宮崎県 民話 – 火除けの仏


さても今は昔 日向の国は北の山間(今の延岡市)
に大武(おおたけ)という寂れたお寺が有ったそうな。

この辺りはどうも山火事も多く草木、獲物を
獲るにも難多い土地なので住む人も少なかった。
そしてこの寺の和尚さん、小事を気にせずあまり
身体も動かさず朝暮の読経以外は日がな一日昼寝
をして過すようなお気楽な御仁であったので寺の
庭も荒れ放題な有様。

ある日、陽も暮れようとする頃、やはりうたた寝
の和尚さん、なにやら遠くから呼ぶ声に目をさま
し戸口に出てみると一人の小坊主が立っている。

「旅の途中で道に迷い一夜の宿を」と乞う小坊主
に「たいしたもてなしも出来ぬが」と言いつつも
優しく招き入れ夕食をふるまい床をあてがったそ
うな。


翌朝、目を覚ました和尚さん、庭に出てびっくり!
「これが我が寺の庭か!」と声に出すほど綺麗に
掃除されている。その様はまるで庭園のごとし。
裏から出てきた小坊主に聞くと一宿一飯の御礼だと
言う。さらに掃除や手間事何でもするので寺に置い
てほしいと願うので聞き入れることにした。

はてさて、それからというもの小坊主は豆に働き
和尚さんもそんな小坊主に何くれとなく良くして
やり気の合う二人は貧しくも穏やかな日々を過ご
しておった。

しかしある頃から和尚さん、ひとつの事が気になり
だした。<小坊主は色々早々と働いてくれるが、その
働いているところを見た事がない・・>

気になりだすと抑えられぬのが人の難儀な性分。
ある日、夜も明けぬ内に起きた和尚さん、小坊主が
起きて庭の掃除をしだす様を陰からのぞいておった。

小坊主、懐から何やら取り出すとそれを一振り、そ
して二振り、すると巻き風が舞い上がり庭の落ち葉
を絡め取りながらやがて天高く消えていった・・。

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「そなた何ゆえに小坊主の姿をしてここに参られた?」
朝食の時、和尚さんは尋ねられた。
不意の問いに驚いた小坊主、しばしの間押し黙って
おったがやがて小息をつき答えるに
「見られてしまったのでは仕方がありません」
「確かに私は天狗であります。天狗の世界の厳しき戒律
に疲れ和尚の如き穏やかな暮らしがしてみたかったのです」

小坊主の姿はゆるやかに消えそこには雄々しい天狗の
姿があった。
「我が姿を模した像を一体彫りそれを祀って下さい」
「今ままでのご恩のお礼にこの辺りの火事を治めましょう」
そう言い残すと一陣の風とともに消えていった。


余計な問いをしてしもうたと後悔の念に襲われながら
も和尚さん、その後ひと彫りひと彫りのみを打ち天狗
の約束を叶えるために像を彫っていったそうな。

やがて完成した像は「鼻長尊(びちょうそん)」と呼ばれ
大事に祀られた。それ以来この辺りの山火事もぴたりと
治まり多くの信仰を集めたそうな・・・。

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☆大武寺というお寺は今も宮崎県延岡市に実在します。
大変立派で豪壮なお寺であり、お話の天狗に関する伝説
もしっかり残っているようです。機会があればぜひ一度
お参りしてみたいものですね。

 

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