日本漫画の隆盛 本質と革新と横山隆一 – 高知県

© 横山隆一 / 横山隆一記念まんが館 様

『漫画』 私がまだ子供の頃よく言われたものです。
「マンガばっかり読んでるんじゃない!」

当時は手塚治虫による「鉄腕アトム」や 横山光輝「鉄人28号」石森章太郎「サイボーグ009」などのSFヒーローもの、梶原一騎原作(川崎のぼる作画)「巨人の星」に見られるスポーツ根性ものなど、正に漫画とアニメーションが一体となって台頭し 子供たちを虜にしていました。

赤塚不二夫による「おそ松くん」や永井豪「ハレンチ学園」などのギャグ漫画やお色気ものまで、子供から青年の間で受けていたこともあり、実体の無い夢物語や戦いばかりが続くストーリー、子供に相応しくないセクシーな内容に当時の親たちはヤキモキしていたのかもしれませんね。

 

大人たちからは眉をひそめられた存在でしたが、時代が進むに連れ漫画はその内容をも進化させ 無数とも思えるジャンルや新しい表現を生み出してゆきました。

昭和の終盤頃には既に単なる子供の読み物から脱却、成年層までをも魅了する作品が次々と発表されるようになり、それは国内のみならず海外へと翻訳・輸出されると、文化の違いさえ乗り越えて多くの反響を世界に響かせたのです。

刹那的な娯楽と思われていた漫画はいつしか “表現” の一分野へと昇華し、社会に与える文化的・経済的な影響も以前では想像も出来なかった規模となり、政府が公式に世界に発信する文化の一ジャンルとして認めるまでになったのは皆様もご存知のことでしょう。

© 各偉大な先生方

 

海外において日本の漫画がこれほどまでに受け入れられた理由のひとつに、その多様性とストーリー性が挙げられています。 半世紀を越えて夢を創造し続ける「ドラえもん」SFでありながら人と自然の在り方にまで踏み込んだ「風の谷のナウシカ」人生を純粋にスポーツに賭ける「キャプテン翼」変身能力を持つ少女が活躍する「セーラームーン」・・

全く非実在の世界からごく普通に過ごしている日常にまで その舞台と内容は多岐にわたりながら、そこに練り込まれたストーリーは たとえごく短編の作品でもしっかりと確立されており、このような形態から発展したコミカライゼーションは海外において(アニメーションムービーにおけるディズニー作品を除いて)他に類を見ないものです。

 

「漫画」を歴史として紐解くとその始まりは古代にまで遡るそうです。当初から笑いを求めて描かれていたものであったようですが、その形態はほぼ “落書き” に等しいものであったようで今日にまで残るものは ごく限られた数に留まるのだとか・・。

つまり、その多くはストーリー性ではなく “ジョーク(冗談)” や “アイロニー(皮肉)” であり、一コマものの即興表現とも言えるのでしょうが、この形態はその後の漫画の基本的な土台となり永く世界的な漫画のスタイルとなりました。

日本には明治期に海外文化のひとつとして紹介されると大正から昭和、そして動乱の時を(時に国策やプロパガンダに利用されながらも)ひそやかに生き延び、戦後、日本漫画の第一人者と呼ばれることになる手塚治虫をはじめとした、いわゆるトキワ荘の面々や上記の作家らによって漫画の急激な変革と発達の時代へと至ります。

 

漫画の黄金期を創造した彼らですが、彼らにもまた先達があり、目指し乗り越えるべき道標がありました。

黎明期に日本漫画の基礎を築いた人々、昭和初期に「冒険ダン吉」で一世を風靡した島田啓三、「のらくろ」で名を馳せた田川水泡、そして、従来の漫画壇に新風を呼び込んだ横山隆一ら “新漫画派集団” に連なる面々など、現在 世界的にも群を抜いて発達した日本の漫画界の土台は彼らによって築かれていたのです。

 

作品「フクちゃん」で知られる 横山隆一は、昭和初期にあって未だ旧来の構造を引きずっていた日本の漫画に(当時の漫画は絵画の一分野的な立ち位置でストーリーも形式的な色彩が強かった)全く新しい描画技法と発想の自由さで挑み、今日の “漫画” の立脚点とも言えるスタイルを確立しました。

漫画の本質と革新を天才的なセンスで融合し、後の日本漫画へと続く時代の正に明星となった横山隆一。 彼の生地である高知県高知市には、漫画家にあって日本初の文化功労者にも表された “横山隆一” の記念館が存在します。

若手漫画家の発掘にも意欲的だった彼の精神を反映しているかのように、ここで毎年「4コマまんが大賞作品展」が開催されています。

“4コマまんが” は漫画の基本、無論この基本に沿わずに進化・形成された漫画も現在では多々有るでしょうが、やはり読み物として考えた場合この大前提は漫画を構築する上で外せない確固たる土台ではないでしょうか。

たった4コマの中に凝縮され展開される日常の隣りの非日常、単なる思いつきやアイデアだけで人の琴線に触れることは難しいと言われ、正に作り手の器量が問われるところでしょう。

 

© 横山隆一 / 横山隆一記念まんが館 様

 

〜 高知市と横山隆一記念まんが館で募集した「第16回まんがの日記念・4コマまんが大賞」応募作品859点から選ばれた、入賞作品や一次審査通過作品などを展示します。また、惜しくも入賞を逃した作品を対象に、来場者の投票で決定するギャラリー賞も実施します。4コマまんがの審査員になってみませんか? 〜 横山隆一記念まんが館 広報より

世界に誇る日本漫画文化の萌芽ともなった氏の作品資料とともに、現代の名も無きアーティスト達が描いた凝縮の作品群に触れれば、80年にも届く日本漫画の変遷を肌で感じることが出来るかもしれませんね。

 

「横山隆一記念まんが館」 公式サイト

日  程 : 「第16回まんがの日記念・4コマまんが大賞作品展」 ~2020年12月27日(金)迄

場  所 : 〒781-9529 高知市九反田2-1 高知市文化プラザかるぽーと内

開館時間 : 9:00~18:00

休 館 日 : 毎週月曜日(祝日・振替休日の場合は開館)年末年始(12月28日~1月4日)

料  金 : 個人 410円 65歳以上 200円 高校生以下 無料

問い合わせ : TEL.088-883-5029 FAX.088-883-5049

 

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