柳川さげもん 桃の季節の言祝ぎ – 福岡県

福岡県柳川市で行われる雅な祭「さげもん」の記事を初めて書いたのは2020年2月初旬のことでした。

当時、折から急速に広まった新型コロナウイルスの影響で世相は大荒れ。世界中の国々がロックダウンの施策に追い込まれ、病害は言うに及ばず経済・生活状況ともに かつて経験したことのないほどの窮地に追い込まれていた時期でした。 国内でも3月13日に緊急事態宣言が発布され、仕事、日々の生活にまで大きな影響を及ぼし、その頃予定されていたイベントの大半が中止のやむなきに至ったのです。

当サイトも各地の祭祀やイベント情報も事前に掲載しているため、年始にまで遡って中止の告知を挟んでいったことが思い出されます。

あれから5年の月日が経ち、重症化率・死亡率ともに下がったことから2023年には5類指定と変わり各地のイベントも復活。ご存知のようにオーバーツーリズムが取り沙汰されるほど海外との行き来も増えました。

しかし、現在でもコロナウイルスはじめインフルエンザなどの脅威が完全に払拭されたわけではありません。お出掛けの際の一応の対策や帰宅時の手洗いなど一定限度の心積もりを続けていただければと思います。 それがまた、かつてのような社会的脅威を回避する一助にもなるでしょうから・・。

 

そんな社会的規制が続いたここ数年の世情の中、2022年以降も一部制限を施しながら連綿と続けられてきた福岡県柳川市の『柳川雛祭りさげもんめぐり』が今年も行われます。
古くより “水の都” と呼ばれた当地で、掘割(水路)を行き交う川下りに可愛らしげな内裏様・お雛様の風情にまみえて、春の近さを感じてみるのも良いかも知れません。(注:市内に柳川という名の川はありません)

柳川地方には古来から家に女の子が生まれると、その初節句に “さげもん” を飾り盛大に祝う風習があり、そこには我が娘への健やかな成長と久しい幸せへの願いが込められているのだそうです。 ”さげもん” とは縁起物である鶴や兎、這い人形、そして色とりどりの糸で巻き上げた “柳川毬” などが付けられた吊るし飾りのことで、そこには祖母、母、叔母たち女性親族ならではの祝いと寿ぎが宿っています。

赤ちゃんが見上げるメリーオルゴールにも似た姿で、竹で作った輪に紅白の布を巻き付けそこから7列7個、計49個の縁起物の飾りを垂らすのが “さげもん” の正式な形だそうで、その全高は人の背丈ほどもあり、単にきれいなだけでなく古式豊かな伝統美まで伝わってくるよう。

 

『 柳川雛祭り さげもんめぐり 』では 市内各地の観光施設や店舗の店先に飾り付け、訪れる多くの観光客、とりわけ女の子、そして、女性を暖かく出迎えています。

期間中は「おひな様始祭」「柳川きもの日和」「おひな様水上パレード」などをはじめ 「流し雛祭り」「ときめきひな灯りと巨大さげもん」「おひな様フォトコンテスト」など日替わりに多彩なイベントが繰り広げられます。

特に沖端水天宮から高畑の三柱神社までの水路約4kmをゆるやかに運航する「水上パレード」は、その名がそぐわないのではと思えるほど古式豊かな風情を醸し、訪れる人に風流で雅やかな旅の想い出を残してくれるのではないでしょうか。

九州男児などという言葉があるように男性的なイメージがある九州地方ですが、 暖かくゆったりとした風土で賑わう九州は 春の訪れとともに「雛まつり」にまつわる祭事の多いようで、女性に対する心配りも篤く豊かな土地柄であるようです。 大分県 日田の「天領日田おひなまつり」、福岡県 八女の「雛の里・八女ぼんぼりまつり」、長崎県 平戸の「平戸松浦家のひな人形」など、これからの時期、各地で艶やかな色彩に包まれた様々な お祭りに染まることになるでしょう。

 

近年、人々の生活から その意義や形式が薄れつつある式日「節句」。  節句を祝うという季節の移り変わりと豊かな人生への願いを込めた往古の風習は、合理的な現代社会にあってこれからも少しづつ薄らいでゆくのかもしれません。

よく周知されているものに 3月3日の桃の節句、5月5日の菖蒲の節句 がありますね。 節句としての意識はやや薄いですが 7月7日の七夕(たなばた)もそうであり、残りふたつ、1月7日の七草の節句、9月9日の菊の節句、1月から順に – 人日(じんじつ)上巳(じょうし)端午(たんご)七夕(しちせき)重陽(ちょうよう)- の五節句として江戸期に整えられました。

現代の生活、住宅環境の中で一揃い数十万から百万に手が届き、その設置や維持管理にも手が掛かる雛壇の導入や形式張った祝い事は 確かに手間や費用が掛かりすぎ、それならば 他に必要なものを・・ というのも当然の判断・価値観でしょう。

しかし、時代が変わったからといって 我が子の健やかな成長と幸せを願う親の願いに変わることはありません。 少しお暇をとって こういったイベントに出掛けてみる等、普段には無い 特別な時間を作られてみるのも良いのではないでしょうか。

そこには昔日の人々が篤い想いの上に築き上げた「節句」に通じる想いが きっとあるはずです・・。

※ 各イベントの開催日等は移動・変更の場合もございますので、各サイト・お問い合わせ先等から事前のご確認をおすすめ致します。

2025年 第31回『柳川雛祭り ”さげもんめぐり”』 柳川市観光情報 

参考 :『ひなの国 九州』九州旅ネット

Amazon:『五節句に遊ぶ 淡交別冊65』

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