さすがに酷暑も過ぎ去り過ごしやすい季節になってきましたが、それでも日中はそれなりに暑い陽射し。朝晩との気温差に注意しないと体調を崩すきっかけになりかねません。体調・健康の維持にご注意ください。
一部には11月もまだ例年を上回る平均気温との予想もあり、今年の秋はどうなるのか、分からないままに過ぎてしまいそうな感じもしますね・・。 とは言うものの爽快の時節であることにも変わりはありません。 “なごみの国” ともいわれる鳥取県から この秋の行楽案内をさせていただきます。
「河原城」(かわはらじょう)
鳥取市市街地から南に外れた山間、千代川と八東川の合流地点に近い丘に建つ観光城です。
始めから “観光城” などと言ってしまい城マニアの方には興冷めかもしれませんが、この河原城 小高い丘の平山城ながら晴れた日の見晴らしは一級品で、雄大な大山の山々から鳥取砂丘までも見渡せます。
河原町のシンボル、観光拠点として平成6年に建造されて以来、多くの来館客と町民・市民に愛されてきました。
本来 “丸山城” と呼ばれていた往古、城の建つ丸山と対岸の空山に挟まれた隘地(あいち:狭い場所・区間)は、因幡(鳥取県東部)と美作(兵庫県北部)を結ぶ結節点であり要衝でもありました。 河原城(丸山城)をはじめ、付近岳陵にいくつもの城跡があることからもそれが分かります。
16世紀、甲斐武田氏にも通ずる若狭武田氏の庶流 “武田高信” により、その原型が築かれたと伝わります。 その後、天正8年から9年にかけて行われた鳥取城攻めで、羽柴秀吉が着陣したことでも知られていますでしょうか。
往時の遺構として幾ばくかの曲輪跡や空濠が残ります。城郭の周辺には800本の梅の木が植えられ、春先には美しい花を咲かせます。
城館内ではこれら歴史に触れる一編の展示、そして河原町の文化情報などが紹介されており、またこれらに関連する3Dマジカルビジョンによる映像案内も並行して運用されているそうです。
上映内容の中には因幡国に縁深い “八上比売※” も引用されているそうで、はるかに古き日本神話に興味をお持ちの方にも楽しめるかもしれませんね。(※ やがみひめ:因幡の白兎伝承に連なり大国主大神の妻となる人)
先述の天守展望台からの眺めと相まって、秋の日の長閑を五感で味わう一日となるのではないでしょうか・・。
「船上山」と「千丈滝」
県内東部の鳥取市に比して西部に位置し、鳥取、島根、岡山県に跨る “大山隠岐国立公園”。 巨峰 “大山” を中心に山陰の大観絶佳、無限なるところですが、そのお膝元、東伯郡(とうはくぐん)琴浦町に座す “船上山(せんじょうさん)” は、少し変わった山容をしています。
標高687メートル。溶岩と侵食により形成された山体の頂上は、広範囲に崖(柱状節理)が突き出したような形となっており、ちょっと変わったヘアスタイルのようにも見えるところがユニーク。
約100万年前に形成されたともいわれる山の天頂部は広くなだらかですが、崖そのものは急峻なもので 高さ100メートルに及ぶ場所もあり、特に東側斜面から北方面にかけての壮大な壁面は幅数百メートルに渡って連なっており、その壮観をして “屏風岩” と呼ばれています。
この屏風岩の南端付近に2条の滝(雄滝・おんだき、雌滝・めんだき)が流れており、これを総じて「千丈滝」といいます。
雄滝・雌滝の呼び分けはその高さだけではありません。
天頂部大地で蓄えられた水を落とす落差は雄滝が109メートル、直下直行で落水する様は豪快な景観。対して雌滝の落差は同等の90メートルながら、岩盤の斜面に滑り落ちる水の流れは優美な姿といわれます・・。
緑濃く神厳極る船上山は平安の世から神坐す山と見られ、大山、美徳山とともに伯耆三嶺と呼ばれて山岳宗教の霊場でもありました。
また鎌倉時代の終わり、倒幕計画の露見から一時 隠岐に流されていた後醍醐天皇が、島からの脱出に成功し復権の狼煙を上げたのも船上山でした。この時、天皇の脱出を助けたのが伯耆国(鳥取県東部)の守護 “名和長年” であったといわれています。
天皇一行を護り親政復古を叫ぶ 後醍醐天皇側 200名足らずに対し、これを阻止し滅ぼさんとする鎌倉幕府軍3000名という衆寡明白な戦いでしたが、天皇側は知略を講じて戦を勝ち抜き “建武の新政” への道のりを開いたのでした。 船上山には一時的ではあれ行宮が置かれていたと伝わります。
山深く険しき地にも熱い歴史が眠るということですが・・、現在は多くの来訪者に感動をもたらし癒やしを与える東伯の船上山。 観光地として到達もしやすく北側斜面には “展望駐車場” も設置され、山頂へのハイキングコースも整備されています。
上でご案内した “雄滝” “雌滝” の爽快な景色と合わせて、南側斜面には流麗な姿を晒す “鱒返しの滝” も山水を落としており、流量の多い日の紅葉に流れ落ちる水飛沫は絵を見るような美しさともいわれています・・。
砂丘だけが鳥取県のセールスポイントではありません。日本海側にあって目立たないながらも、ここには古来から重要な役割を果たしてきた歴史の通過点が散在しているのです。
秋の日の一日をそんな因幡の国と伯耆の国で満喫してみるのは如何でしょうか・・?