世の中には知っているようで知らない事も多いんだなあ・・と今更ながらに思ってしまいました。(お前が不勉強なだけ! とか言わないでね・・w)
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日本の首都はどこですか?そりゃ東京だろ?とこの記事を書くまで思っていたのですが・・ どうも「東京」はあくまで ”事実上の首都” であり ”東京が首都である” と明確に規定された法令も条文も存在しないそうです。
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都人口1300万人、人口・GDPともに世界最大級の都市であり日本の中枢を担うだけでなく、グローバル都市として国際的なハブ機能も果たす東京、天皇が在し政治・経済の基幹が集中する間違う事なき ”首都” であるはずなのですがこれはどういうことなのでしょうか。
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答えを先に言ってしまうと(要するに)「特に明文化する必要もないから」というものらしいです。 まあそう言えばそうなのかもしれませんが今ひとつしっくり来ません。
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そこで とりあえずは歴史のお話、「東京」の前身が「江戸」であったことはご承知のとおりですが、そもそもこの「江戸」という名はどこから来たものなのでしょうか。
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天正18年(1590年)豊臣秀吉の命による関東移封によって関東地方の統治を担うことになった徳川家康、関ヶ原の合戦以後 慶長8年(1603年)に征夷大将軍として幕府を開いた時からいわゆる「江戸幕府」が誕生したわけですが この地は元々 ”武蔵国” 、この地の中で家康がその政治拠点とした(古来の)江戸城 周辺が「江戸」と呼ばれる地でした。
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古くは桓武平氏に続くその地の領主に「江戸氏」という名の士族がありその居城「江戸館」は江戸氏衰退後、”山吹伝説” でも有名な太田道灌によって改修、時代の変節を越えて ”小田原征伐” の後、家康の居城となった頃はまだ「江戸」の名の通り辺り一面 葦に覆われるひなびた水郷地帯であったと言われています。
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家康によって開闢された江戸の町は以後、二百数十年に渡って発展を続けその中期には既に人口100万人を優に超えていたと言われる大都市となっていましたが、時代の流れと共にやがて混沌を深め 幕末期にはその政治機能も「京都」が担うようになり最後の将軍と呼ばれた ”徳川慶喜” は一度も江戸入城をしなかった将軍でもありました。
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「東京」の名が文書に見られるようになったのは実は明治維新の時ではなく、既に江戸時代後期、経世家(社会思想学者)佐藤信淵(さとうのぶひろ)の書「宇内混同秘策」に著されていたそうで、それによると当時の都であった京都をそのままに、主幹機能を江戸に移しこれを「東京」、これを相互補佐する役割として西の大阪を「西京」として合わせて「三京」として国力を増強してゆくことが訴えられていました。
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佐藤信淵 の思想は絶対主義(絶対的権力をもった君主による統治)また 日本至上主義に属するものであり つまるところ世界征服論にまで至るものなので、現代的な感覚からするといわゆるトンデモ思想な評価しか得られないわけですが、尊王攘夷思想が台頭してゆく当時の世相にそれなりの影響をもたらし、直接的な影響や引用はともかく(大久保利通が上記の書を引用した説あり)富国強兵をスローガンとした明治時代に重用されたのは その時代の要求であったのかもしれません。
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さて、その明治維新の時に「江戸」を「東京」と改め その都市機能を引き継ぐ形で国家中枢を担う首都として遷都の計画が持ち上がったのですが上手く行かなかったようです。
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そもそも日本という国は ”天皇の在ます都” と “実効能力のある幕府圏” による2都体制を鎌倉時代以降続けてきた経緯がありますので ”京都を首都としない” 施策には大きな抵抗があったように見受けられます。
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「首都」という名はないものの平安京以来 国の都とされた京都から東京への「遷都」は今日に至るまでなされていません。維新時代にようやくなされたのは「奠都」であるとされています。
「遷都 / せんと」= 国の都を移すこと
「奠都 / てんと」= 都としての機能をそこに定めること
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どう違うの?と言った感じですが そこはそれ、言葉巧みに表現をぼかして適当に納得してしまう いかにも日本人らしい感覚と言えば良いのでしょうかね・・
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冒頭の ”明文化しない理由” も、もちろん 政治的、経済的、また災害時の問題など現代的な理由はあるものの、それ以外にも こういった歴史的な背景が関係しているようにも思えます。
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2018年2月、衆議院議員 逢坂誠二氏によって提出された質問(要約:・なぜ首都を明文化しないのか ・明文化しえない理由があるのか ・2020年のオリンピック開催に付して明文化した方が良いのではないか)に対しても「首都を東京都であると直接規定した法令はないが、東京都が日本の首都であることは、広く社会一般に受け入れられているものと考えている。(原文ママ)」という いささか肩透かしな答弁でした。
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普段、当たり前と思っている事柄が実はそれほど当たり前でなかったり・・
世の中には知らない事も多いんだなあ・・と・・
あ、また言っちゃった・・(^^;