渦潮の国に比類なき異彩の美術館 – 徳島県

「元気ハツラツ オロナミンC!」 言わずと知れた “大塚製薬” の炭酸栄養ドリンク、昭和40年(1965年)発売以来、累計販売本数300億本(平成23年5月現在)を売り上げた 国民的ヒット商品ですね。

画像 © 大塚ホールディングス

各種アミノ酸、ビタミン栄養素を含みながらも “飲みやすさ・爽やかさ” を重視した開発過程から、”炭酸” を生かした飲料として商品化され、そのために当時の厚生省から “医薬品” としての認可が降りなかったそうです。 反面、”清涼飲料水” とされたことから 薬局以外のスーパーや小売店での取り扱いが可能となり、それが人々に身近な存在として知られる要因ともなったのだとか・・。

「うれしいと、めがねが落ちるんですよ!」 昭和時代、ひとつの徴表ともなった 大村崑さんによるCMから57年、今も発売当時の姿そのままに販売数を伸ばし続けています。

 

「オロナミンC」「オロナインH軟膏」「ポカリスエット」そして「カロリーメイト」・・

“風邪薬” や “頭痛薬” など明確な “家庭用医薬品” というよりも、どちらかといえば “親しみやすく” “使いやすい” 健康商品をリリースしてきた「大塚製薬」のイメージですが・・、 医療機関向けの新薬開発やリリースにも長年 注力し、また最大の “輸液(点滴剤)” メーカーとして歩んできた、国内5大医薬品メーカーの一角を担う製薬企業でもあるのです。

そんな「大塚製薬」は 大正10年、徳島県鳴門市に “大塚 武三郎(おおつか ぶさぶろう)” が「大塚製薬工業」を設立したことに始まります。

つまり、鳴門市は「大塚製薬・グループ」の故郷でもあるのです・・。

現代の新興企業ではあまり見られませんが、昭和期以前、時代に名を残すような実業家の多くは、その出身地や縁の深い場所に何らかの “報恩” を果たすことが、ひとつのステータスでもありました。 多くの場合、現地に 関連企業を建てたり、公共文化施設を興したりするのが通例。 明治期に伝わった “ノブリス・オブリージュ” 的な気概の一端ともいえるでしょうか。

大正10年に創業、昭和39年に改組を終えた「大塚製薬」が、1998年(平成10年)鳴門町土佐泊浦の “鳴門公園” 内に 創業75周年事業として設立したのが『大塚国際美術館』。 立地規模としては国内で1、2を争う壮大さ、そして この美術館には他にはない極めてユニークな特色を持っているのです・・。

 

大正10年の起業から平成10年と、着手まで少々 年月が経っているようにも見えますが、実のところ この計画の発始は既に昭和40年代に始まっていました。 大塚グループの総帥であった “大塚正士(武三郎の長男)” と末弟 “大塚正富” らの間で、故郷 徳島県鳴門市の経済活性に資するべく、ある計画が進められていたのです。

当時の社会情勢はまだ好景気の内であり、世は建設ラッシュの最中でもありました。鳴門市の砂浜で採れた砂は、良質なコンクリート材料として大量に出荷されていたのです。

この砂に斬新な付加価値を付けることで、鳴門市・徳島県に新たな収入源をもたらせることが出来ると考えた二人は その手段を模索し、やがて砂を焼き固めて作る “タイル製造” に思い至ると「大塚オーミ陶業」を設立。運営を軌道に乗せます。

しかし、新規企業の稼働が順調に進んで間もなく “オイルショック” が世界を席巻、世は不景気の波に飲み込まれてしまいました。「大塚オーミ陶業」もまた 受注の激減に晒されることとなったのは時の不運としか言えませんね。

ともあれ、せっかくの陶業技術をこのまま埋もれさせてしまうのは、あまりにも勿体ない・・。

後退するのではなく新規市場の開拓のため、さらに技術に磨きをかけ前進に努めた「大塚オーミ陶業」は、一般的な美装タイルの域を超えた “大型・高品質タイル” の開発と、”転写印刷+手仕上げ+釉薬” の融合技術による「美術品タイル」を生み出し、その作品は1990年の大阪花博をはじめとして、数多くの公共施設やエキシビジョンを彩ってきました。

その特殊技法を活かして鳴門市に何か出来ないか? 導き出された答えが『大塚国際美術館』の建設でした。 大塚グループ75周年の記念事業として鳴門市大毛島に、異色の、そして壮麗な “陶板美術館” という文化施設の立興にあたったのです。

立地場所が “瀬戸内海国立公園内” にあるため、建設の許可を受けるだけでも5年を要し、景観を含めた基準要請に適合させるため特殊な工法を用いる必要がありました。

結果、認可から竣工まで10年の歳月と総工費400億円をかけて、1998年3月21日『大塚国際美術館』は開館に至ったのです。

『大塚国際美術館』は異色であると書きました。

美術館の多くは美術品を蒐集して それを展示するのが一般的です。特別企画展として著名な絵画などを借り受けての展示会などもありますね。 しかし『大塚国際美術館』では上記のように「大塚オーミ陶業」で培った陶業技法によって作られた “陶板” 展示が大半です。

そこに描かれ再現されているものは・・
・ バチカン宮殿・システィーナ礼拝堂を再現した「システィーナホール」
・ イタリア・パドヴァの「スクロヴェーニ礼拝堂」の再現
・ 印象派の巨匠クロード・モネ 大装飾「睡蓮」の屋外再現(実際の睡蓮の池もあり)
・ そして、世界的な名画の原寸大陶板1000点・・

つまり、この美術館においては本物(オリジナル)の蒐集展示にこだわり莫大な費用を費やすのではなく・・、通常では現地にまで行かなければ見ることの出来ないような、歴史的遺産を美術陶板で超精密再現、鳴門のこの地に集約公開しているのです。

複製画陶板の耐候性・堅牢度は一説に2000年以上ともいわれ、その間 破壊的な力でも加わらないかぎり損傷も退色も起こりません。原画の耐久年数を遥かに越える陶板再現は、過去文化の保存にも役立っているのです。

それにしても、”超精密再現による陶板複製美術” とは・・、何かいかにも “大塚グループ” ならではの発想のように思えます。

「大塚製薬(グループの母体・中核)」が家庭用医薬品をリリースするとき、いかにも医薬品といったものではなく、身近にあって使いやすい商品を創造・輩出してきたのと同じように・・、 国内では見ることの出来ないものや、借り受けたとしても ほんの一定期間だけの公開となる名画を、通年、そして半永久的に展示する方法を選んだのです。

そこには、 “世界の人々に貢献する革新的な製品の創造” という理念が作用しているのかもしれません。

『大塚国際美術館』では様々なイベントを年間をとおしてリリースしていますが、その多くが 一般の美術館に比べユニークな内容のものが多いようです。

大鳴門橋を渡るとき、否、渡る前に、『大塚国際美術館』のホームページに目を通してみてください。

鳴門の渦逆巻く大毛島の一角にそびえる殿堂には、きっと貴方の想像を超えた感動が待っているはずです・・。

『大塚国際美術館』 公式サイト

大塚国際美術館 公式YouTubeチャンネル

〒772-0053
徳島県鳴門市鳴門町 鳴門公園内
TEL ︙ 088-687-3737 FAX : 088-687-1117

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