窟を掘り祠を建てて宇賀神を祀ったのだそうです。
頼朝の興した鎌倉幕府とその時代は変節を重ね、頼朝嫡流は早々に断絶、後の南北朝にまで至る内外部の騒乱など、必ずしも太平の世とは言えませんでしたが、武家による政権社会の確立、仏教の民衆への広範な普及など、それまでにない文化の隆盛と敷衍をみた時代でもありました。
幕府5代執権の北条時頼が頼朝の夢と同じく巳の年に、この社の水で “銭” を洗い清め 心身を禊ぐことで一家の繁栄と財福を祈願した事が「銭洗弁財天」の起こりと伝えられています。
現在、正式な社名は『銭洗弁財天宇賀福神社』
鎌倉相馬天王の摂社として歴史を刻んできましたが、明治時代に “市杵島姫命” を主祭神、奥宮祭神を “宇賀神” として独立し今日に至ります。
水、水運を司り金運、芸能に神徳高い “市杵島姫命”、神仏習合で “弁財天” とともにされ、それは同じくして水神であり蛇神である “宇賀神” とも同一視されました。
この地が如何に湧水に縁深き場所であるかが伺えますね。
鎌倉市街地から さほど時間を要することもなく、いくつかの里と山間を縫って至る社地は、既に新緑と水の音に囲まれながらも立派な社殿、 その社殿に辿り着くにも立ち並ぶ鳥居と洞窟を歩き抜けてということになるほど、岩屋と森に護られ清水に満ちた社と言えるでしょう。
件の “宇賀神” の窟は 社殿の裏手にあり、そこから湧き出る清水は “鎌倉五名水” のひとつともされています。
700年経った今でも “銭洗い” の風習は連綿と受け継がれ、一般参拝者も行うことが出来ます。 ”銭洗い” には一定の作法があるとされ、社務所でろうそくと線香を購入し※ 銭洗い用のザルを借り、灯明、線香の煙による禊を済ませた後、洞窟内にて “銭の禊” を行うそうです。
禊を済ませたお金を使えば、それが何倍ものご利益になって実を結ぶのだそうで、伝承のよると “銭洗い” は “巳の日” に特にご利益が高いとされ、多くの参拝者を集めています。
近隣には「大仏・葛原ヶ岡ハイキングコース」もあり、健脚であれば、これからの季節に参拝も兼ねての行楽にも良さそうです。
鎌倉の古風を伝える水の音、機会があれば萬福招来、ご参拝されてみては如何でしょうか。(深い洞窟ではありませんが、多少 換気に不足な状況も考えられるので、感染対策をしっかりしてお出掛けください)
『銭洗弁財天宇賀福神社』
場 所 : 〒248-0017 神奈川県鎌倉市佐助2-25-16
アクセス : JR横須賀線「鎌倉駅」西口から徒歩18分
駐 車 場 : 10台 但し土・日曜日と巳の日は進入禁止
備 考 : ※ ろうそく、線香、ザル貸し出し、¥100円
問い合わせ : TEL 0467-25-1081
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