出演依頼はまだかいな・・昔話の?-後

“申し訳ない” の連発で続いている今回の “日本の民話-出演者考”、元々の疑問であった「ムササビやコウモリは、何故 日本の民話に登場しないのか?」に立ち戻って考えてみたいと思います。 只、全編での冒頭でも述べたように、今記事においてその明確な答えは得られていません。・・やっぱり申し訳ない・・。

・・で、そもそも何故疑問に思ったのかといえば、ムササビもコウモリも共に人間の生活から比較的近い場所にあって生息しているため、人の目にも触れやすい立場であったにも関わらず、殆ど話に残されていないことが不思議に思えたからです。

 

ムササビは現在 市街地で見ることはあまりありませんが、山間地の村落で見掛けることは少なくなく民家の天井裏に入り込んで巣を作ることもあるそうです。 コウモリはといえば現代社会への適応性も高く ビル街や住宅街で見ることもしばしば。コウモリのイメージのひとつである “洞窟” も無いのに何処に棲んでおるのだろう? と思いきや、屋根裏、橋の下、倉庫や建物の隙間、時に換気口や室外機の裏など あらゆる隙間をねぐらとしているそう・・生命力の高さが伺えますね。人によっては ウゾゾ~ッ!と感じる話かもしれませんがw。

 

そして ムササビですが、やはり日本の民話においての登場を見ることはあまり無いようです。 しかし 全くのゼロという訳でもなく、 “コチラ(需要研究所 / 宮沢賢治の宇宙)” に「・・親は夜中に狐やムササビが来るから追い払え・・」という文言が “岩手県岩泉町” の昔話で用いられていたという記述もあり、ムササビの存在が人々の耳目の外側にあったわけでないことを知らされます。

また 日本ではなくティモール(東南アジア)の民話ですが「ムササビとネズミ」といって、二匹して散策していたムササビとネズミが、見つけた芋をめぐって展開する珍話があり、ネズミの狡猾さを物語っています。「ムササビとネズミ」(アジア・アフリカ言語文化研究所)

ムササビは日本の固有種とされていますが、海外でもその話があるということは、ムササビかモモンガの近似種を語っているのかもしれません。

ムササビもモモンガもネズミ目リス科の動物ですが、リスも含めて民話・伝承への出番が少ないのは人の生活との関わりが少ないからでしょうか・・?

キツネは田を荒らすネズミを捕食するため古より田の神的な扱いを受けていたといわれますし、そのネズミも良かれ悪しかれ人の暮らしの近くにあったもの。タヌキは人里に姿を現しますし(ムジナやマミを含む)、反面オオカミや野犬は旅人にとっての脅威であったでしょう・・。 反面、リス科の動物など人の生活に接点の少ない生き物は、あまり気に残らなかったのかもしれません・・。

 

とはいえ、完全に無関係かというとそうともいかず・・山中を歩いている時、作業をしている時に偶然出くわすことは多々あったと思われます。日本のムササビはネズミ目の動物としては極めて大型で、前後足の間の飛膜を広げて滑空するときは、およそ30~40cm四方もの大きさとなるそうで凡そ野球のホームベース程の大きさ。日も傾きゆく寂しげな山道でいきなり頭上を横切って飛ぶ、そのようなものに出会ったら腰を抜かす事請け合いだったかもしれません。

こういったことを反映してか、古くからムササビは “野衾(のぶすま・衾は昔の布団のこと)” また “飛倉(とびくら)” などと呼ばれ、人を惑わし時に害する妖怪の一種と認識されていました。

 

同時に前編で触れたコウモリについても似たようなところがあり、人の暮らしに関わるもの、というよりも超常の生き物として見られていたようなのです。

「天狗」というと日本の民話的認識においては “鼻が異常に長い赤ら顔” “山伏姿で超常の能力を持つ” “善なる面と粗暴な両面を持つ” などとされており、また牛若丸(源義経)伝説の関連から “カラス” のイメージが強いですが、他方、古くはその存在にコウモリとその羽が投影されていた節があるのです。コウモリの羽には魔法(呪法)が宿るともされており、故にその神性が天狗に仮託されていたのかもしれません。 コウモリが棲み着いた家には福が訪れるといった話もあり(幸守り)、天狗の持つ両面性と通ずる部分があるようにも思えます・・。

さらに、天狗は夜になるとコウモリとなる・・という口伝も一部にあるようで・・、仮にこの伝承が事実であったとすればですが・・、ひとつの着目点が見えてきます。

 

ムササビもコウモリも、共通するのは “夜行性” ということ。
つまり、彼らが人々の暮らしから距離があるのは その活動時間帯が異なることが大きな背景にあるのではないでしょうか・・。 闇の中で動き回る生態に神秘性と恐怖を抱き、それが神にもなれば妖怪にもなると同時に、活動時間の差異から人との絡みが取り難く 民話への組み入れが進まなかったのではないか・・? とも思えるのです・・。

・・と まぁ 今回ここまで書いてきましたが、実際のところ何の素養もない私の考察でしかないので信憑性には甚だ遠いです。 同じ夜行性であるタヌキは民話界のスーパースターですし、昼行性の動物で民話に登場しない動物は他にも沢山いるでしょうし・・。

只、ムササビにしろコウモリにしろ それなりに特徴が多く、民話・昔話に出演していたら色々と面白い話もあったのではないかと思うが故の今記事なのでありました。 昔話は既に過去のものなので どうしようもありませんが、現在進行系で作られている “創作民話” になら充分に出演可能かと思います。 作家の皆様、彼らのオファーを一度お考えくださいませんか・・?

注:実際のムササビはその外見に関わらず かなり攻撃的で、またコウモリは病原体を保有している場合が多いため、見掛けることがあっても触ろうとしないでください。

 

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