遠くて近きお不動さん みちのく中野の不動尊 – 福島県

お不動さんはちょっと特別

不動明王、仏教の中でも 特に真言宗や天台宗など秘儀を奥ずる密教の尊格で、本尊大日如来が姿を変えてこの世に現れた姿であるとも言われています。

一般的には “お不動さん” と親しみをもって呼ばれ、世界的に見ても日本における “お不動さん” への人気は高いようですね。

 

仏尊に序列無きとされていますが、大日如来といえば 数ある如来の中でも過去・現在・未来の三世に渡り悟りの具現を成し、天頂に輝く日輪に等ずる最高尊格ともされる存在です。

この世の全ての存在のエネルギーと言っても過言でない、そんな大日如来の化身ともされる不動明王ですが、そのお顔は誠に厳しい表情・・。

不動明王を動物?で表すと ”龍” 物体で表すと “諸刃の剣”、さらには その原義に古代インドのヒンドゥー教の最高神であり破壊神でもある “シヴァ” との関わりを指摘されるなど、慈悲深く温和な印象の仏尊にあって、極めて豪胆で制圧的な性格を持ちますが、何故これほどに ”怖い” 仏様が人々の信仰と愛着を集めているのでしょう。

アチャーラ(アカラとも)・ナータの梵名は「不動」と「守護」、”大岩” のごとく動かず “魔” を峻厳にして退ける意味を持っています。

大日如来は天頂にあって世を統べているため、不動明王の姿を借りて個々の人の心の中に住まい正道に導いてゆく中で、その障害となる ありとあらゆる欲や誘惑など迷いの元となる ”煩悩” を、自らに纏う迦楼羅(カルラ)の炎で焼き払い清浄なる道へと導く力を振るうのだそうです。

つまり日本の神道風に言うならば、大日如来の “荒魂” の側面を表しているとも言えるでしょうか。

仏教も神道も含め なべて信仰の根源にある “自然と人” の関係で、人に対して自然が大いなる恵みと同時に、全てを薙ぎ払ってしまうような暴を持ち合わせている事を想起させます。

 

 

© 中野不動尊 / 中野山大正寺 様

 

明王、身近にありて

平安初期、弘法大師空海によって日本に伝えられた不動明王は、広められた真言密教とともに全土へと流布されてゆきますが、その後、時代の流れとともに山岳宗教の形態である修験道とも関わりを深めてゆき、多くの山間森林にその像容を残すこととなります。

今日でも “不動滝” のように名を留める所や、静謐なハイキングコースの途上でその像姿を見ることがあるのはその名残ですね。

こうして日本中に広まった不動信仰ですが、高みに坐す多くの如来や菩薩と異なり 常に人の心の中に住み人を戒め、護り、導いてゆく、そうした身近な教導者であり守護者であるところが民衆にとって崇敬とともに親しみを覚える要因だったのかもしれません。

日本独特とも言える地獄・極楽・六道輪廻信仰で、最も権威ありかつ恐ろしい裁判官 閻魔大王が本地垂迹(ほんじすいじゃく)思想において その化身が地蔵菩薩であり、地蔵菩薩は民衆の生活そのものに関わり救済をもたらす仏とされたため、大衆的な人気と信仰が根付いていたことと似通っていますね。

要するに「不動明王」・・例えが叱られるかもしれませんが、怒り出すと非常に怖い “カミナリ親父”、でも子供や家族をしっかり守って安泰に導いてくれる昔かたぎのお父さんのイメージなのでしょうか・・

 

人の道を惑わす “魔” や “煩悩” を峻烈に退治する不動明王ですが、不動明王の本義、重要な教えに「生死即涅槃」というものがあります。

“煩悩”(迷いの世界)は、”涅槃”(悟りの世界)と 反する存在であり退けなければならない世界であるものの、この世は両世界が在るからこそ成り立っているというもの・・

含蓄あればこそと言っては失礼かもしれませんが、こういったあたりも人生経験豊富な昔かたぎのお父さんとイメージが被ってしまいますね・・

 

 

© 中野不動尊 / 中野山大正寺 様

 

日本三不動

福島県福島市 なる「中野不動尊」は、開闢820年を数える曹洞宗の寺院です。
山号を中野山大正寺と称し、日本三不動と讃えられ古来より東北の不動信仰の重鎮を担ってきました。

日本三不動 とは日の本における著名な不動尊という意味合いもさることながら、寺内に祀る三体の不動明王像を指しています。

本堂に祀られる「厄除不動明王(やくよけふどうみょうおう)」
祈祷殿に祀られる「眼守不動明王(がんしゅふどうみょうおう)」
奥の院洞窟内の「三ヶ月不動明王(みかづき不動明王)」

がこれにあたります。

治承3年(1179年)恵明道人(えみょうどうにん)が一匹の鹿の導きによって 山に入り、神託を受けて この地に三ヶ月不動明王を祀ったところから この院の歴史が始まり、以来800年「九字の聖火」を灯し守り続け、人々の崇敬を集めています。

奥の院洞窟に灯る聖火は魔を滅ぼす炎であるとともに人々を導く灯火でもあるのでしょう。

 

福島市内から車でも容易に辿り着く場所にありながら、閑静な山間に佇む境内の威容と空気は神厳と歴史の重みを感じるもの・・ 福島県北において、福島稲荷神社とともに多くの参詣者を集める古社であるそうです。

尊厳高き みちのくの不動尊、現代の厄除のためにも一度お参りしてみたいもの、慈愛の表情、憤怒の表情、中野のお不動さまはどんなお顔で出迎えて下さるでしょうか・・

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「中野不動尊 / 中野山大正寺」 公式サイト

場  所 : 〒960-0261 福島県福島市飯坂町中野字堰坂28

アクセス : こちらから

問い合わせ : TEL.024-542-2100 FAX.024-542-2015

 

 

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