宍道湖に春来たりなば湖畔に遊ぶ – 島根県

島根県の北東部、日本海側に面する形で横たわる島根半島。松江市の佐陀川や大橋川、鳥取県に接する中海や境水道で本土から離隔してはいるものの、大きく見てそれが顕にもならず 宍道湖や中海を抱えた本土の一部に見えて、あまり海に突き出た半島というイメージがありませんね・・。

今の島根県に そのような風情は微塵もありませんが、千万単位の太古には陸上も海中も活発な火山・地殻活動で覆われ、現在の半島 “北山山地” 部分が隆起、海の中からその姿を現してきました。

その後しばらくの間、隆起地と本土との間は浅瀬の海が占めていましたが、縄文時代に至って まだ活動を続けていた三瓶山の噴火堆積物や流砂の作用によって、現在の姿の基礎が出来上がったそうです。

奈良時代の記録誌「出雲国風土記」のはじめには有名な “国引き神話” が語られており、これら島根県と半島の成り立ちを雄弁に物語っています。 神話では八束水臣津野命による “国引き” が四度に渡って行われたと伝えられますが、これは半島部が均等とも思えるほどに3ヶ所4分割の “折絶(おりたえ・地殻活動や侵食などでできた切れ目)” で区切られていることに相応しており、物語をリアリティに彩っていますね。

 

そのような生い立ちの中 出来上がった「宍道湖(しんじこ)」は、全国で7番目という広さを持ちながら、その湖底の大半はほぼ真っ平ら。 湖面積の半分が水深5m程という平盆のような形状を成しており、それ故の自然環境と淑やかな景観美を併せ持った湖なのです。

宍道湖の北岸 およそ中程でしょうか。松江市岡本町 国道431号線沿いに、宍道湖の穏やかな波をあしらったかのような屋根が特徴的な『道の駅 秋鹿なぎさ公園』があります。

喫茶ルームやレストラン、観光案内を兼ね備えた標準的な道の駅の機能に加えて、眼前に広がる宍道湖でカヌーやペダルボート、ヨットやセーリングカッターを満喫できるアトラクションが併設されているのがポイントでしょうか。

来たるべき春から夏そして初秋、明媚で知られる宍道湖の佇まいに身を任せながら、爽やかなひとときを遊ぶ道の駅といえるでしょうか。 また同施設内 芝生広場はデイキャンプ(日中日帰りの簡易キャンプ・要予約)にも対応しており、ゆったりと過ごすことが可能です。 出雲・島根観光のプログラムに組み込むのも良いですね・・。

 

この「道の駅 秋鹿なぎさ公園」から東へ 歩いても10分程度、車なら2〜3分の場所にもう一ヶ所、一年を通して花と緑に溢れ、そして珍妙華麗な鳥たちに出会える楽園をご案内しておきましょう。

その名は『松江フォーゲルパーク』 2001年(平成13年)に開業、現在は島根県内で展開する “一畑電鉄” 関連会社によって運営されるテーマパークです。 花と鳥を主としたパークとしては世界有数の規模を誇るのだとか・・。

画像©「松江フォーゲルパーク」

32ヘクタール(東京ドーム7個分)の敷地に約8000平米 国内最大級の温室「センターハウス」を備えベゴニアやフクシア、ペラルゴニウムなど熱帯・亜熱帯性の花を中心に約1500品種 1万株を展示、常時20℃前後に保たれた温室内で、季節や天候を問わずいつでも快適に一面満開の花を楽しめるそうです。

園内全てバリアフリー化がなされていると同時に、屋外に接する場所でも屋根を完備しているため、天候の影響を受けず楽しめるのが良いところ。上記の「道の駅 秋鹿なぎさ公園」とセットで旅の予定に入れれば万一の不天候時にも安心ですね。

 

動く歩道に乗って岳陵に上がれば標高53mの「くにびき展望台」。位置的には “引き” というよりも “引かれた方の” 立地ですがw、その見晴らしは素晴らしくフォーゲルパーク園内はもとより宍道湖を一望、天気の良い日には大山(伯耆富士)を見渡すこともできるそうです。

展望を満喫したあとは水鳥が飼育されている「ウォーターフォールエイビアリー」へ。トキや白鳥・黒鳥、カンムリヅルなど水辺を生息域とする鳥たちと間近に接することができます。

画像©「松江フォーゲルパーク」

因みに宍道湖はその地勢ゆえに国内有数の渡り鳥飛来地でもあり、確認されているだけでも200種以上の水鳥、年間数万羽の飛来を数え、世界ラムサール条約にも登録された湿原でもあります。 その一部とはいえ自然環境に立ち入ることなく、水鳥を身近に見ることができる貴重なエキシビジョンとでもいえるでしょうか。

続く芝生広場では晴天時にはタカやワシが飼育員の腕から飛び交う “バードショー” のイベントが開かれることもあるそうです。

 

さらに続く「トロピカルエイビアリー」。亜熱帯環境に温度調節された温室内でサイチョウやキバタン、ハシビロコウなど異国情緒豊かな鳥たちを、これも間近に・・。1日2回 ケープペンギンの散歩に付き添うことも可能です。 ペンギンというと南極・寒冷生息というイメージですが、温帯性のものも少なくないのですね。

隣接する「パラダイスホール」では オオハシ、エボシドリなど見映え派手やかな鳥たちを時に腕に止まらせて、餌付け体験までできるそうで・・。他にもフクロウやワシノスリとの手乗り体験、フォーゲル牧場でのエミューとの触れ合いなど、一般の動物園では中々得られない特別な一日を過ごすことができるでしょう。

画像©「松江フォーゲルパーク」

ベゴニア、フクシアなどフォーゲルパークで育った花の単品販売、トロピカルな鳥たちの羽を使って作られたアクセサリーグッズの販売なども、お食事処とともにお忘れなきように・・。 個人的には “ベゴニアソフト” がどんな味なのか興味の募るところですw。

 

さて 最後になりましたが、宍道湖まで来られて楽しまれた後、東側に帰路をとられるなら、松江市嫁島町の海岸『スポットとるぱ』にまで足を伸ばしてみてください。

ここの沖合い200mの地点に小さな島が浮かんでいます。 全長110m、幅約30m、一周しても240m。上空から見るときれいなオーバル状(細長い小判型)に整地されているので、一見 人工島にも見えてしまいますが噴出溶岩性の自然島です。

宍道湖で唯一の島でありながらも 特に変哲のない小島なのですが・・、ここから、この島をシルエットに見る夕景が何とも言えず美しいのです。”日本夕日百選” にも選定されています。条件さえ合えば まるで一枚の風景画をそのままに見ているかのよう・・。

もし天候や時刻に恵まれなくても、運が良ければ夜間のライトアップに出会えるかもしれません。

湖をグラウンドの水上レジャー、希少でトロピカルな花々や鳥との触れ合い、そして絵画のごとき小島の夕景・・。夏になれば「松江水郷祭」大花火大会も催されます。 島根を訪れる貴方に出雲の神様のご加護がありますように・。

『道の駅 秋鹿なぎさ公園』 関連サイト(しまね観光ナビ)
場所:〒690-0262 松江市岡本町1048-1

『松江フォーゲルパーク』 公式サイト
場所:〒690-0263島根県松江市大垣町52

『嫁ヶ島 スポットとるぱ』 関連サイト(松江観光協会)
場所:島根県松江市袖師町

Amazon:『華表美談 宍道湖嫁島物語 -田辺朔郎博士と松江-』

 

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