「大事なものは全部目に見えないと思っているの。
目に見えないことが一番大事なことだと思っているの」 佐野洋子
昭和52年 作家、佐野洋子さんによって発表された童話 「100万回生きたねこ」
会題にもあるように約40年の長きにわたり子供のみならず大人からも愛され続け累計発行部数は200万部をはるかに超えるロングセラーです。
「愛されて40年 『100万回生きたねこ』 佐野洋子の世界展」が この 7月14日~9月2日、徳島県立近代美術館 にて開催されます。(休館日除く)
100万回生きた、つまり死んでは生き返り100万回の転生を繰り返し 様々な人間の飼い猫として生きてきた猫が、100万回目でついに1匹の のら猫となり初めて知った本当の生きることの意味を描いたこの作品は、人生において日々、喜怒哀楽を反芻しながら生きている大人にこそ共感を呼び醒ますテーゼを静かにそして強烈に訴えかけてきます。
主人公の猫は最終的に本当に死んでしまうわけですが、歌人の 枡野浩一氏は、「・・・彼は生まれて初めて本当の意味で死んでしまうわけなんだけど、たいていの読者は物語の終わりを知ったとき『あー、よかった。めでたし、めでたし』という気分になっているはずで、そこがすごいのだ。主人公が死んでしまうのに『あー、よかった』と心から思える不思議。・・・」とこの作品を評されていました。
作者の佐野洋子さんは童話作家のみならず、エッセイストとしても旺盛に活動されその磊落な語り口は多くのファンの心を掴んで離しません。惜しくも癌で2010年逝去されてしまいましたが癌の宣告をされた折りもそれを気に病むどころか、むしろそれを当然いつかは来る人生の終着の基点として今生きている日々を謳歌されていたご様子。激動の幼少時代を過ごされたせいか人生観、死生観、そして世界観に独自のものを持っておられたようで、その生き様は人々が無意識にもっている物や生活におけるこだわりから解き放たれていて、しかしそれは決して諦観に流されたものではなく、むしろ本当に大事なものを大事と見極め感じる心を奔放にそして慈愛の中で実践されていた方のようです。『100万回生きたねこ』は氏の作家活動の比較的初期に発表されたものですが、その時既に氏の中の基本的なものが確立されていて本作の中にもそれが十全に満たされていたのではないでしょうか。
企画展では氏の代表的な絵本原画や版画作品などから約140点の作品が紹介されます。
『100万回生きたねこ』以外の作品をご存知なかった方も、この展覧会で他の多くの作品に触れ氏の考え方、人生観に思いを馳せることのできる時間かもしれません。
「愛されて40年 『100万回生きたねこ』 佐野洋子の世界展」
当該ページ パンフレットPDF
日 時:2018年7月14日(土) ~ 9月2日(日)
徳島県立近代美術館 ホームページ
場 所:〒770-8070 徳島県 徳島市 八万町 向寺山 文化の森総合公園内
問い合わせ:TEL: 088-668-1088 FAX: 088-668-7198
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