ここにもあった水の城 肥前横武城 − 佐賀県

水の城、浮城、と聞いて真っ先に思い浮かべるのは、やはり武蔵国(現在の埼玉県)行田の「忍城(おしじょう)」でしょうか・・ 野村萬斎氏 主演の映画「のぼうの城」でも多くの人に知られるところとなりましたね。

元々、沼や湖の上に建てたわけではなく、低湿地帯であった地域の沼や小川、小さな堤防を自然の守りとして築城していたのですが、天正18年 豊臣秀吉の小田原征伐の際、利根川を利用した “水攻め” に遭い、本丸一体を除く辺り一面 湖のような景観になってしまったこと、そして それでも小田原城落城の時まで抵抗を続けていたことなどから、後世に「浮城」の名城として名を残すことになりました。

水の城 – 浮城 で調べてみると、私の在地、紀州和歌山県において「太田城」(実はかなり近所w)がそれに近い状態で、現在は国道も走り普通の住宅街となっている この一帯も、昔は沼地の多い湿地帯だったと聞いています。

上述の「忍城」「太田城」そして 備中岡山県「高松城」への攻勢をして ”日本三大水攻め” と呼ぶのだそうです。 あまり有り難い “三大” ではありませんね・・w

 

水の城 はいずれも低湿地帯であり比較的 水位の高い場所に在ったが故に、数百年経った現在でも その周囲や近辺に “堀” や “池” など 当時の名残を留めるものですが、今日、ご案内する佐賀県の東端 神埼市の『 横武城 』 城の威容さえ残さぬものの、その周囲は溝渠(こうきょ / 人工的に作られた小川・堀)に 見事なまでに取り囲まれる形で遺る城跡地です。

室町時代、太宰府の高官であり藤原北家の支流を汲む “横岳氏” によって築城されたと伝わります。 海抜高度の低い平地が広がる佐賀平野の中でもとりわけ水位の高いこの一帯は、古くより水郷の地であり多くの 環濠集落(かんごうしゅうらく) が林立していました。

横岳氏をはじめとして、この地方を統べた地頭・豪族たちは この水に近き一帯を整備し、多数の城を築いたと言われています。

戦乱の世を通して横岳氏から大友氏、龍造寺氏、そして鍋島氏へとその地域支配権が移り変わり、やがて太平の世を迎えてゆく中で、いつしか城郭はまほろばの土と化してゆきましたが、涼やかな水濠に囲まれたその景観だけは今日に尚その面影を留めています。

 

 

かつて「横武城」と呼ばれたその地は、現在 美しく整備され『 横武クリーク公園 』の名で市民の憩いの場として開放されています。 ”クリーク” とはゴルフなどでも使われる言葉で ”小川”、 かつて地の利を生かして人工的に張り巡らされた堀の景観をそのままに閑静な公園へと姿を変えました。

往時を偲ぶ遺構はほんの僅かにしか残っておらず、かつての主郭の位置さえ定まっていませんが、約6ヘクタールに及ぶ敷地の堀には大小の太鼓橋が架けられ、園内を散策する上で島から島へと渡り歩いているかのような気分にさせてくれます。

江戸から明治期のものと思われる古民家「葦辺の館」(あしべのやかた)が建てられており、貴重な文化財であるとともに 訪れる人々の心に日本の原風景を想起させる安らぎの場所とも言えるでしょう。

「くど造り」と呼ばれる造りの この古民家は、上から見た形が ”くど=竈=かまど” の形に似ていたことから付けられた呼び名だそうで、九州、佐賀地方独特の形式で古の建築様式や歴史に通ずる人たちの興味を惹きつけて止まないそうです。

堀にはヘラブナが放され のどかな日には釣り人の姿も見かけるそうですが、春から初夏にかけて咲き誇る菖蒲の花の美しさも見どころだそうです。

 

平安時代の末には既に環濠集落が成立し、付近には点々と集落を護り統べる砦があったとされ、時を数えるごとに移り変わる国主、戦乱、束の間の平和、そしてまた戦乱・・

数々の歴史のつづれ織りを見守り、人の行く末を見守り、今は憩いを求める人々をただ静かに見守る水濠の城下・・

豪奢な造りの城でかつてのエネルギッシュな歴史を語るのも良いですが、たまにはこのような閑静の城跡で、ただ寡黙に、往時の風を感じてみるのも良いかもしれませんね。

 

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場  所 : 佐賀県神埼市神埼町横武 横武公民館

営 業 日 : 年中無休 葦辺の館のみ毎週火曜日 休業

駐 車 場 : 40台(無料)

アクセス : 車 長崎自動車道東脊振I.Cから車で20分
.     JR JR長崎本線神埼駅からタクシー利用で15分
.     バス JR長崎本線神埼駅から昭和バス佐賀駅バスセンター行き乗車、
.     バス停「大町橋」下車徒歩10分

問い合わせ : TEL.0952-37-0103 神埼市建設課都市計画係

 

 

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