静山、紫陽花の小径に千年の昔日を辿る – 奈良県

気候変動の影響でしょうか、近年では季節の訪れ方も以前に比べて少々足早、その上 突発的・変動的に現れるような気がします。 寒がりな私にとって冬の寒さは相変わらずですが、やはり総体として年間の平均気温上昇は否めず、九州から西日本周辺に至るまで、最早、亜熱帯気候に以降しつつあるという人もいるほど・・、その内、目に見えて草花・樹木の植生も変わってゆくのでしょうか。

この記事が掲載される頃には、もしかすると西日本もそろそろ梅雨入り間近になっているのではと思いながら書いています。昨年は九州・四国で統計史上最速の梅雨入り、今年もそれに準ずる早さなのだそうです。

個人的な感覚かもしれませんが、近年の梅雨は、昭和の頃に感じた 来る日も来る日もシトシト雨がそぼ降る梅雨とはいささか異なる雰囲気、もうひとつ抒情を感じ難いような気もします。 しかし、それでも季節の花々はそれを待ちかねたようにツボミを緩めるのでしょう。

 

奈良県桜井市の山中、飛鳥時代に緒を持つ『談山神社』(たんざんじんじゃ)
打倒 蘇我氏 そして国政の改革を目指した、いわゆる “大化の改新” への密議が中大兄皇子と中臣鎌足によって談義された地としても知られていますね。

二人が談合を交わした場所は “多武峰(とうのみね)” であり、往時 “談い山(かたらいやま)” “談武峯” とも呼ばれていました。故の “談山” であり、神社の創始は その数十年後 天武年間のことだったそうです。

つまり、密議が行われた時はまだ多武峰が開かれる前、都とはいえ 夜ともなれば魑魅魍魎が闊歩していそうな古拙の時代、飛鳥宮から外れた峰の辺りは鬱蒼とした山中であったに違いありません。それほどまでに計画の露見に気を払っていたのでしょう。 ※ 乙巳の変や大化の改新の経緯については諸説あります。

 

鎌足の死後、唐から帰国した(鎌足の長男)定恵が父の供養のために当地に弔い、十三重塔を建てたのがはじめ、その後 20年程のうちに講堂や神殿が整えられ談山神社の基が築かれました。 以後、”多武峯妙楽寺” という名の寺院として時を刻み明治時代に「談山神社」として改称されました。

千三百年余に渡って神仏習合の歴史を紡ぐ静山の古刹なのです。

その談山神社、この時期になるとアジサイの季節がやってきます。
境内に10種、500株のアジサイが そこここに、そして小径に沿って咲き並び小雨に潤う様は、風情と歴史への想いを誘うのにふさわしい情景でしょう。

奈良県下における “アジサイ寺” としては、”花のお寺” で知られる 同じ桜井市の「長谷寺」や 大和郡山市の「矢田寺」が有名ですが、山の奥深く閑静に佇む「談山神社」のアジサイには、また独特の趣きを感じさせてくれることと思います。

 

実は 一昨年の三月、初めての緊急事態宣言が出る少し前に「談山神社」を訪れる機会に恵まれました。 境内はとても広く・・というか、広大な敷地という感じではなく、山肌を削り造営していったと思われる面白い造地となっています。

京都や奈良市内で見られる著名な寺院のような、豪奢な宮・寺院の威勢はありませんが、楼門をはじめ社殿・遺物、また縁結び東殿の “恋神社” など見どころも多く、それら全てが、緑に包まれた幽玄の雰囲気の中に息づいていたことが とても印象的でした。 その歴史で永く寺院としてやってきたため、神仏習合独特の妙趣がまた味わい深いです。

6月7月の二ヶ月間には “秘仏・談峯如意輪観音像の特別公開” も予定されており、アジサイの見頃と併せて参詣の意義も高まりますね。

定恵上人が唐から持ち帰ったと伝わる仏像を、鎌倉時代に模して新造された秘仏、穏やかで美しい尊顔は一見に値するでしょう。 膝下を楽に崩した坐像は その御姿からか “鎌足” の名の流れからか、足腰の痛みに霊験あらたかなのだとか・・。 万年腰痛に悩む私ももう一度参拝しないといけませんかね・・w。

 

因みに この定恵上人、上で書きましたように中臣鎌足の嫡子・長男です。
唐に渡り、あの玄奘に連なる神泰法師に学び数々の学跡を積む博学者でしたが、帰国した後は 父 鎌足の弔いに関わる伝承を除いて事績も少なく、ほどなく逝去しています。

中大兄皇子と諮り大化の改新を成し遂げた立役者、皇子に重用され内臣となり、藤原氏の礎を築いた鎌足の嫡男として生まれながら、何故に出家の道を選んだのか、その記録が殆ど残されていないのか、など未だに謎のままだそうです。

千年の昔日の面影を今に伝える静山の宮、柔らかな梅雨の雨をアジサイに感じながら、そんな太古の夢や謎に想いを馳せてみるのも一興ではないでしょうか。

『談山神社』 公式サイト

〒633-0032 奈良県桜井市多武峰319
TEL: 0744-49-0001 FAX: 0744-49-0236

※ 車でお出掛けの場合、県道155線を辿り談山神社手前側から進入する坂は急勾配です。梅雨時・雨天時などの通行にはご注意ください。

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