婿はつらいよ 越後松之山の婿投げ行事 – 新潟県

© 松之山温泉チャンネル 様

正月休みも明け 今日から仕事初めという方も多いのでしょうか、逆にサービスや保守関連業務の方の中には皆が休みの間に働いて これからようやく”私のお正月” になった方も居られるのかもしれません。 ともあれ 世間は既に起動開始、2020年も本格的に動き出しています。
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イナバナ.コムも皆様に楽しんでいただけるような記事を本年も・・と、まあ前置きは程々にしてw・・
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全国各地のイベントや民話、楽しいお話をお届けしている内容上、各都道府県を出来るだけランダムにご紹介するようにしているので、各地、45回(記事)に1回の割合で周ってくる感じなのですが、今回の記事は新潟県から・・
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そう、先の11月末に取り上げたばかりで「雪原トレランの魅力 スノーシューイングとは - 新潟県」からまだ日も浅いのですね。
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只、ちょうど小正月も近いこの時期の行事であるとともに、昨年最終の記事となりました「ハレの日 人生の門出と嫁入り舟行事 – 茨城県」に好対照となりそうな、おめでたく明るい未来を感じさせるようなイベントでしたので今回、記事とさせていただきました。

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長野県との県境にも近い新潟県十日町市にある閑静な山間の里「松之山」地区
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比較的、有名な行事ですのでご存じの方も多いかもしれません・・
「婿投げ行事」 前年にこの地区の娘さんと婚姻を成したお婿さんを、雪山の崖っぷちから村人数人で投げ落とすという何とも荒っぽい・・というかユニークな行事で ”越後の奇祭” ともされ、過去 何度かテレビなどでも紹介されています。
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もちろん、新婚間もないお婿さんを怪我させるわけにもいかないので、放り投げるのは柔らかい雪面に向かって投げるわけですし、投げる直前には胴上げなど今日においては “お祝い” ”祝福” そして、今で言う”エンターテイメント” な意味合いが全面に行き渡っているわけですが・・
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そもそも、この習わしの発祥は、昔日において ” 村の娘を他の村の若者に取られた ” ことに対する村の衆の腹いせが元になっているのだそうです。
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まだ村や部落というものに 個の集団としての性格が強かった時代、労働力・維持力としての若い男、それを支え 子を生み育ててゆく若い女性の存在は村そのものの資産・財産でもありました。
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その大切な娘が他の村の若い衆に娶られたとあっては、いくらめでたい事といっても”村として” ”村の男として” 腹に据えかねる側面もあったのでしょう(苦笑)
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往時の実際の状況は知る由もありませんが、花婿をとっ捕まえて皆でお祝い半分、腹いせ半分でお祭り無礼講であったのかもしれませんね・・

 

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ひとしきり婿投げの行事が終わるとそれに続いて “墨塗り” が始められます。
大正月(1日~7日)に飾り終わった注連縄や正月飾りを集め塔にして焚き、そこから生じた煤(すす)を”おめでとう” の声よろしく参加者 誰彼かまわず互いの顔に塗りつけてゆくという誠に珍妙な行事・・
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真っ黒になるほどに無病息災、一年の豊作が叶うというものなのですが、この注連縄などを集めた塔を「賽の神」と呼んでいることから村単位の祭りであり、往時には各村々で開かれていたことが偲ばれ、また 同時に「婿投げ」とは別だった祭事が習合し同日に行われるようになったと考えられます。

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村単位での独自性や人口変動などを考えると、その昔には全国各地の村々でも似たような儀式が過去に有ったとしても不思議ではないのですが、少なくとも現在このような形で名を成して残っているのはここ松之山周辺の地区のみのようです。
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過疎化の影響もあり、そもそも地域の適齢期人口の数そのものが減少してしまったこともあって 松之山でも地区内の人員だけでは祭りの存続さえ難しいため、現在では一般公募をかけて参加される新婚さんを募り観光イベントの一環としての意味合いをも持っています。

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祝福ともやっかみともとれるこの奇祭ですが、共に新たな一歩を踏み出す新婚お二人にとっては これからの人生も同じことだと思われます。
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何の波風も立たない人生などめったにありません。生きてゆく上では嬉しい出来事もあれば 予想外のハプニングに見舞われることも少なくないのです。
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崖の上から投げ飛ばされるような有事にあっても決してくじけず、夫は立ち上がり家を守る義務があり妻はそれを支え共に歩みを進めてゆく。 その先にこそ盤石の家庭は築かれ、後に続く新しい命も育まれるのですから。
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もしかすると時代を越えて受け継がれてきた「婿投げ」行事には、新しい夫とそれを見守る妻に それら人生の心構えを教え導く要素も含まれていたのかもしれませんね・・。

© 松之山温泉チャンネル 様

 

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松之山地区は山間地に在りながら「食塩泉」が自噴する「ジオプレッシャー型」ともいわれる珍しい温泉地「松之山温泉」としても知られており、群馬県の草津、兵庫県の有馬とともに「日本三大薬湯」とも呼ばれ温泉マニアから親しまれているそうです。
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閑静な温泉地であり リゾート施設のような華やかさや豪華さはありませんが「婿投げ」行事に見られるように、越後国の歴史と風土を肌で感じながらゆっくりとしっとりと旅の疲れを癒やすにはうってつけの里になるのではないでしょうか。

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注 *「墨塗り」行事は祭の賑わいの中で互いに炭を塗付け合う慌ただしい行事でもあります。参加される方は汚れても構わない服装で、塗付けられたくない方は速やかに場所を離れ安全を確保されて下さい。

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「むこ投げ・すみ塗り」行事 松代・松之山温泉観光案内所

日  程 : 2020年1月15日(水曜日)

時  間 : 14時:出発
.     14時30分:むこ投げ
.     15時:すみ塗り
.     16時:終了
.     ※多少時間が前後する事があります。

場  所 : 新潟県 十日町市 松之山 湯本

アクセス : ほくほく線「まつだい駅」よりバスで25分
.     関越自動車道「塩沢石内IC」より車で60分
.     北陸自動車道「上越IC」より車で60分

問い合わせ : 松代・松之山温泉観光案内所
.     TEL . 025-597-3442 FAX . 025-594-7444

 

 

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