青森県 民話 – 愛される善行の鬼たち 鬼神社にまつわる伝承

昔ばなしのレギュラーキャストと言えば、おじいさん と おばあさん、殿様、姫様、お地蔵様、キツネ に タヌキ にヘビ ⁄ 龍、カッパ・・といった面々でしょうか。
そして もう一人 常連さんに「鬼」がいましたね、
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ご存知のとおり「鬼」は物語の中で人に災いを為す者、また地獄で亡者を責め苛む者など、いわゆるダークサイドキャストとして描かれている事が多い役回りですが、中には「泣いた赤鬼」や「海に沈んだ鬼」のように村人にあって親しく振る舞ったり、時には我が身を犠牲にまでするなど人間に対して好意的、善行的に描かれたお話しも散見されます。
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青森県弘前市鬼沢にはその地名のごとく「鬼」にちなんだ伝承が多く残っており、また「おにがみ」を祀る神社として鎮座する「鬼神社」は近年、知る人ぞ知るスポットとして注目を集めていますね。

 

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人に害為す負の存在として当地の鬼伝説としては次のようなものが語られています。
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昔、岩木山に一匹の鬼が住んでおった。
鬼は時折、人里に下りていっては人の子をさらい食うてしまうので村人たちはほとほと困っておった。
窮した村人たちの祈りに応え観音菩薩は鬼と ひとつの賭けをした。
(明日の朝までに山をあと二つ こしらえ上げれば今後もお前の好きにすれば良い
出来なければ この地を去れ)
鬼は突貫して土を積み上げ山を築き上げていったが、あと一歩のところで夜が明けてしまい賭けに負けた。
以後、岩木の山の頂きは三つとなり、鬼が去った里には平和が訪れた。
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岩木山の形状の由来と絡めながら懲悪の伝承として語られています。

 

 

これに対して、人間と鬼のほっこりとした関わり合いを語った民話として残っているのが今日ご紹介するお話しです。
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ある年 深々と雪積もる節分の日の夕暮れ、
その日の用事を済ませたお婆がサクサクと雪を踏みしめながら家路を急いでおった
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村にかかる橋を渡り終えたとき後ろの方から童の泣く声が聞こえてきよる
こんな頃合いに どこの家の童じゃろうと振り返ってみると向こうの方からトボトボと歩いて来たのは何と親子連れの鬼じゃったと
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父親じゃろうか、大きな鬼の腰のあたりにしがみついて小さな子鬼が泣き味噌かいちょる
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(ハハァ 節分の日じゃし、どこぞの家から追ん出されて来たなぁ・・)
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あまりに侘びしそうに歩く姿を見たお婆あは思わず声を掛けたんだと
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「俺ァ 浪岡の村の者だが、ウチは一人住まいで豆まきもせんで何なら今夜はウチに泊まっていかんかの?」
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声をかけられた親鬼はびっくらこいたようだったが
「そりゃぁ有り難ぇ話しだけど、今夜はこれから鬼沢の宮さんで集まる事になっとぉで・・」
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「有難うごす・・」まだ少しぐずる子鬼を連れながら去ってゆく鬼を神妙な心持ちで見送るお婆あだったと・・・

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そんな事があってから どれくらい経った日のことか、遅い春の息吹もようやく村の隅々まで行き渡った頃、朝早く起きては お岩木山に手を合わせたお婆あ ふといつぞやの鬼の親子の事を思い出した
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(あの親子鬼ぁ 今頃どうしとるじゃろうか・・)
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思い出すと、あの親子にもう一度会うてみたいと思うたお婆あ、握り飯をこさえ親鬼が言うておった鬼沢の宮を訪ねて行ったそうな
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鬼沢の鬼神社に着いたお婆あ、宮の神主さに節分に会うた鬼の話しを事分けて話したそうじゃ
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「あぁ、その鬼御なら今 山向こうの村に`村守り’の仕事で出かけとうで・・」
「呼んでやっから、こっちで茶でも飲んでしばらく待っといてけれ」
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と言うので 腰を落ち着けて待っておったら、お天道さんも少し傾きかけた頃に
「おぉ!お婆あ!」 と声を掛けながら鬼が帰ってきおった
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お婆あは喜んだ、鬼も再会を喜んだ、子鬼も元気そうな顔しとる


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鬼が話すのには、この宮の神主さんに諭されて今は海辺近くの村守りの仕事をしとる
人さに迷惑かけんと 人さのために心掛け良くして働いていれば角も短くなると言われ、そのようにしていたら本当に短くなってきたそうな
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お婆あも鬼の親子も時の経つのも忘れ楽しく語らったそうじゃ・・・
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鬼沢の鬼神社の鳥居には今でも角の短い鬼の彫り物があるんだと

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弘前市鬼沢地区では水不足に悩む村人のために鬼が農耕の用水を一晩で山から引いてきたと言う伝承があり、それゆえ節分の掛け声も「鬼は内!福も内!」という掛け声だそう。
.又、鬼神社における「鬼」の文字には角が無いことを表すように、文字の頭頂部に点を書かない「鬼」の文字を用いるといわれています。

 

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鬼神社 〒036-1205 青森県弘前市鬼沢菖蒲沢

 

 

 

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