新潟県 民話 – 越の国に生きるその後の桃太郎

「桃太郎」伝説といえば「浦島太郎」や「かぐや姫」と並んで、語り継がれる昔話・童話の代表格と言っても差し支えないお話しであることは多くの人々の認めるところでしょう。
その発祥については 彦五十狭芹彦命(ひこいさせりひこのみこと/吉備津彦命)の温羅征伐を拠とした岡山県発症説が全国的にも有名ですが、その他にも香川県、奈良県、愛知県など その由緒を主張する地は全国に点在しています。
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そんな中、一般的に持たれている桃太郎 活躍の地としてのイメージとはやや異なる北の国 新潟県に、鬼退治で活躍した後の桃太郎の後半生を述べた話しを見つけましたので今日はそのご紹介を・・

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昔々、ある村に桃太郎と呼ばれた人が住んでおった。
何処からともなく現れ 村を荒らし回った鬼たちを鬼ヶ島にて討ち果たし財宝を持ち帰り、村の人々からは感謝され、爺様、婆様とその後も幸せに暮らしておったが・・

やがて年月が経ち爺様、そして婆様があの世へ旅立って行ってしまわれた。
婆様が逝かれる前、枕元で見守る桃太郎にその生まれの有り様を説いて逝かれたそうな。
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桃から生まれたという数奇な生い立ちに桃太郎はいたく驚き、なお、自身の出生の源流を見極めたいと思った桃太郎は、桃が流れてきたという川を上に向かってどんどん、どんどん歩き進んだ。
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やがて、はるか見上げるような 大きな山の奥深くわけ至り 霧かすむ泉のほとりに辿り着いた。チロチロと流れ出る水がやがて川となり、自分の住んでいた村に届いていたのかと思いを馳せていると、傍らに桃の木があるのを見つけ その実をひとつもいで食べた。

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ところが その時、にわかに泉の水面を騒がし一頭の龍が現れい出た。
「我が守りし神聖なる桃の実を喰むは何者ぞ・・」

燃えるように目を爛々と輝かせながら襲いかかる龍であったが、太刀を抜き迎え撃つ桃太郎の豪腕の怯み やがて山の頂に向かって逃げ出した。

龍を追い頂に辿り着いた桃太郎が見たものは幽玄にゆらめく巨城。
龍が逃げ込んだ門を守る番人はかつて仇であった鬼の姿。
並み居る鬼たちをなぎ払い討ち入った城の奥の間で高台に居まし桃太郎を見下ろす巨像。

「小僧、貴様何者ぞ? ここを何処だと思うておる?」

「俺の名は桃太郎! お前こそ何者じゃ!?」

「なるほど桃太郎か・・ わしは地獄を統べる者、閻魔である。
桃太郎、お前のことはよう知っておるぞ」

「俺を知っておると? どう知っておると言うのじゃ?」

「お前はかつて天界で生まれた神の流れをもつ子であったわ、しかし生まれついた頃から乱暴者で天界でも持て余され、あげく桃の実に押し込まれ人の世へと流されたのよ」
「今も変わらず乱暴者のようじゃのう、今度は地獄に行くがよいわ」

閻魔王はそう言い放つと桃太郎を地獄に落としてしもうた。

地獄で気がついた桃太郎、見渡すと周りは鬼だらけ、ここが本番とばかりにまたも鬼たちを次々になぎ倒しはじめた。

これを見ていた閻魔王、これでは地獄が立ち行かん、せめて人の世に居た時の方がましであったかと桃太郎をつまみ出し、もとの村に戻してしまわれた。

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自分の家へと戻り太刀を置き しばらくは呆けたように座り込んでいた桃太郎
知った自らの生い立ちに思いを馳せながら やがてひとつ大きな息をはき
「もう これでよし・・」

やがて、村の娘を娶り慎ましやかに余生を送ったと・・・

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桃太郎の事後を描いた話しであり、目まぐるしい展開、ややもするとファンタジックに過ぎるような気配さえ感じられることから、いささか近世の創作話しのような気もしますが詳細は不明です。

しかしながら、現在知られる桃太郎の形は明治期に国策も絡みながら形成されたものであり、伝説は往古の昔より各地で様々なバリエーションが存在しており、それだけ「桃太郎」が日本人の意識に深く根ざしていることが伺われます。
最近では児童に語り継がれた昔話を聞かせることも減りつつあると言われますが、「桃太郎」は今も昔も変わらぬスターであることに変わりはありません。

 

 

 

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