牛と人の関わりを考える 奥州市牛の博物館 – 岩手県

人間と家畜の歴史は古く、山羊や羊、豚は紀元前8000年頃、牛は紀元前6000年頃からの付き合いではないかと言われています。 日本でいうなら弥生時代にあたりますね。

大型で種によっては獰猛性の高い牛は その扱いの難しさ故に、羊や豚などの家畜化よりも時期的に遅れたのではないかとされ、逆に言えばこれら小型動物の飼い慣らしを習得したからこそのステップアップだったのではないかとされています。

日本において人と牛の関わりの初めは定かではないものの、少なくとも古墳時代には密接な関係を持っていたようで、以来、他国の例に漏れず、農耕の労力・食料・衣料などを供する大切な資産として、日本文化の形成に大きな役割を果たしてきました。

 

世界的に見ると、ご存知のように主にヒンドゥー教などで牛は神聖化されており、牛肉の食肉は避けられています。 古代エジプトにおいても神、もしくは神の使いとして崇められており牛の頭を持つ姿の神々が複数存在します。

日本の文化にあっては神道の大神 素戔嗚命(スサノオノミコト)と同一視され、祇園信仰の元となっている “牛頭天王” が、名の通り牛頭の猛神として知られていますね。

これら 牛を神聖化する背景には、狩猟から農耕社会へと変化を遂げてゆく社会の中で家畜化が形成され、非常に大きな生産労働力となるとともに 食料、そして多くの資材を提供してくれる、正に神からの恵みとも言える動物であったことが大きく作用しているでしょう。

本日、ご紹介させて頂く 『奥州市 牛の博物館』 の扉の言葉を借りて言うなら 「もしも人類がウシを家畜として伴侶に持たなかったなら、人類文化の発展は確実に500年以上は遅れたであろう」 ということになるでしょうか・・。

 

古代、日本に移入された牛は水牛のような牛だったという

古代の日本においては牛よりも馬の方がその頭数は多かったようです。牛は家畜化とその規模が進むに連れ、その生息域が広範になってゆきます。 しかし、鎌倉時代の始まる前後から東国の武士勢力の勃興に倣う形で、関東周辺より以北における馬の需要が高まります。

それは、以後 数百年に渡って “東方の馬、西方の牛” という生産分布の偏りを形成することになりますが、もちろん東北地域で牛が育てられていなかったわけではなく、一般の農民たちにとっては馬とともに牛は貴重な労働力でした。

福島県会津地方の民話伝承とそれに基づく郷土玩具「赤べこ」などが全国的に知られていることからも、当地で人と牛のつながりが深かったことが伺えますね。

 

岩手県奥州市前沢にある とても珍しい博物館 『奥州市 牛の博物館』 も、東北地域の風土を基に「牛にかかわる歴史、芸術、民族、自然科学等及び郷土に関する資料の調査、研究、収集、保管、展示を行い、市民の皆さんの教育、学術及び文化の発展に寄与する」ため(館長挨拶より)平成7年4月に設立されたそうです。

「牛と人との共存を探り、生命・自然・人間を知る」をテーマに掲げ、生物としてのウシ、人との関わりの中の牛、産業としての牛の3つの分野から展示を行い、牛に関する様々な研究や教育活動を進めているそうです。

1万5千年前に大陸からこの地にやって来て定住化し、その後絶滅した “ハナイズミモリウシ” の骨格標本をはじめ、古来から肥料として燃料として人の生活に密接に関わってきた牛糞など、牛の生態からみた展示群。

その文字のごとく “犂”(牛の牽かせる鋤・スキ)の導入による農業の飛躍的発展や、祭礼・郷土玩具などから見る民族学的な視点からみた展示群。

“岩手のガリ牛” と誹りを受けながらも改良に努め続け、ついには日本一の栄誉を連賞するまでになった「前沢牛(まえさわうし)」を中心に、奥州市前沢の歴史と当地における前沢牛のアラカルトなどの紹介など、今まで “牛” というものにさして関心を持たなかった私たちにも興味を持たせる内容が盛りだくさんとなっています。

 

この他にも 館では展示のみに終始することなく、様々な企画展や体験教室、ミュージアムショップなども随時開かれています。

4月27日(土)からはGW企画として お子さんにも取り組みやすい「牛の折り紙作り」「博物館館内クイズ」「英語で学ぼう牛のこと」など、体験教室のメニューとして「生クリームからバターをつくろう!」「明治時代のアイスクリームを復元しよう!」「古代のチーズ「酥そ」をつくろう!」など魅力的な内容に溢れていますね。

コロナ禍の中で中々外出もし難く退屈を持て余しているお子さんに向けて「おうちミュージアム」の活動にも賛同しており、かんたん工作のページからは3〜5歳から取り組める “おうちで工作” のデータもダウンロード出来るようになっています。

 

普段、食肉や牛乳などの視点からしか意識していなかった “人と牛のつながり”、この機会に一度覗いてみられてはいかがでしょう。 そこには往古より糧として力として時に神として人の文化に分かち難い関わりを持ってきた “牛” に対して、新たな認識と発見があるかもしれません。

そして そこには “食や資源” “人と自然” に基づく未来へのヒントが隠されているかもしれないのです。

※ 青文字は「奥州市 牛の博物館」公式サイトからの引用文を含みます。

 

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『奥州市 牛の博物館』 公式サイト

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場  所 : 〒029-4205 岩手県奥州市前沢字南陣場103-1

お問い合わせ : TEL:0197-56-7666 FAX:0197-56-6264

 

 

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