愛でて愛でられるこけしの世界 – 青森県

およそ4年ぶりの “こけし記事” といったら少々妙な言い方でしょうかw?。以前お送りしたのが2019年の11月 やはり青森県からの話題、コロナウィルス流行のほんの少し前、まさかに年明けから4年間もコロナに煩わされるとは思ってもみませんでしたね。

お陰で2020年以降、イベント記事もお伝えし難い状況が続きましたが、ようやくここ半年一年 感染状況も落ち着きつつあるので多少なりとも動きやすくなってきました。

まだまだ完全に払拭されたわけではありませんし、そもそも今は最も寒い時期でもありますので、この時期に青森県・・というのは二の足を踏んでしまうかもしれませんが、伝統的民芸品 “こけし” への愛に溢れた方、ちょっとした切っ掛けからご興味を抱かれた方、本日の記事をご参考いただければと思います・・。

 

青森県の中央部、黒石市にある「津軽こけし館」『第15回 楽しい、ひなこけし展』が開かれています。

〜 全国の伝統こけし工人が津軽に一足早い春をお届け・・・♪
200作品以上のこけしのおひな様“ひなこけし”が集まる展示即売会開催! 〜 こけし館のコピーにもあるように “雛人形装束を身にまとったこけし” をメインに可愛く艶やかなこけしたちが並びます。

“こけし” というと伝統的なものであるが故に、その出で立ちは定型的ななものと思いがちですが(単に私の認識不足かもしれませんが(^_^;)、少なくとも平成以降 古くから伝えられる典型的なスタイルのものだけでなく、今回のように他の風習に絡めたり、地域や団体のマスコットキャラクターとコラボしたものが作られたりと、その世界は広がり続けているようです。

例えば “こけし 可愛い” などのワードで画像検索してみてください。従来の寸胴に大きな頭のこけしと同数以上に現代的な感覚に合わせたこけしたちが彩りを放っています。 年若い世代にも受けそうなスイートな造形・彩色のものも多く、中には “ミッキー・マウス” や “天才バカボンのパパ”、外国のシスターを形どったこけしまで・・。

普段 あまり気にかけず目にすることもなかっただけに、これらのこけしには新鮮な驚きを感じてしまいますね。いわば、こけし界のニュー・ジェネレーションとでもいえるでしょうか・・。

現代的なこけしの一例

 

もちろん、伝統に基づいた従来のスタイルを保ったこけしも健在です。基本を旨とする愛好家の方には やはり外せない本流であり続けます。

江戸時代後期、東北の温泉地帯を中心に民芸土産品として発祥したこけしは、子供向けの玩具としての側面を持っていましたが、それは単に子供が遊ぶためのもの・・というだけでなく、子供を守り家系を守り、引いては郷里を安寧に導く祈念の意味合いをも含んでいました。

伝統的なこけしに必ずと言っていいほど、魔除けの “朱” の色がひかれていたのは そのためです。古の時代に大きな脅威であった疱瘡(天然痘)を遠ざける力が宿ると信じられていました。(このあたりの信心はコチラと同じですね)

江戸期の木地師(工人)たち

元々、寒冷農閑期の農民にとって、大きな慰安であり交流の場であった湯治場(温泉地)で興り広まっていった “こけし土産” は、家族や大切な知人に対する愛情と、共同体の未来を神の庇護下に浴するための儀礼が融合した “想いの依り代” であったのかもしれません。

こうした意味合いからも子女の健やかな成長と幸せを願う “雛祭り・雛人形” と こけしの融合は、いわば必然の流れでもあり、一部では江戸時代末期には “ひなこけし” の原初の形態が見られたともいいます。 ご案内している『楽しい、ひなこけし展』も、新しくも古き土台に基づいた(こちらは)ニュー・トラディショナルな形といえるでしょう。

老練から新進気鋭まで数十人に及ぶ こけし工人による出品は圧巻です。

 

詳しい方ならよくご存知のことでしょうが、”こけし” の世界は思う以上に広大です。 産地(温泉地)によって姿の傾向が異なり、その流派は知られているだけでも12系統に及ぶといわれています。

頭部にクルリと蛇の目状の髪を描く “土湯系(福島県)”、頭部を回すとキュッキュと音がすることで知られる “鳴子系(宮城県)”、木地そのままに滋味深くも頭部がクラクラ動く “南部系(岩手県)” 等々、その細やかなバリエーションには目を見張るばかり・・。

画像クリックで各系統こけしの詳細ページへ

今記事の青森県にあっては “津軽系” とも呼ばれ、髪はおかっぱ頭、胴にはクビレなどが施されることも多く、また模様に “ねぶた” や(位置文化的な影響からか)アイヌ模様が取り入れられ華やかさが際立っています。

 

200年からの伝統に培われた こけし文化は単なる郷土民芸品であることの枠を超え、現在は老若男女問わず、また海外にまで愛好家を増やし続けるアイテムとなっています。

そしてそれは、いわゆるマニアの世界だけの話ではなく、今まで民芸品など考えもしなかったユーザー層にまで広がってきているのです。 上でご紹介した “ニュー・ジェネレーション(新世代)こけし” の台頭もそれを物語っているのではないでしょうか。

その長い歴史、そして先へ続く未来に向けて新世代のこけしも いつか伝統の一部へと組み込まれていくのでしょう。(200年後にバカボンのパパこけしを見た人が、どう解釈するか楽しみですが・・w)

『第15回 楽しい、ひなこけし展』も含め、ぜひ一度 こけしに目を向けてみてください。トラディショナル(伝統的)なものも 新世代のものも、それぞれ稀有な魅力に溢れています。 それは木地という自然の素材に込められた “人の祈りと安らぎ” そして “人を愛し愛される想い” 故なのかもしれません。

『ひなこけし展』は約200体の展示即売会ですが、会場「津軽こけし館」では数千体の常設展示がなされています。

 

『第15回 楽しい、ひなこけし展』 津軽こけし館公式サイト

場 所:〒036-0412 青森県黒石市袋字富山72-1
開催日:2024年1月6日(土)~3月17日(日)
お問い合わせ:TEL.0172-54-8181

卯三郎こけし しあわせ こけし (小) ピンク

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