健幸の公園にも相剋の歴史は眠る – 山梨県

“古墳” 古代において貴人や豪族たちを埋葬、鎮魂と権威の象徴として築かれた大型の墳墓。 時代区分にも表されているように凡そ3世紀の半ばから7世紀にかけて日本各地で造設されました。

大阪・仁徳天皇陵の模型

しかし、体系的な政治体制が確立されていくとともに新たな築造数は減っていき、その形状も(呪術的な意味合いの強かった)前方後円墳や前方後方墳などから、円墳や方墳など簡素な形に移り変わっていきます。

未だ “経済” などというものが根付いていない時代ではありましたが、中央政権化が進んで社会構造が規格化されていくと、数千・数万の動員を必要とする古墳造営は困難となり・・。 また仏教の伝来や神道の進展によって埋葬・祭礼の概念が変化したことなども背景にあるようです。

 

とはいえ中央から離れた地方にあっては些かの時期的差異があり、小規模ながらもユニークな形態の古墳が残されている場合があります。

上から見て正八角形、横から見て円錐(または段付きの円錐状)の やや小規模な古墳を “八角墳” といいます。 古墳終末期に見られる形態ながらも その数は少なく、現在確認されているものは15基余り。国内で確認されている古墳の総数16万基に比べれば著しく限られた存在といえるでしょう。

そんな希少な八角墳のひとつが山梨県の中央部、笛吹市の「山梨県自然公園 金川の森」にあります。

画像 © Wikipedia 《さかおり (talk) 》

「経塚古墳」7世紀の始め頃 築かれたものとされ、径12メートル高長2メートル程の小型ながらも、鉄斧や甲斐型土器、被葬者骨などの埋葬品が発見されました。 機内からも遠く東北文化圏の手前に位置する遺跡として貴重な存在となっているそうで・・。

当地を含む山梨県の遺跡からは 中央王権の影響が見られる発見が相次ぎ、この地で相応の豪族が機内とのつながりを持ちながら勢力を奮っていたのかもしれません。

 

半ば伝説ながら、この時代に生きた “甲斐の勇者(かいのたけきひと)” という武人がいたそうです。

672年に勃発した “壬申の乱”。天智天皇 亡き後、皇位継承問題を端に発した国内最大の騒乱において、反乱軍(大海人皇子)側に甲斐国から従軍。武勇を誇った兵士として “日本書紀” に登場。

その詳細や実在性は不詳ながら、騎馬兵として活躍したと伝わるところからも、遥か古から優秀な馬を産出、縦横に扱っていた甲斐国の様相を反映しているといって良いでしょう。

1400年から昔の日本。国の形といえどまだ機内や周辺地域がその概要であった時代ですが、既に王朝と遠く離れた各地域は様々な面で関わり合い影響を及ぼし合っていたことが伺われますね・・。 「甲斐の勇者」

 

経塚古墳のある「山梨県森林公園 金川の森」は その名のとおり山梨県中央を流れる笛吹川の支流 “金川” のたもとに築かれた自然公園です。 森と言っても笛吹市郊外の一画に位置するためアクセスも良い立地です。

笛吹川は 周囲を山岳で囲まれた甲府盆地を横切り富士川に合流、駿河湾にまで流れ込む地勢ゆえに水量の多い時には、日本三大急流の一角ともいわれるほどの早瀬となり、往時には度々の災害に見舞われました。

暴れ川との戦いは古来から続けられていたようで、戦国時代、水流を分散するために組まれた “聖牛”。 周辺被害の抑制に築かれた “信玄堤” などは 武将 武田信玄の考案・指揮によるものといわれ・・。古き時代の創作ながらも長きに渡って住民の暮らしを守り続けてきたのです。 聖牛とは

されど、明治40年の台風により発生した洪水被害では死者233人、流失家屋5000戸、盆地の大半が泥の海と化した大災害を被りました。「金川の森」はその時の教訓をもとに造られた “水害防備林” であり、その後の水害時にも被害軽減の役割りを大いに果たしてきました。

画像 © Wikipedia 《さかおり》public domain

治水対策も進んだ現在では市民の憩いの場であると同時に、近年の自然環境変化に因んで森林保全や環境学習の場としても活用されています。

人心に拠るもの、自然の成すもの。今日では穏やかで安らぎに満ちた場所も、古代から続く波瀾に満ちた歴史に彩られているのですね・・。

 

自然学習を基本に据え “健幸になろう” を合言葉に運営される「山梨県自然公園 金川の森」ですが、単なる静かな公園にとどまらず多彩な工夫と試みで、子供から大人までが楽しめるオアシスともなっています。

「どんぐりの森」「こもれびの森」など、6つに分かれた各セクションではそれぞれに、アトラクションやレンタサイクル&サイクルコース、ターゲットバードゴルフ、ゆったりと周れる遊歩道など、リラクゼーションに満ちた構成。

そして “自然関連の体験会”、”マウンテンバイク教室”、 “古墳・歴史探訪イベント” など随時企画されています。 10月27日(2024年雨天中止)には仮装イベントやキッチンカー&屋台参加の「金川ForestaFelice~ハロウィンと森~」も予定。

迎えつつある秋の日、古代への想いを馳せながら、甲斐の穏やかな公園でのどかに過ごしてみるのも素敵なのではないでしょうか・・。

 

『山梨県自然公園 金川の森』 公式サイト

Amazon:『知られざる古墳ライフ:え? ハニワって古墳の上に立ってたんですか!?』

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA


このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください