清流に白梅の花が咲き流れる三島の里 – 静岡県

あくまで個人的にですが・・、桜の花が美しく心に届くのはともかくとして、その他の花々においては、どちらかというと田んぼの畦道や堤防の斜面に咲いているような、名も無く見落とされがちな花が好きです。

バラやチューリップ、蘭やケイトウが一流の舞台で輝くプリマドンナだとすれば、梅や桃の花、紫陽花や水仙、そして向日葵などは季節を告げるメッセンジャーであり、ガーデニングで賑わう花々は、日々をともにする家族の一員のようなものでしょうか。

それに比して野辺に人知れず咲き、顧みられることもないままに いつか散ってゆく小さな花々は、総じて控えめな装いで訴えかけるものは少ないけれど、より自然に近く人の手や思惑から離れたところにあるもので、そこに飾らない素朴な親しみを感じるのです。

 

“花” というよりも “野草”、 時には “雑草” 扱いさえされそうな これらの草花は、鑑賞用とは異なり自然の一部として機能しているが故に、根茎が食糧としての性質を持っていたり薬効または有毒成分を含んでいることも少なくありません。

そして その地に棲まう動物・生物はそのことを本能的に知り関わっており、全てが自然の輪廻の内に醸成されているのでしょう。

キュウリソウ

野草と言われるものの中には野辺や山地に咲くものだけでなく、水辺、時に水中に咲き広がるものも見られますね。 菖蒲や水芭蕉は古くから鑑賞にも珍重されながら薬効も知られ、山葵(わさび)に至ってはご存知のとおりです。

いずれの水草・水辺の花も野辺の花と同じく、清楚な花を咲かせながら自然と密接にリンクした生態を保っているのですが、もうひとつ、さらに目立たない存在でもある “苔” や “藻” も、自然界の中では大きな意味を持っているのではないかと現在研究が進められています。

 

『ミシマバイカモ』 区切りどころが難しい呼び名ですがw、漢字で書くと『三島梅花藻』と書きます。 その名のごとく梅の花のような白く可憐な花を水面に咲かせます。

「バイカモ」は “藻” の名が付きますが “キンポウゲ科” の水中草で日本固有の種だそうです。 国内のいくつかの地域で生息が見られますが、いずれも冷涼な流水域に繁茂し、畢竟、町の喧騒を離れた山間、尚かつ一定の冷温が保たれた清流に限られます。

開花 見頃は5月の後半から8月位迄、川面の所々を覆い尽くして咲く様は 透き通る水を背景に星砂を撒いたようともいわれ、初夏の近づきとともに訪れる暑さを忘れさせてくれる絶好の情景として、この開花を心待ちにしておられる方も多いとか。

『ミシマバイカモ』はこの「バイカモ」の中でも、静岡県三島市の柿田川水系で見られる種であり、自然環境下で自生するのはこの柿田川のみだとされています。

昭和5年、植物学者であった中井猛之進氏により三島市楽寿園の小浜池で確認されましたが、戦後の地域環境の変化により水理が乱され一度は絶滅に至ってしまいました。
その後、柿田川から移植したものを有志の手によって保全に努められています。

清流かつ冷涼な環境を維持し続けることは自然環境そのものの維持と同義であり、それは時として社会進歩と相反する場面もあって、その保全活動は容易ではありません。
ミシマバイカモ は現在でも “絶滅危惧2’種” に指定されているそうです。

 

一度失われた自然が復興を果たすことは極めて稀で、多くはその地の生態系に深刻な変化をもたらします。 大規模開発だけが問題ではなく、ほんの些細な人間の行為が積み重なって取り返しのつかない喪失を招くことも少なくないでしょう。

一人一人の心掛けが大切とはよく言われることですが、その一人が自分のことであるとの意識を持たないかぎり、人にとって大切なものを失い続け いつかは自分たちの首を絞めることにつながるのです。

普段、目につかず ひっそりと息づく地味な植物、藻類、粘菌、目立たないものほど自然に及ぼす影響は人知れず大きく、そして 失われる時も人知れずあっけないもののように思うのですが如何でしょうか・・。

 

三島の清流に『ミシマバイカモ』がなびく様は、自然によって描かれた一遍の絵画を見るような美しさであり爽快感でもあります。

この先 もしこの地を訪れる機会があった時も、その景観と環境の維持に努力されている方々がおられることを憶えておいて頂ければと思います。

 

「三島市 柿田川公園」参考サイト

場 所 : 〒411 – 0907 静岡県清水町伏見71-1

「三島市立公園 楽寿園」参考サイト

場 所 : 〒411-0036 静岡県三島市一番町19−3

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