宍粟の山間にりんごの花が咲く頃 – 兵庫県

林檎 / りんご、言うまでもなくフルーツの王道、日本においては消費量も半端ない青果果物のトップスターのひとつですね。(国内消費量ではバナナに次いで第2位、3位はみかん)

只、子供の頃、りんごが少しだけ苦手でした。 品種にもよるのでしょうが、現在のものに比べ割と酸っぱくて硬かったからです。

リンゴ酸が多く含まれていたためか、食べた後に歯がギシギシになっていたのも一因だったと思います。 まぁ何にせよ50年以上も昔の話ですけどね・・(^_^;)

言い換えれば現在のりんごは とても甘く、歯触りも優しくなりました。 昔のものに比べると同じ果物と思えないほどに・・。

糖分や栄養素のバランスはよく分かりませんが、とりあえず食べやすく美味しくなったのは有り難いことです。

 

子供の頃の記憶といえばもうひとつ。 家にあったレコードプレーヤーで聴いていた童謡に「りんごのひとりごと」という歌がありました。

[ 私は真っ赤なリンゴです〜♪ お国は寒い北の国〜・・♪ ]

ちょっと寂しげなメロディが、何故か未だに心の奥底に息づいています。 (私よりさらに年配の方なら「リンゴ追分」や「りんごの唄」の方が印象深いでしょうかね 。

ともあれ、この歌のお陰で私の中では[ りんご=寒い地方 ]のイメージが出来上がったのです。

事実、国内における生産量は青森、長野、岩手、そして山形の4県で全体の9割を占めており、やはり比較的寒冷な地勢がりんご生育に向いていることを示しています。 長野県はともかく大体は北の国♪産といっていい感じなのでしょうね。

 

・・が、何事にも例外はあるもので山口県や広島県など中国地方、さらに九州の福岡県でも作付け生産が行われています。

東北の生産量には及ばないものの、山口県の阿東徳佐地域などは西日本最大の生産地としても知られているのだとか・・。
これらの地域では東北に比べ温暖な気候ですが、一定の寒冷期を利用しながら品種の改良や生育の工夫を重ね、美味しいりんごを生産しているのですね。

このように、年間60万トンもの生産量を誇りフルーツ王の一角でもあるりんごですが、その “花” ともなると地元の方を除いて見たことのない人も多いのではないでしょうか・・?

兵庫県宍粟市 “新三久安大橋”

兵庫県西中部の宍粟市(しそうし)山間の小さな町、波賀町にある『原観光りんご園』でも、この4月の下旬頃から可愛らしいりんごの花が咲き始めます。

一見には桜の花に似た白い5弁の花びらが目に付くでしょう。桜の花びらのように先割れがありませんが、単体で見る限り桜っぽい外観といえるでしょう。

特徴的なのは一つの芽から5〜6つの花が放射状に咲くことでしょうか。 只、これら一纏まりの花は均一に育つのではなく、一花だけが優先して開花し その後の経過も旺盛です。これを “中心花” と言い、遅れてやや慎ましやかに咲く花を “側花” と言います。

そのため 花の咲き始めの頃は、大きく花開いた中心花の周りを濃いピンク色のつぼみが取り巻く、美しい姿を見ることができるでしょう。

桜の花も一つの芽から複数の花を咲かせます。 ちょっと意外なのですが、りんごも桜も元を辿れば同じバラ科。一つの芽から複数の花を咲かせるのは “花序構造” といってバラ科の特徴なのだそうです。 花の姿が似ているのも然もありなん・・なのかもしれませんね。

え? 薔薇(バラ)は一つの芽から一つの花が咲いているって?

それは現在の一般的な薔薇が(主に観賞用途のため)品種改良されたものだからです。 同じ薔薇でもその現生種である野バラや近縁種であるハマナスなどでは花序構造が残っているそうです・・。

一つの中心花と周囲の側花で咲く “りんごの花”。適宜、側花を摘花するなどして栄養の集中化を高めます。 りんごは自家受粉できない性質(自家不和合性)のため、他の品種の花粉を虫の往来か人の手による受粉を必要とします。

 

その後、花びらが落ち(いわゆるガクの部分)が内側に向かって閉まっていき、続いてその付け根部分 “花托(かたく)” が成長し、やがて “りんご” の実を結びます。

こうした形質もバラ科の特徴のひとつで、梅や桃、枇杷(ビワ)なども同様のプロセスをもつのだとか。 バラ科って何かスゴいですね・・。因みにイチゴやアーモンドなどもその根はバラ科だそうです。

りんごの花托(画像:りんご大学・弘果弘前中央青果株式会社)

 

能書きばかりの記事となってしまいましたが、自然に抱かれた立地の中、『原観光りんご園』は “りんご園” “ブルーベリー園” を中心に、日帰りアクテビティの “不動滝キャンプ場”、リッチな自然体験を満喫できる “コテージ・みちの丘”、小滝公園ひらべ屋などを併設・運用する総合観光園となっています。

上でも書きましたように4月の下旬頃から5月の上旬にかけては、りんごの花の開花時期。 農園敷地内に広がる約1,100本20種のりんごの木に咲く清楚な花の佇まいを楽しまれては如何でしょうか。

りんごやブルーベリーの実そのものの “狩り” 時期には まだ少し間がありますが(8月頃から秋にかけて)、春爛漫の自然に浸りながらの行楽は、年度代わりの慌ただしさから疲れを癒やす清々しさに満ちていると思うのです・・。

『原観光りんご園』公式サイト
・兵庫県宍粟市波賀町原560-1

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