「冬来りなば春遠からじ」 イギリスの詩人パーシー・シェリーによる一編です。
つらい時期を耐え抜けば、必ず穏やかな幸福の日が訪れる意味で用いられますが、意訳をもってせずともそのまま春を待ち望む気持ちにも充てられますね。
大正月と小寒が過ぎ、間もなく大寒(20日)もやって来ます。 これから二月程は一年で最も寒い時期ですが、不思議なもので正月を越えると何かしら春の気分が漂うもの。
今しばらくの寒さを乗り切って華やかな春の到来を迎えたいものです・・。
「ケサランパサラン」という言葉。一度くらい聞かれたことがあるのではないでしょうか?
謎の生物、不明の物体などといわれ、少しオカルティックな話題として扱われることが多いので、あまり真面目に論議されることは少ないですが、一応 “現物” とされるものも確認されている物体です。
只、”謎の” 存在として今も言及されるのには、見つかっている物体がケサランパサランなのか、他に真正のケサランパサランが存在するのか未だに判然としていないからでしょう。
言い換えるなら “謎の存在” のままの方が・・楽しいのです・・。
その存在は、一言でいうと “タンポポの綿毛(冠毛)” のような外観といわれています。植物の仲間なのですかね・・。 しかしタンポポの冠毛ほど規則的な構造でもなく、動物の体毛が集まったもののようにも見え・・毛玉といった感じ?。
そのためか ケサランパサランは “動物の一種” である。・・という見方(解釈?)もあり、中には “白粉(化粧の粉)を与えて育てることもできる” という話まであって、なおのこと不明の存在として謎が深まっている模様。
特に何らかの害が有るという報告もないため、”実在する” とすれば “無害な存在” ということになるのでしょうが・・。それ故か “見つけた(もしくは手に入れた)人には幸福が訪れる” などという口伝もあり、なおかつ “口外不要” の付則まであるようで、結構 古い時代から家宝のひとつとして大切に保存されている個体もあるそうです。
有るのか無いのかよく分からない存在であるにも関わらず、プラス方向のうわさ話が広まっているのには、やはりその外観に可愛らしさを感じるからでしょうかね・・。
さて、そのケサランパサラン。古い時代からと申しましたが、文献に拠る初出としては、江戸時代の医師 寺島良安による「和漢三才図会(わかんさんさいずえ)」に “鮓荅(さとう・ベイサラバサラ)” として紹介されており、これが初ではないかともいわれています。
“鮓荅” とは牛馬など獣の腸内に出来る結石のことを言ったそうで、それらしき画像を検索すると、どう見ても石にしか見えないものしか出てこないのですが(まぁ結石ですしね・・w)。 どういう訳か、似ても似つかない毛玉な外観のケサランパサランと関連付けられ・・。
ひとつには この鮓荅(さとう)、古の中国やヨーロッパの一部において解毒剤として用いられたり、ときには呪術の道具として珍重された歴史もあるようで、ベイサラバサラの名もポルトガル語の “bezoar(結石)” が関係しているそうです。
動物の中には、毛繕いなども含めて自らの体毛を食べてしまい、毛玉として排泄するものもあります。 一部にケサランパサランは猛禽類が捕らえ食し、そして排泄したウサギなどの毛・・という解釈もあり、呪術などという神秘的なイメージも手伝って、この辺りがケサランパサランとベイサラバサラの混交(誤認)に至った経緯なのかもしれませんね・・。
およそ不確定の存在ながら、数百年のレベルで今に伝わるケサランパサラン。一般的にその名が知られたのは1970年代ともいわれます。 メディアで “ネッシー” や “雪男” などオカルトものが盛んに取り上げられた時代、その中でひっそりと紹介されたのでしょうか。
只、ネッシーや雪男とは異なり、このケサランパサランは結構な頻度で確認されています。
どころか、姫路市立動物園ではしっかり展示されているという情報も・・。 和歌山県那智勝浦町の宇久井ビジターセンターのブログでは、ツル科植物の種子をケサランパサラン?として紹介されていました。
このように、およそ全国各地でその目撃例はありながらも、比較的 北関東から東北地方に特に多く伝承が根付いていること、春もしくは秋、早朝もしくは黄昏時に目撃例が多いことに、何らかの意味があるのか・・?
記事にしながら恐縮ながら “さっぱり分からん不明の物体”。何にも分からないのに何故か有難がれ大切にされる霊妙の綿毛。 こういったものは、やはり “よく分からないからこそ面白く” そこに夢や期待を描くのでしょう。
そして・・まぁ、やはり春ですかね。 桜の花も散り、うららかさも増した頃に お出かけの際でも散歩の途中でも、ふとケサランパサランの名を思い出してみてください。 貴方の身近にも幸福の綿毛は降ってきているかもしれませんよ・・(^^)。