絶景涼風、日本一滝の多い町から – 岐阜県

ようやく暑さも和らぎ秋の気配が漂う今日このごろ。いやはや、言っても仕方のないことながら今年の夏はことさら暑かったように思えます。 とはいえ同レベルの酷暑は2023年既に記録されており、さらに翌年2024年にはそれを更新 “全国の平均気温が平年値より2.36度高” していました。

人の感覚もしくは記憶の曖昧さかもしれませんが “今年の夏こそ暑い!” のではなく、猛暑のレベルが年々常態化しつつあるようです。

これまで経験したことのなかった竜巻被害も増えるなど、温暖化だか異常気象だか地球規模の影響かもしれませんが、この先どうなってゆくのか些か不安ではありますね。

とはいえ、どうなるか分からない先の不安を憂いていてもはじまりません。
気温も下がったところで行楽のシーズンも目前、清々しい風と眺望に出会うべく、温泉地としても知られる岐阜県下呂市から『巌立峡(がんだてきょう)』のご案内をさせていただこうと思います。

 

下呂市、下呂温泉。日本三名泉のひとつとしても数えられる(諸説あり)古湯・名湯であり、中部地方の癒やしの奥座敷ともいうべき湯殿。

下呂の名は律令制の時代に、この南北にあった美濃国・菅田と飛騨国・伴有の駅(宿場)の距離が開きすぎていたため、中間地であるこの地に “下留駅(しものとまりえき)” を置いたことに始まります。下留(しものとまり・げる)の読みが後の時代に転化して “下呂” となったのだとか。

一千年の歴史を持ち天下三名泉の名を欲しいままにしながらも、度重なる飛騨川の氾濫に脅かされ、明治時代には一度 湯元そのものが閉ざされてしまったことはあまり知られていません。 大正から昭和初期にかけて復興開発が進められ、見事湯元の復活を果たしました。

開湯伝承、凡そ10世紀、当地に温泉脈が見つかったのは谷間ではなく、何と隣接する湯ヶ峰山の山頂付近であったといわれます。

要するに火山性の温泉脈であり、この周域は湯元として機能する脈、自然の恩寵に恵まれた地であったということですね。

 

すなわち下呂温泉郷以外にも近隣に湯脈は存在するわけで、そのひとつが下呂温泉の北10km程の場所にある『小坂温泉郷』(おさかおんせんごう)です。

別名:飛騨小坂温泉郷。下呂のビッグネームの陰に隠れがちですが、全国有数の高濃度炭酸泉であり古からの湯治場でもありました。

御嶽山の麓に位置しながら「濁河(にごりご)」「湯屋(ゆや)」「下島(したじま)」3つの湯元からなる温泉郷であり、野趣溢れる保養地といえましょうか。

奥郷ゆえの深緑に抱かれたキャンプ場などもあり、また日帰り露天温泉「巌立峡ひめしゃがの湯」では “飲める天然炭酸泉” を楽しむこともできるようです。

ここで出てきた巌立(がんだて)の名。小坂川と濁河川の合流地点に屹立する高さ72m、幅120mの柱状節理の大岩壁。

5万4000年前、御嶽山の火山噴出物である “摩利支天第六溶岩” が濁河川に沿って流れ降り堆積したものの一部であるのだとか。 巨大絶景でありながらも、さらにその地下には数10〜数100mの溶岩質が眠り続けているのだそうです。

5万年前といえば既に人間は居たものの文化もまだ未開花な旧石器時代。今日、静かで爽やかな景観も その当時はまことにエネルギッシュ・・というか、壮烈な状況を呈していたのでしょうか・・。

巨人による彫刻のごとく複雑ながらも規則性を持った柱状節理は、自然の息吹の不思議さと生命力を見せてくれます。 「巌立」は県の指定天然記念物ですが、この上流12kmには(道路は無し)「あまだて岩」と呼ばれる、さらに巨大な柱状節理があるそうですから・・、自然の力とは無限ですね。

小坂温泉郷やこの巌立周辺までは道路もあり、この地を刻み潤し流れる川に沿って「巌立峡 / がんだて公園」遊歩道などが整備されています。 秋が深まる頃には紅葉の地としても賑わうでしょう。

 

深き山があり、それを刻む渓谷があれば それに注ぐ滝があるのも摂理。 只それは、ここ小坂町(飛騨小坂)にあって注目すべきは大きな滝などではなく、その数の多さです。

其処彼処に流落する滝は5m以上の落差を持つもので216ヶ所以上もあるそうで、これをもって小坂町は “日本一滝の多い町” として知られます。 清涼な自然と滝の音に満ちた温泉郷は “岐阜の宝もの” として評価されているのだとか。

大小200以上もある滝の景観を見て廻るのは大変にも思えますが、小坂町では がんだて公園内の整備とともに散策コースのプランも提案も行っています。(詳細は下記リンク参照)

三段流れの迫力ある “三ツ滝” を含みながらも楽に巡ることができる「手軽に散策コース」。 “からたに巡り” “仙人滝巡り” など4種から選んで自由に巡る「自由に散策コース」。

さらに「大迫力の小坂の滝を満喫できる滝めぐり︰中級」や「小坂の秘境を巡る滝めぐり︰上級」など、スキルや健脚に応じて参加できる多彩なコース設定の中から最適なコースを選ぶことが可能。(中・上級はガイド必要)

訪れる秋の一日を絶壁の大観、滝と渓谷の涼風に置かれれば、長かった暑さに疲れた心と体もリセット。年末年始に向けての新たな気力も湧いてくるかもしれませんね。

 

滝の音を遥かに涼やかな川が流れる小坂、そして周囲下呂地域。
ご案内の終わりに当地に伝わる民話を一つ置いておきたいと思います・・。

『奇妙なお坊さま』

夏の乾きもようよう和らいできた秋の入り口のある日

村の一軒の家に お坊さまがおいでになって

「少し休ませてくれろ」 とおっしゃる

快う軒先を貸した この家の者じゃったが
どうも 坊さま腹を空かしておるように見えたので
ソバ団子を出してあげたそうな

すると 坊さま 温かい団子には手を出さず
冷えた団子ばかり次から次へと頬張った

よほど空きっ腹だったのか 後で食べた団子の数を数えたら20個も食べていたのだと

ふと 庭先で火にかけていた鍋から山椒(サンショ)の匂いが漂ってきた

すると坊さま とたんに顔をしかめて

「ネモミに行かれるのか?」と恐ろしげな目で言わっしゃる

ネモミっちゅうのは山椒の根を揉んで薬を作り
これを川に放って川魚をシビレさせて捕る漁のことじゃ

祭の用意に 翌の日には皆でネモミをする算段じゃったが
坊さまのあまりの気迫におされて鍋を下ろしたのだと

それを見た坊さま 安心した様子で団子の礼をいい帰っていった

ありゃ何処の坊さまじゃろう? 近在では見んお人じゃが・・
あとを追ってみた村人がいたが 林の奥の川べりの付近で見失ってしもうたとな・・

 

鍋を下ろしたというて 祭は明後日

鍋をかけ直しネを拵えると 次の日 村人たちは総出で川でネモミをした
あれよあれよという間にたくさんの川魚が上がりそれらを捕まえた

見ると一匹とてつもない大きさのイワナが上がっておる

村に持ち帰り その大きなイワナの腹を捌いてみると
出てきたのは20個の団子じゃった

それ以降 イワナは人に化けるといわれ
大イワナの捕れた辺りを “団子淵” というようになったのだと・・

※「イワナ坊主」と呼ばれる物怪伝承の一遍かと思われます。

『滝と炭酸泉のまち 飛騨小坂』飛騨小坂観光協会サイト

『小坂の滝めぐり』飛騨小坂観光協会

『巌立峡(がんだて公園)』下呂温泉観光協会

Amazon:『おとな旅プレミアム 飛騨高山・白川郷 飛騨古川・下呂温泉』

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