悲恋の椿伝承 男鹿の岬の災事の名残 ー 秋田県

男鹿半島、秋田県の西部、足首のような形で日本海に突き出し そのほぼ全域を男鹿市が占めています。 「悪い子は居ねがぁ?」で有名な奇祭「なまはげ」や 入道崎、八望台など奇勝・景勝地にも恵まれた 文化と自然あふれる観光地でもあります。
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中央部にそびえる標高355mの寒風山は古代、活火山であるとともに陸から隔てられた火山島でもあり 時を掛けてその山体隆起、噴出物の堆積などにより陸つながりとなったようで、その頃 麓の八郎潟も形成されたと言われています。
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有史以降、目立った噴火活動も見られない為 現代では「活火山」としての指定はされていませんが、半島先端部の複数の目潟湖(火山噴火の跡に出来た湖)などから見ても往古には活発な活動をしていた事が知れますね。

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さて、火山活動の無くなった男鹿半島ですが 残念ながらそこは地殻活動盛んな日本の上の事、中世以降、自然災害に全く無縁だったというわけにもゆかず、特に日本海におけるユーラシアプレートと北アメリカプレートとの圧迫による地震やそれに起因する津波被害も何度か受けています。
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半島南端、奇岩ゴジラ岩で知られる潮瀬崎から程近い船川港の一角に 過去の津波被害にまつわる伝承が残っています。 ”まんが日本昔ばなし” でも取り上げられたこともありますのでご存知の方も多いかも知れません。

 

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ー 椿の乙女 ー
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今は昔の話 男鹿の海辺を覆い尽くさんばかりに大きな波が襲った
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舟は流され人や家も転がされ 村々は痛手を被ったが
波が引き ようよう一息つこうかという時 村人を驚かせることがおきた
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見たこともない小山がひとつ波打ち際にデンとばかりに居座っておる
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村人たちは この大波で遠く能登の地(石川県)から流れてきたのだろうと話し合い その小山を “能登山” と呼んだ

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時が経ち “能登山” の周りにも人が住まうようになった頃
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ここに住む一人の娘とこの地を訪れた旅商いの若者が睦まじき仲となった
いつしか二人は 行く末添う約束まで交わしたが 若者は旅の者 一度は国に帰らねばならん
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旅立ちの日に娘にむかって若者は言うた
「必ずこの地に戻ってくる その時は おまえの美しい髪をより美しくとかす椿の実をたずさえよう そして夫婦となろう」
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若者を見送った娘は その言葉を胸に若者の帰りを待った

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しかし 年があけても若者は戻らなかった
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何があったのだろう まさか舟が荒波に飲まれるなど・・
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心配に胸を痛めながら次の年をも待ったが 若者は戻らなかった
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口性のない者は娘や若者を悪様に言う者もいた
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娘は痛々しいほどにやつれ それでも若者を待っていたが
悲しいかな三年目のある日ついに 若者の名を呼びながら荒海に身を投げてしもうた
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何と言えばよいのか・・若者が戻ったのはそれから間もなくのことだったという

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娘の死を知った若者はとめどなく嘆き 能登山に登るとその頂で娘の名を呼びながら
持ってきた椿の実を撒いた
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その後の若者がどうなったのか知る者は誰もおらぬ
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しかし 若者が撒いた椿の実は山に根付き 今も男鹿の厳しい冬が解ける頃 見事な紅の花を咲かせるという

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このお話に登場する “能登山” は男鹿市船川港 椿地区に実在する丘陵で、毎年4月の中旬頃には山を美しい椿の花(ヤブツバキ)が覆います。
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日本における “椿” の自生 北限の地とされ、大正11年(1922年)には天然記念物の指定も受けているそうです。(他に青森県夏泊半島にも自生北限地域あり)
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“椿” は本来、東北以南〜沖縄の温暖な地に根付くものであり、これら寒冷地に根付き咲くのは極めて稀なことだそうで、当時の人々は この珍しい現象を悲恋の話に結びつけることで侘びしくも美しい物語として説き 今に伝えているのです。

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そして、物語の発端にある津波ですが、歴史的な記録から紐解くに1793年、1804年、1833年と3度に渡った津波災害のどれかによるものではないかとも考えられています。
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自然災害が多いと言われる日本の国、古くからの伝承や昔話にはそのモチーフに往古の震災を内包しているものも少なくないと言われます。

旧記事 猿ヶ城の朱塗観音ー鹿児島県

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古から語り継がれる大自然の物語とその脅威は、あらゆる手法・手段を講じて乗り越えるべきものであると同時に、自然に対する畏怖と謙虚さを呼び覚ます黙示録なのかも知れません。

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能登山の北限の椿 > 男鹿なび / (株)男鹿なび会社 / 男鹿市観光協会 / 男鹿市観光課

 




 

 

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