民話 ダンダラボッチと大わらじ – 三重県


さても今は昔
志摩の国の沖合いにある大王島というところに 身の丈30尺(9m)にもなる大男が住んでいたそうな

この大男、海で漁をする者を襲っては船を沈めてしまったり、又、夜陰に紛れて海を渡り波切の浜に上がるとその村々を練り歩き漁で得た魚を食い荒らしたり家屋を壊したり、酷いときには子供や娘をさらっていってしまう事もしばしば・・

村ではこの大男の事をダンダラボッチと呼びみな恐れておった

日々、気をつけておっても度々現れてはこの様な悪さばかりされるので、ほとほと困った村人たちはある日、村の守り神である韋夜(いや)の神様に「何とぞ、あのダンダラボッチを鎮めて下され」と祈祷を捧げた・・・

* * * * *

ある夜、いつもの如くさざめく海を渡り波切の浜に上がり越したダンダラボッチ、ふと見ると浜に身の丈を越えようかと思うほどの大きなワラジが置いてあり傍に娘が立っておる

「それは何じゃ?」
自分を見て怖がらぬ娘を不思議に思いながらもダンダラボッチは問うた

「これは今宵帰ってくる千人力の村主様が履くものじゃ」
と娘は答えた

(このような大きなワラジを履くとはとんでもない巨人じゃ!・・)
ダンダラボッチは少し怖くなった

少し行くと今度は竹で編んだ長持ちほどもある籠が置いてある

「そ、それは何じゃ?」
傍にいる若者に先と同じように問うた

「これは今宵帰ってくる千人力の村主様の弁当箱じゃ」
と若者は答えた

(このような大きな弁当箱で飯を喰うとは本当に千人力の化け物ではないか!)
ダンダラボッチはもっと怖くなった

こんな所に居ては危ないと端の浜に向かうと今度は漁の網よりおおきな布が干してある

「そ、そ、それは何じゃ?」
傍で番をしている老人に恐る々々尋ねると

「これは今宵帰ってくる千人力の村主様のふんどしじゃ」
と老人は答えた

(このような大きなものを身につける化け物に見つかった日にはどんな目にあわされるかわからん!)

すっかり青ざめたダンダラボッチは一目散に自分の島へ逃げ帰りそれ以来、村をおびやかす事は無くなったそうな


この珍事、村人が祀り祈祷した韋夜(いや)の神様が化身してダンダラボッチを懲らしめたのだという話しが人々に知れ渡り、
以来、巨人の如き村の神が座ます事を知らしめ祀るために大きなワラジを作って大王島へと流す「波切のわらじ曳き」として今に残っているそうな・・・。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA


このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください