一日800人 年間29万人

妙な題名からの書き出しとなってしまいました。
一日約800人、概算で年間約29万人、あまり喜ばしい数字ではありません。

2017年度の統計ですが、この数字は世界における妊産婦の死亡者数を表しています。

総人口80億人にも届きそうな世界全体での数字であり、本年の新型コロナウイルスパンデミックで150万人の死者を数えている中では、この数字を多いと見るか少ないと見るかは人それぞれだとは思いますが、今も尚 年間20万人を遥かに超える妊婦さんの死、そして新たな生命の危険を顧みると とても静観出来る数字ではないと思えるのです。

 

今回、スポーツカテゴリーのトピックであるにも関わらず、このような杞憂を誘う始まりとなったのは、山形県におけるスポーツ記事を探していた時に見つけた ひとつのイベント『ホワイトリボンラン 2021』が目に止まったことから始まります。

「リボン」の名が付いていることから 女性に関する何らかの啓発活動に関連したイベントなのだろうと考えました。(乳癌予防に関連したピンクリボン活動、女性に対する暴力根絶を謳うパープルリボン運動などがあるので)

無知であったので調べてみると「ホワイトリボン運動」とは、~ 妊娠や出産によって亡くなった女性たちへの哀悼の意を込めると同時に、妊産婦をとりまく環境や知識の向上を促進するための支援活動 ~ と謳われています。

世界においてトップクラスで妊娠と出産が安定した形で行われている日本の国では考えにくいことですが、主に開発国における人々と医療のあり方については未だ未整備・未成熟な国も少なくなく、例えば 新生児の死亡率についても日本が1000人あたり0.9人であるのに対し、アフリカの多くの国では35~40人、パキスタンにおいては45人を超えているそうです。(出生1,000人当たりの新生児死亡数(単位:人))

 

国際的な医療制度のあり方については その国ごとの風土があり経済が有り、そして政治的安定性の問題などがあり一概にこれが最善という策は無いのかもしれません。

しかし、国民が健康に活力を持って生きることは、いかなる国であってもそれを指向するものであり、同時に国民に約束されるべき最低限の権利でありましょう。

未だ医療基盤が未成熟な国は当然のように社会保障についても生活インフラについても未成熟な場合がほとんどです。 各国の都合とその向こうにおぼろげに見える大国の影響など一朝一夕に改善を成し得ないのが国政であるのは事実ですが、生まれてくる子供 そしてそれを育てるお母さん、何よりもこれは国家を形成する礎に他なりません。

子を宿して、産み、育て、新しい息吹が歩いてゆくための道を大人たちが作り上げ牽引してゆく社会こそが、国としての健全な在り方ではないかと思うのです。

 

日本は国際的にも医療基盤の充実した国であると書きましたが、それとて昨日今日に成し遂げられた文化水準ではありません、現在の数値を基準にとると僅か30年前の1990年には2.7倍、昭和が始まった1920年代には実に80倍程の妊婦さんや新生児が命を落としていたことになりますね。

童謡「赤とんぼ」の一節 ~ 十五でねえやは嫁に行き、お里の便りも絶えはてた。~ は大正期の、貧しい家の事情で まだあどけなさの残るような年齢で奉公に出された少女が、15の歳にはまた嫁がされていった様子を歌っており、当時はこのような過酷な状況下における若年出産を原因とした死産や妊産婦死亡も少なくなかったと言われます。

妊娠・出産は病気ではないものの、女性にとって正に人生と命を賭けた一大事であり、だからこそ夫や家族はもとより社会全体でそれを支えなければならない最重要事案のひとつなのではないでしょうか。

 

皮肉なことなのか、それとも自然の成り行きなのか医療基盤の整った先進国ほど出生率は下降してきています。

社会構造の変化や価値観の変化、将来設計の不透明感など一言では言い表せない様々な要因をもって結婚率・出産率の低下、そして出産年齢の高齢化が進み、まるで上記開発国の状況を反転したかのような状態を呈していて これはこれで問題なのですが、これもまた ”子を孕み生む母と 生まれる命によって築かれる社会” に対する認識が薄らいできた証左のように思えます。

無論、事情により結婚・出産を願いつつも出来ない人があり、また、結婚や出産だけが人生の本義ではなく、一人一人の個人が少しでも満足のいく人生を送ることが何よりの事実ですが、その人生の基盤となる社会を健全な状態で維持するためにも一定数の出産とその保護や施策は必要であり、それは人間を超えて動物世界全ての原初的・絶対的な成り立ちでもありましょう。

 

© ホワイトリボンラン 2021 / 国際協力NGOジョイセフ

話題が振れてしまいましたが、「ホワイトリボン運動」はこうした不備な状況下にある妊産婦さんの環境改善のために行われています。

日本においては「公益財団法人ジョイセフ」が中心になって推進されているようで、今回の記事の発端となった『 ホワイトリボンラン 2021 』も ジョイセフの主催となっています。

「走ろう。自分のために。誰かのために。」を合言葉に、一般参加のチャリティランニングを2021年3月1日(月)~14日(日)の間に各地で行い、その収益金の一部をアフガニスタンやザンビアの女性の命と健康を守る活動のために寄付されるのだそうです。

ひとつだけ “?” なのが、このランニング、各地当日4~5kmの距離を走るのですが、これとは別に ”バーチャルラン” というのが有り、これは事前エントリーを済ませた上で期間中であれば本大会コースでなくとも、どこでも いつでも個人の好きな場所・時間・距離で走って良いというものでSNSと絡めた革新的な取り組みなのですが・・

見方を変えれば「エントリー費だけ払って後はお好きにどうぞ」な形ともいえ、単に寄付金を募る事との違いが若干曖昧のような側面もないとは言えません。

しかし、コロナウイルスの感染防止もあり、このような有意義な取り組みに参加しようという奇特さをお持ちの方ならば、エントリーの後 ”バーチャルラン” を上手にこなされるでしょうから問題ないのかもしれませんね。

「公益財団法人ジョイセフ」は 昨今ぽっと出の団体ではなく1954年にその萌芽を持ち、1968年に外務省・厚生省認可の財団法人「家族計画国際協力財団」として設立、2011年に内閣府認可・公益財団法人「ジョイセフ」に名称変更、歴年、国内外に渡り活動を進めてきた財団なのだそうです。

 

イナバナ.コムは、イベントであれ財団活動であれ ご紹介はしますが、ご参加を促すものではありません。

私が申し上げたいのは、このご紹介を通して少しでも世にある問題に対する認識をお持ちいただければと願う限りです。 どこかで、何かの機会に再びこのような話題に触れたときに、世界には不遇の中に生きる者がまだ沢山いることを思い出して頂ければ・・ そして、誰かのために何か出来ることがないかと、ほんの少しだけでも思って頂ければ幸いです。

世界中どこでも、お母さんと子供が笑って暮らせる世の中になりますように・・

 

* ホワイトリボン運動 / ホワイトリボンキャンペーン という呼称では上記と異なる目的を標榜した活動も存在するようです。→ Wikipedia

 

『 ホワイトリボンラン 2021 』 公式サイト

「公益財団法人ジョイセフ」 公式サイト

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