日本三景といえば宮城県の松島、京都府の天橋立、広島県の宮島。
江戸時代の儒学者・林春斎が著した歳時記「日本国事跡考」に端を発した、著名な景勝地です。 一生に一度は見ておくべき絶景として長く人々の憧れを集めてきました。
その一景、宮城県の松島をして、双璧と讃えられた地が秋田県の海沿いにあります。
「東の松島 西の象潟」 俳諧集 “おくのほそ道” で辿り着いた最北の目的地、出羽国、象潟(きさかた)。 当時 まだ入り江の干潟で広がる広大な湖にあって、心打たれた松尾芭蕉が残した言葉です。
今はほぼ陸地となった秋田県の南西端、にかほ市象潟。
150日を賭して詠み歩いた旅の中で、芭蕉は象潟の情景に憂愁と安寧を感じ入り、「象潟や雨に西施がねぶの花」という句も詠んでいます。
絶世の美女、国王の愛妾として召され愛され、政に絡んで翻弄の時を歩み、最後は水に沈められる西施(せいし)の悲業を例え。
その悲しみを癒すかのように其処此処に咲き広がる優しき花・ねぶの花。 “ねぶの花” とは “ねむの花・合歓の花(ネムノキ)” のことであり、そこには平和や安らぎ、共に生きることの喜びが謳われているのです。
薄紅色、刷毛のような細やかな花弁が特徴の “ねむの花” は、その面持ちから物柔らかで情味豊かな印象を与えます。
その花言葉は “安らぎ” であり “夢想” であり、そして合歓の文字のごとく “夫婦の円満” を象徴するもの。 ねむの花 咲き乱れる丘は安寧から萌いづる希望に満ちているのです。
その名を冠した『道の駅 象潟 ねむの丘』
Googleマップでも確認出来るように、海沿いぎりぎりに建てられたこの施設は各種レストランはいうに及ばず、本格的な温泉施設から手軽に疲れを癒す足湯までをも備えた、総合アミューズメント施設ともいえるような豪華さを誇ります。
「道の駅好き600人が選ぶ決定版!」東北版でも5指に入る有名な道の駅です。
旅の疲れを癒す温泉施設は4階にあります。「眺海の湯」の名のとおり眼前に広がる日本海を目の当たりにしながら入浴を堪能する事が可能。
その泉質は海を間近にしている事からも<ナトリウム-塩化物強塩泉>という微量の塩分を含むもので、美肌効果を始め切り傷・火傷などの皮膚疾患、神経痛、筋肉痛などの神経系疾患などにも効果が期待できるそうで。
驚く事に利用料金も90分で大人450円と極めてリーズナブル(営業時間:9:00~21:00 最終受付20:3:冬季09:00~20:00 最終受付 19:30)。他にスタンプ企画など、利用者の立場に立ったサービスも人気を博している理由の一つかもしれません。
1階の物産館/軽食コーナー(営業時間 9:00~18:30)は規模も大きく、2階のレストランは季節限定メニューがおすすめ。 3階には宴会場も備え、そして6階には日本海と鳥海山が360度パノラマで見渡せる展望塔(無料 9:00~20:00)もあるなど、この道の駅で過ごすだけで結構な時間が経ってしまいそうなほどの充実度。
館外、海側に突き出した「ふれあい広場」や「芝生公園」では、日本海の絶景を満喫しながら家族とのゆったりした時間を過ごせそうですね。
道の駅には「才の神神社」という神社が祀られています。作り物の施設ではなく、れっきとした由緒正しき神社だそうで “ねぶの花” よろしく夫婦円満や子宝、縁結びに御神徳があるようなので、良い出会いを求められている方やご夫婦連れなど立ち寄られるのも良いでしょう。
“才の神” は元々 “塞の神” でもあり「道」とそれに連なる「場所」を守られる道祖神でもありました。 多くの場合、異郷から来る厄災を祓う護神として知られていますが、塞は出会いの場所でもあり合歓の地でもあったのです。
“合歓・ねむの丘” の名に通ずる “才の神” 佇む道の駅。
神の山 “鳥海山” を遥かに頂いて、今日も人々の来訪と歓喜を見守っています・・。
場所:秋田県 にかほ市 象潟町 字大塩越 73-1