巨獣大戦にもなった城は年中無休 – 静岡県

イナバナ.コムには「城」というカテゴリーもあります。2020年の設置以来 難儀なことに未だ10編程しか上げられていませんが、できるだけ他所で取り上げられることの少ない城を・・と思うあまり中々記事数が伸びません。

まぁ今さらながら・・なので、今後もスタンスを維持しながらボチボチやっていきたいと思いますので宜しくお付き合いのほどを・・。

と、いうことで 本日ご案内の “城” ですが、築城、室町時代でもなければ戦国時代でもなく あまつさえ江戸時代でもありません。 無論 廃城の嵐に覆われた明治時代でもなく、まこと昭和、それも戦後の築城。 ・・まぁ要するに “観光城” のお話です。

おぃおぃ、それじゃ “城” のカテゴリーじゃなくて “行楽” だろう・・ってところですが、先に申しあげたとおり常々斜め上を歩く当ブログの持ち味、”こんなのも有り” ということで お楽しみいただければと思います。それでは宜しくどうぞ〜・・。

 

・・で、その観光城、何処かというと静岡県熱海市 錦ヶ浦の山頂に建つ『熱海城』です。近年ではそれほどでもないかもしれませんが、昭和から平成の掛かりにかけての中部〜関東地方においては人気の観光地で、”熱海温泉” 観光時には必ず立ち寄る場所でもありました。

“熱海温泉”、そう、開幕の祖 徳川家康が湯治して以降 将軍家御用達の温泉として名を馳せ、明治・大正・昭和 南紀白浜(和歌山)・別府(大分)とともに日本三大温泉として知られた老舗の温泉郷です。 「金色夜叉」の舞台としても有名、後の宮崎県に先駆けて “新婚旅行のメッカ” となった時代もありました。

それどころか、当時の知名度の高さから映画ロケの背景などにも度々用いられ、挙げ句 お城に至っては「キングコング対ゴジラ」(昭和37年)において決戦場にも採用されて、壊滅的な破壊まで被っていたりするのです(映画の中の話)。「年中無休」が売りのひとつでもある「熱海城」ですが、このときばかりは休業だったのでしょうかw?

現在の熱海城の方でも この映画に対する想い出は消えることなく、2019年から「熱海対ゴジラ」というスペシャルイベントを毎年開催しています。本年2023年度分は1月~3月と既に終了していますが、凡そ春先の開催あたりで来年度の開催が期待されますかね・・。 「熱海対ゴジラ」当該サイト

 

昭和も50年代辺りから、行楽の指向多様化や各地温泉の人気拡大に伴い “熱海温泉” そのものが、かつてほどの観光の賑わいから遠のきましたが、それでも令和の今にあって熱海が一級の行楽地であることに変わりはありません。

長閑の時を挟んだせいか昭和時代の名残りが些かに残る町並み。その佇まいに惹かれたのか、近年ではリターンな賑わいを取り戻し 若い世代の訪問客も増えているそうです・・。

さて、そんな町に『熱海城』が築かれたのが昭和34年(1959年)のこと。 世の景気もいよいよ上向き「もはや戦後ではない」の流行語さえ過ぎつつある時勢、新時代の活況に向かう温泉街に さらなる集客の増加とともに、熱海の象徴のような存在として建てられたものでした。

錦ヶ浦を一望できる断崖の上に築かれた城は外装5層の豪華なもので、天守頂上には立派な金鯱も尾を振り上げています。築城建築が発展の頂点に達した桃山時代、慶長初期の様式を範として設計されたそうです。

歴史的実態のない観光城のため内部は現代的な展示施設になっているものの、1階から5階までは主に当地東国武士に近い武士文化や、江戸時代の文化紹介・展示イベントに充てられており、丸々 “外観だけの城” になっていないところが流石とも言えましょうか。

地下1階、地上6階、エントランスなど含めて9階造りの高層建築は地上43m、6階 “展望天守閣” に至って海抜160mの眺望は、熱海市街地・錦ヶ浦はもとより湯河原、新鶴半島、初島や大島、相模湾一円を見晴らす稀有なる絶景。 若干下がりますが1階層に設置される展望リラクゼーション「天海の足湯」と併せて、ぜひとも体感しておきたいスポットですね。

「天界の足湯」画像 © 熱海城公式サイト

お城の外観を持つ観光ビル。言ってしまえばそういう建物ですが、この地は古来より “天然の要害” ともいわれる断崖でもありました。 当地の盟主でもあった小田原北条氏が水軍管轄の城を築くことを試み、幾度も失敗したということからも それが知れるでしょう。

熱海の海山、そこに城を築くことは古からの夢でもあったのです。

 

そして、昭和時代の隆盛は別に “熱海の温泉” そのものの歴史に目を向けてみると、そこには千年を遥かに超える往古の物語が息づいていることに気付かされるでしょう・・。

〜 時代は天平の世が移る頃、時の聖僧といわれた万巻(まんがん)上人が、東国一円の神仏習合思想を根付かせるため行脚を馳せていたときの話・・。 箱根の里を通りかかったところ 彼方の海に焔が立ち白煙濛々たる景色を目にします。

当地の民に聞くところ その焔のために魚が捕れず暮らしに事欠く有り様、不憫に思った万巻は浜辺に座り読経を施したそうで・・。

すると海中から薬師如来が顕現し「汝の法力をもって焔の源を海から丘へと移すべし・・」との啓示。 万巻は三十七日間の断食祈祷をもって これを成し遂げ、これが熱海の湯の起源となったのだとか・・。〜

万巻上人は関東地方を主に活動した人で、神仏習合の魁ともされる高僧です。 逸話にも事欠かず、神託による箱根神社建立に関わったり、箱根芦ノ湖で猛威を振るう九頭竜を調伏して九頭竜神社の創始を成し遂げたなど多数の伝承を残しています。

熱海温泉の起源伝承については、その頃に火山帯の活動があったのかもしれません・・。 遠き “京” が日の本の中心であった時代に東国でも様々なドラマが織りなされていたことが伺われますね・・。

 

歴史に裏打ちされた由緒正しき城を巡るのも旅の醍醐味ですが、観光用とはいえ地域の夢と願いに満たされた “その地のお城” も乙なもの。その場所にはその場所なりの歴史がしっかり息づいているのです。

ややも昭和の香りが残る温泉街を散策してみるのも、このサイトを訪れていただいている皆さまには “懐かしさ” への探訪となるかもしれません。 現代にあわせてリフレッシュされたサービスとの兼ね合い色合いの違いを味わうのも面白いですね。

千年の歴史から江戸時代、そして近代50年の歴史まで様々な人の想いに彩られた滋養の温泉郷、今一度・・というより これから新たに見直されるべき熱海なのかもしれません・・。

『熱海城』 公式サイト

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