暗澹の時さえ越えて 下総国 時平神社_再

菅原道真(左)に諍う 藤原時平(右) 画:歌川豊国

時平(ときひら)… 藤原時平 と言えばどのような人物でしょう‥
このような問に対し歴史通の方を除いて、即答できる人は多くないかもしれません。

どこかで聞いたような名前だけどな‥
藤原という姓だから平安時代の貴族の一人だろうけど・・・

ところが、菅原道真(すがわらのみちざね)と聞けば知らない方のほうが少ないのではないでしょうか? 学問の神様、そして天神様として全国の天満宮に祀られている、平安京きっての学識を誇る政治家であり漢詩学者でもありました。 後世、演劇や小説などの題材とされることも多く 近年では漫画「応天の門」の主人公の一人としても登場していますね。

才覚を振るって多くの政治改革などに取り組み、朝廷内 右大臣にまで上り詰めた方でしたが後年、讒訴(ざんそ、嘘の密告)によって左遷され流地において亡くなりました。
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ここまでくれば思い当たる方も多いはず、「藤原時平」はその菅原道真のいわばライバルであり、時の天皇であった醍醐天皇に “道真 謀反の意有り”  の讒訴を行ったとされる人物です。
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道真の死後、39歳の若さにして重い病に罹り亡くなったこと、又、その一族の多くが次々と早逝していったこと、そして極めつけに延長8年に朝廷宮殿に雷が直撃、多数の死者がでる「清涼殿落雷事件」が起こるに至り これは不遇を囲って憤死した道真の怨霊による仕業であるとされました。 以降、時勢は怨霊鎮魂の一色となり道真公は天神様として崇められ、対して藤原時平は道真公を陥れた卑劣な政治家とのイメージが出来上がってしまいました。

 

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しかし、洋の東西を問わず歴史に残るような事件というものは、後の世で少なからず脚色されドラマチックに語り継がれるのが常であることが多いのも事実です。 この讒訴事件も今昔変わらず起こる政争のひとつに過ぎないのかもしれませんが、劇的な顛末がゆえに大きく伝説化された逸話とも言えるでしょうか。

ともあれ藤原時平は急遽しその子孫たちも後の宮廷内において重用されることも減り、その一族の栄華は歴史のうねりに埋没してゆく形となってしまいました。
怨念が叫ばれていた当時、時平一族への世間の風当たりも強かったのかもしれません。
一族の内の多くの者が都を離れ地方へと流れたようです。

 

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千葉県 八千代市に「時平神社」が鎮座しています。萱田町に二社、小板橋に一社、大和田に一社、総じて時平四社と呼ばれ地域の信心を集め、千葉県指定文化財でもあり大きな賑わいを見せる下総三山七年祭にも関わる当地の鎮守となっています。

興味深いのは四社の創建が江戸時代頃とされていることです。
流れ着いた時平の一族がこの地の文化を開拓したのでしょうか。都では非難の的であった一族も新天地において土着の人々との融和を願い 地域の振興に尽くしたのかもしれません。少なくとも横柄に振る舞い在住の民に嫌われたのであれば、いかに元貴族とは言え後々、地域の鎮守として崇められることなど無かったように思います。

されど、世は “道真悲し” の世相が大勢を占め、全国に天満宮も広まりました。
以来700年余の時を静かに慎ましやかに生き継いできた一族の末裔と八千代の人々が、徳川幕府開闢、江戸時代の始まりと時を同じくして神社の創建に着手し始めました。
永年、信仰されつつも広く日の目を見せられなかったこの地の鎮守を公のもとへ晒す日が来たのです。

そのきっかけが何であったのかは詳らかではありませんが、道真の怨念話しも薄らぎ、新しい時代の幕開けととともに「時平神社」ここにありと世に知らしめたかったのかもしれませんね。
因みに当地には時平の娘である高津姫を祀った高津比咩神社も鎮座しています。

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策謀家とされた藤原時平公ですが、政治的には有能な方で政治改革にも旺盛に取り組み、後に「延喜の治」と呼ばれた醍醐天皇の善政の礎にも関わりました。
只、貴族としての風雅や情に重きを置く性格であったため、根っからの学者気質であり理論家であった道真とは反りが合わなかったと言われます。
又、当時の問題は道真と彼を重用する先帝 宇多法皇、時平と信頼関係を築いていた醍醐天皇との確執が背景にあるとの指摘もあります。

どちらにせよ、時の真実は、当事者たちでさえも知らぬところで動いていることも少なくないのが人の世の悲しさ、嵐のような時を過ぎ暗澹から静謐への時代を越えてようやく花開く思いもあると言うことでしょうか。

性質は違えど ともに政治の頂点まで上り詰めた二人、経緯は違えど やはり人々の信仰の対象となった二人、数百の時を経て今の世をどういった眼差しで見つめているのでしょう・・。

本日は2018年12月の再掲載記事となります。ご了承ください。

 

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