岐阜県 民話-とある美しい尼僧のお話し

岐阜県、美濃と飛騨の国からなり内陸の地ゆえ海こそないものの自然に恵まれた内陸の地。その岐阜の南部、可児郡古屋敷という在所に伝わるお話しです。

 

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古屋敷という所は岐阜の中でも尾張にも近く中山道の連絡も良く、御嶽(おんたけ)参りや菩光寺(ぜんこうじ)参りの参詣客も通った在所でそこそこ人通りも多い所じゃった。

とある秋の陽もそろそろ暮れようかという頃、その村の一軒の農家の嫁さが一日の野良仕事を終え家の脇を流れる小川で手足を洗っておったところ・・

「あの・・もし・・」

うっかりすると聞き逃すような か弱い声で後ろから語りかける者がおった

嫁さが振り向くとそこに立っておったのは一人の尼さんじゃた。ところがまあ尼さんちうても、そんじょそこらの村では見かけんような垢抜けた風采を放っておらっしゃる・・
それにおそらくは歳も若く、何より今まで見たこともないほど美しい顔立ちじゃった。

うわさに聞く京人形とかいうものは このお人のような出で立ちなんじゃろうか・・などと嫁さ、半ばぼおっと突っ立っておると

「旅の尼僧にございますれば、一夜の宿をお借り出来ませんやろうか・・」と言われる

あっけに取られておった嫁さじゃったが、ふと我に返った。
仏様に仕えるお人を無下にも出来やぁせん。

「ほんま、むさい所ですけど宜しけりゃぁどうぞ」

こうして、家に尼さんを迎え入れたのじゃった。

 

 

しばらくして、亭主も帰りこの事を話すと そういう事なら是非も無かと その夜は尼さんも交えて三人で少しばかりにぎやかな夕餉を囲むことになった。
聞くと、尼さん なんでも西国の生まれだそうで大願あって僧となり菩光寺参りに行く途中とのこと、遠い国の話し、旅すがら見聞きした話しなど色々と語ってくれるもんで久方ぶりに面白おかしい夕餉の膳となった。

さても夜、寝間につこうとした時じゃった、尼さん「情けない話しではありますが、この年になっても一人で寝る事が臆病で、すみませんが女は女友達ということで、今夜だけ奥さんと同じところで寝させて下さりませんか」と言わっしゃるので
そういうものかと、亭主だけ一人居間にむしろを引いて寝ることにしたそうな・・

 

翌朝、早うから起きて仏様におつとめをすませると また三人で朝飯をすませた。
亭主と嫁さに重ねがさね礼をいうと尼さんは旅立ってゆかれたのじゃった。
見送ると家の片付けを始める嫁さを後に、亭主も一足早く野良仕事に出掛けた。

 

 

ところがじゃ、ここで亭主にちょいとばかり悪い虫が頭をもたげてきたそうな

(まこと尼にしておくにはもったいない美形なおなごじゃ、何とかして一抱きでもしてみたいもの・・ 幸い今は人影も少なかろうし急いで追いかければ・・)

よこしまな考えで頭に血が登ってくるともう居ても立ってもおられん、どんどん足取りも早う山道を登って行った。

山道も中腹にかかる頃 向こうの方に墨染めの姿が見えた、大きな木のそばに立って一休みしているのか・・

(しめた! 辺りには人の気配も無いし、このままそうっと近づいて・・)

亭主がそろそろと足をしのばせようとしたその時じゃった

静かに佇む尼さん、辺りを一遍二編見回すと にわかに着物の前をかき分けたかと思うと 立ったまま小便をし始めたではないか・・・

これにはまぁ驚いたのなんの、あまりのことに亭主、腰を抜かすと同時に気もあっちの方も一遍にすくんでしもうた

(あの尼ぁ、男だったてか・・・  あっ!! あ~っ!!)

そうじゃった、あの男尼、昨夜は嫁さと寝間を共にしたんじゃった

亭主、ころげ落ちるように家へ駆け戻っていったと・・

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いわゆる艶話しという類いでしょうか
現代の世相では少々 顔をしかめられそうなお話しでもありますが、男女間の痴話というものは今も昔も人にとって興味深いものである事に変わりはありません。
良くも悪くも昔はおおらかだったということでしょうかね・・

 
 

 

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